研究家、ハヤシ先生宅2度目の訪問になる。
お客さんの要望に対して、回路理解の追い付く(?)私が中間に入って通訳の様な具合に紙に書き出して行くという作業。
今回のお題は回路改良で、先生の言う回路を図面に起こす。
WEの図集を見てしまったから、先生の言う時定数はピタリ暗記されている様で、“この時、この負荷抵抗の時は、グリッドリークはその4倍...“と話は進んで、回路は書き上げて一旦終了。
”話をしただけで分かるんだから凄いね、回路が書けちゃうんだから“とご機嫌な先生が、先日他人に売ったP.Uが音が出ないと取り替えてくれと言われて置いて行った物があると、話が始まって、そのP.Uを見せてもらうと、確かに音が出難くなりそうな具合に、ヨークがカンチレバーが寄って貼り付いてしまっている。
その事を私が言うと、”落として壊したなぁ。それを交換して行ったなぁ彼奴は“と落胆していた。
私は売った事が気になって、値段を聞いたら、ベラボウな値段でもなし、手作り1点物を考えたら安く思って、この壊れたので良いから、その値段で譲って欲しいと言うと、”壊れた物を売ってくれとは、たまげた“という。
良いやつは他にもあるから、買ってくれるならば、他のにしなさいと言われたが、これを直して使うから、これで良い主旨を言うと、またも驚かれて、“面白い、じゃあ研究材料として譲る”と、譲ってもらったのである。
”音“の話を今回はしなかったが、音の話をしなければ、所謂職人。
音の話をさせると、私には付いて行けない事もあって、別世界であるが、ハヤシ先生からは、そう言った事を言い出さない人という事が分かって、そういう事を聞く、聞き出すのが良くないのであろう。そう感じた。カルトオーディオではない事に一つ安心した。説明が下手で口は悪いが職人はこんなものだ。
”直すの難しいぞぉ“とお墨付き(笑)を貰ったが、ダンパー不良という事は分かっていたから、極細のワイヤでダンパーを取り出す。
新しいダンパーを誂えないとならないかと思っていたが、上手い事整えてやる事で元へ戻った。
ギャップ内に鉄粉が吸い付いているのが気になるが、とりあえず此の儘で試聴してみる。
持ってくる時にか、先生宅でだったか、ガイドピンが紛失していたから、前にフランスから輸入していたユニバーサルのソケットの見本が1個残っていたから、これに交換する。
元の繋ぎ方は、モノーラルのオルトフォン用になっていたが、生憎モノーラルオルトフォンのアームを持っていないから、やはり交換せざるを得ない(^^;;
M7Dの様な硬さがあるから、結構重めにした方が良いP.Uであろう雰囲気はある。
とりあえず3gか5g程に。手の感覚だけで合わせて、あとは針の沈み込み具合を見てやってしまったが、聞いておけば良かったかな。
発電電圧は聞いた感じEvo3の少し上回り。
Evo3の方がハムが多く、先生作はハムが聞こえない。
ボディアースはアロンアルファ接着という事もあって、浮いていそうだが、何ら問題ない。
インピーダンスが低いから、ハムも引かないのだと考えられる。
巻きターンが少なく、高出力だから、マグネットが幾分強いか、ギャップを狭くして強くするか...ダブルでマグネットギャップがあるのも、工夫であろう。
気になる音は、ピアノ、ボーカルは手前に、低域は豊かに出るが、少しボンヤリしていそうだが、太いという印象もある。
ヴィンテージP.Uに似た雰囲気で、Evo3は、エンピツで言う、HBで、ハヤシ式は4Bの様。
古典球で鳴らした場合に、具合良い周波数特性になるのかも知れない。
Jazzは気持ち良い程に美味しく鳴る。
ベースは活きてくるし、ピアノも高い方は特に手前に近寄る感があるが、変には感じない。
ベースの立ち位置は、ピアノよりも後ろ、ドラムの後ろに回る様に感じる時もあるが、音としては出ている。
良い録音盤であれば、手前に来た。
先生が気に入っている(?)らしい、中島みゆきのLPは、少し粘っていそうな雰囲気がしたが、太い音というのだろう。
声が変調しているのか、それともテノールで歌っているパートとの分離が良いのか、低い方とソプラノが聞こえている様。
試しに安全地帯の玉置のLPを聞いてみたが、“い”の声が共振を起こして鋭いピークを生じさせてしまい、モヂる。良くない印象。
スピーカーでいう、ベーク蝶ダンパー特有の共振と同じで、クセが突起する。
他は特に気にならない。
似ているP.Uで言うと、手持ちの中ではDecca Mark Vだろう。
あれも結構独特の金属鳴りなのか、面白い所にピークがある。
ただ、振幅させるカンチレバーの硬さ、安定度が太さを感じさせるのであろうが、その面では、Shure M7Dらしい。
M7Dは共振のクセらしい突起するピークは感じない上手く均衡の良い設計なのであろう。
少しクセが欲しい時は、ハヤシ式P.Uは美味しい。