A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

300B 整流管として使う

高価な300Bを整流管として使うなんて事は、相当にぶっ飛んでいる感じがするが、所謂不良球の再利用の一環で、電極ショートを起こしている代物である。

会社で入荷し、試験した際にショートが判明、廃棄に回された球だ。物としては新品である。エレハモの300B EHになっている。

世間一般では使えないが、使い方を改めて考えたら、使い道があるから譲ってもらった。

社長はこんなクズをどうして欲しがるのか分からなそうな感じだったが(笑)

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無点火ではフィラメントがピンと張っているが、点火するとフィラメントは伸びて、グリッドの方へ引き寄せられる様に湾曲、ショートする。

https://www.instagram.com/reel/CRtbjvXhO3H/?utm_medium=copy_link

分かりやすく動画を。

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4つのバネがフィラメントのテンションを保つ様にと付けられているが、フィラメント自体のヨレの力の方が強く、テンションの意味があまりない。
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従ってフィラメントが弛んだり、ヨレたりしてグリッドへタッチ、ショートする。
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これはヨレが特に酷い。
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バネが稀に効いていないのもある(引っ掛かってしまって)が、これはバネは効いているが引き力に問題ありと推測。

また、このバネは巻き型であるから、伸びるとゼンマイの様に回転するという問題もある。

バネが回転するとフィラメントの支えが回転する方向へバイアスがかかるという意味でもある。

であるから、吊りならば、昔の竿式の吊が良い。

ただし、吊も良いものと悪い物があり、非点火時に、中央に位置している物は分かっていない者が作った物で、これは宜しくない。

吊り竿の支点から遠くに寄っている、プレートへ接近した物でなければならない。

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これは先日の岡谷ロダンの80であるが、僅か寄っているのが確認できる。

これを良くないという方は多いが、非常に残念。これが良いのである。

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点火しても殆ど動く事はなかったが、12Fや12Aは、点火して初めて中央のピッタリ来るという設計がされていた。寄っていて良いのである。

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借り物のLK460を見ると竿の持ち手よりも内側に若干寄っていて、これでは点火すると寄りが大きくなると考えられる。

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考え方としては、竿を上に引けば、糸は手前に来る訳で、下へ引けば引かれる程に逆に外側へ下がってくる。

従って、点火時に中央に来るように作らねばならない、という意味である。

だから初めから中央に来ているフィラメントは点火させるとプレートへ寄ってしまうという意味になるから、良くないのである。

 

さて、このショートする不良品は、不良品ではあるが、グリッドを無視した使い方であれば使えるという訳であるから、整流管として使用できる。

サイラトロンを整流管として使うのに似ている。

廃棄するのは誰でもできるが、上手く使ってやるのもまた考え次第である。