A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

Western Electricの魅力

今日良く分かった。

Western Electricの古典アンプ、205Dプッシュの単段増幅器9Aを割と近代のパーマネントの38cmとホーンの2Wayで鳴らすと、とんでもなくナローで、ハムは大きいし低域はスカも良い所。高域はモコっとしていても、とても良い代物とは思えない。

昔の廉価カセットデッキで、茶色のノーマルテープを聞いているかの様な、非常にナローな、スピーチ帯域を頑張ってカバーしている様な具合だった。

 

これを18インチのta-4181-a、2発、555のホーンに金属ホーンのトゥイーターを付けた3Wayで鳴らすとどうだろう。

励磁のハムを残し、それを増幅器のハムと打ち消し効果を得て、全体のハムは少し減って周波数特性は殆どHiFiに近く鳴るのである。

当時はHigh-Fiderityはおろか、Wide-Rangeという語も、もしかするとまだ無かった頃かも知れないが、もう既にそこへ到達していたと考えられる。

全くパーマネントで聞いたのが嘘の様に思う程であり、全くの別物である。

 

そこで思った。なるほど、こうやってWesternのコレクションが始まるのであろう、と。

 

WesternはWestern独特の特性で送り出し、デコードするかの様なスピーカーで鳴らす事で、最終的な特性はフラットにしているに違いない。

よって、Westernのアンプを1台買ったからと、他のスピーカーで鳴らしては、その特性は合わず、Westernのスピーカーを手にしたからと、昨今のアンプで鳴らすと、ドンシャリになってしまうという事になる。

試しにLuxの複合アンプでWesternのスピーカーセットを鳴らすと、小音でもドンシャリの所謂心地良く感じる音が出ていた。

まるで映画館そのものといった雰囲気である。

大きい音にすると、次第にドンシャリの傾向が強くなり、派手になって行くが、小音量時には、人の耳の特性上、丁度ラウドネスが掛かった時の様な具合になるのであるから、具合良く聞こえる。

 

555ドライバが良いとされ、Midに使われるのは、おそらく他とのマッチング具合が良いからであろう。

ローとハイは音圧が高く設計されているはずで、良く出る中高域は、そこそこの音圧の設計のはずである。

であるから、クロスオーバーも他と整合性が取れ易いのではないかと推測。

 

Westernのセットで良い具合で鳴らしていたとすると、それは再現が大変に難しい。

多大なる金額を投資しなければならないが、それだけのコストを掛けても、今となっては真似も難しそうだ。

 

しかしながら、Westernの傾向としては、中高域からハイにかけて、あえて明るい音がする様に設計されている様だ。

球転がしをすると分かるが、球に於いても同じで、少し癖のある明るい音がする。

これは、サウンドスクリーンの為であろう。

幾分かハイ落ちする分を踏まえて、あえて明るい音がする様にしておき、スクリーン越しに聞いた時の音がフラットに来る様に計算していると考えるのが妥当であろう。

であるから、スクリーン相当の布を一枚通す事で、落ち着いた音に仕上がると考えられる。

 

そういえば、昭和30年頃の、名曲喫茶ライオンでも、スピーカーの前に薄いカーテンをしていた時期がある様で、それが写真に収まっている。

あれは、単にスピーカー保護の為だったかも分からないが、もしかすると癖取りにやっていたのかも分からない。

 

とどのつまりは、Westernの純粋な魅力を知るには、全セットが揃った環境でなければ、それはWesternの良さを感じる事はできない。

どれか一つがWesternだからと良い音かと言えば、それはWEが望んでいた音ではないという事であろう。

ズレが生じれば、電話の音である。