A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

低コストアンプ 完

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初っ端は大丈夫かと思う程に具合が悪い作りをしてしまって萎えていたが、今では別物の様であり(笑)
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特性を見ると、トーンコントロールにやはり癖がある。

フラットに一番近似の場所をセンターとしたから、プラスマイナスに振るとどちらかに寄っているが、VRの機械センターとした場合、それはフラットではない位置がセンターと定めてしまっている事と同じで、出力のフラットではないから、良くない事は言うまでもない。

NF型のTCであれば、完全にフラットになるが、NF型の場合はハイμの球を使わないと、可変率が下がる。

英国のアンプで、±3dB以内で満足行かないセットは良くないセット。という謳い文句(?)もあるが、後は好みかなぁ。

自身はTC無し、セレクターも無しで、代わりに直接RCAを差し替える方式で最近は使っているが、確かに文句ない。

ノイズ率も格段に下がるが、TCがあってもS/Nを良くして、入っていても、入っていないかの様なレベルに仕上げたら、TC切り離し云々の話は出ないはずで、クオリティは悪いが一般ウケが良い様にと付けといた感のあるお粗末な物が多かったから、無い方が良いという説が出るのである。

後は、フラットに行かない周波数特性を嫌った場合には、そういう話にはなるだろうが。
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H-Lカット位置
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H-L最大位置

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フォノEQ特性もテクニカルレコードでチェックしてみる。
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Auxラインの場合は静かに1本になるが、フォノの場合はハムを引いていて-45dBの辺りで鳴っている。

これは若干聞こえるが、レベルは低い方であろう。

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AuxラインのTC設定だとハイ落ちしてしまう。
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ハイは持ち上げ、丁度VRの中間に来た辺りが具合良い。

元はフォノ用で、Auxラインは、ハイフィルタとシールド線を使ってあり、ハイを落として使った時に具合良くなる様にしてあるのを、ストレートに小細工なしにしたものだから、位置が合わない。
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RIAAの位置として、とりあえずHighComp.だけ調整すれば良い様にしておいた。

 

§ 

 

Auxラインの質は上々に良い。問題はフォノEQ部分であるが、先日修理したオーディオリサーチのSP3だったか、あれも荒っぽい感じがあって、回路はカスコード接続をやって、安定化を図っていたが、ハムはやはり引いていた。

無信号状態で無音を求める方は、安物に手を出してはならない。これは間違えない。

単なる側に凝った高級品も、高い素材を使っただけで、回路が普通だったら、やはり普通だから、回路に凝った一級品を選ぶべきかと。

電源の重いフォノEQがあったとすれば、値段的には桁違いに高いだろうが、S/Nは相当良いだろう。

マネして作った所で売れなくて見本品になるだろうが(笑)

 

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これにて完成。

阿部式電気時計 Pat.31144

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阿部式電気時計こと、阿部彦吉氏の定期時報発生器を入手してきた。

県庁舎、気象台、学校、工場、そう言った場所へ設置される公共用時計であるから、あまり市場に出回る事がないが、最近はぼちぼち見かける機会が増えてきた。

増えたと言っても、年1台出るか程度である。

現存する原型を保つ物は、旧山形県庁舎、旧横浜気象台、旧丸ノ内ビルジングを知っている。

当方の元では、親時計、子時計、共に原形が動作しているが、他では親時計が最新の物へ置き換えていたり、形だけが現存しているという状態であり、完全なるセットで動作している物は定めし他には無いのではないかと思われる。

戦前、大正期の国産初の電気式親子時計である。

最初期は、電話機の発電機を使った無電池式の物で、完全に独立して動き、数十台の子時計を一斉に動作させた。

当時の電力事情と電池事情が良くない事を考えての発電システムだった事と考えられる。

所有の親時計は、もっと多くの子時計を動かす為にか、湿式電池を使った物であり、発電機が搭載された旧型を改良した物と考えられる。

特許番号は同じである。

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入手の時報制御器は、始業、終業を報せる、所謂自動時限スイッチである。

今では当たり前に時間にメロディが鳴る様に、親時計と共に標準組み込みされていて、単体で見かける事は定めし無い事と思うが、その昔は全てが単体で販売されていた。

用務員室や電力管理室に、それぞれの時計が並び、これらが一斉に動作していた訳である。

機械はバネスイッチが触ってあったが、折られる事なく、修繕が出来た。
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端子は長年の汚れで全く不通であったが、磨いてやれば問題なく。
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とりあえず、社員が居るわけではないから、ベルを鳴らす事はしないが、動作させられる状態へ修繕し、子時計として動作をさせておく。
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親時計は元々1分信号型であるが、手持ちの子時計は30秒型であるから、1分で2信号を出す様に組み替えたのであるが、このセットは1分信号型であるから、2信号入ってしまうと2分進んでしまう事になるから、2信号の内1信号だけを取り出すべく、ダイオードを追加する事でこれらが解決する。

機械の構造上、壊れる箇所は基本的に無いが、励磁によって、電磁マグネットから、鉄片が外れなくなり、時間が進まなくなるという不具合が現れたから、これにより廃棄された事と考えられる。

電磁マグネットには、より少ない電流で強力動作を得る為か、弱いものの永久磁石が取り付けられている様であるから、鉄片が吸い付くのも訳ない。

ここへギャップが生じる様に絶縁材の薄板を挟む事で、吸い付きは回避できる。

以前にも、この様な事があって、元はファイバーや絶縁紙が挟んであった可能性が高いが、実験をしてみて、得た結果が具合良いのである。

ギャップ用の調整ネジが取り付けられていたりする場合もあり、コルクと思われしダンパーが押し込んである物もあったが、劣化していてどの位の物が付いていたのか判断がつかない。

最も、当時の図面も存在しない。

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当所へ引き込んでいる沖電気の子時計から分配して信号を得る。

阿部式は戦後少し迄は存在していた様であるが、東京電気時計が権利を買い、その後に沖電気に渡っている様子である。

構造はどれも同じで、見ると素材、プレス金型も同じ様なのである。


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動作確認。
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時報設定は12時間しかなく、5分毎に1度の信号が設定、発生させられる構造であるが、終業後、深夜にベルを鳴らさない為に、6時手前の12時間毎に切り替え歯車があり、完全自動化をした構造になっていた。

一度動き出すと親時計を止めない限りは、止まる事はないから、24時間表記はないが、万が一止まってしまった場合は、ベルが鳴るのが日中に起きる様に親時計の制御盤を手動へ切り替え、手でレバーを回して調整する必要がある。

その様な事がない様に、親時計の動力である分銅下方には、低下警報のスイッチがあり、運針が止まる前に警報が鳴る仕掛けになっている。

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時報設定部内部、接点機構部。

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ケースは端子と機構があるためか、珍しく宮型である。

一般のゼンマイ式時計の小型の大きさと似ているが、それよりも数倍重くドッシリしている。

複雑な機械の塊だから致し方ない。

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ダイアルは彫り込み文字に黒ペイント、錫メッキである。

錫メッキは触ると変色が起こるが、これは非常に綺麗な状態。

子時計に入っているABEのロゴがある。
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親時計は正式名称でロゴはない。

ダイアルのフォントが一致している事から、同年代のセットである可能性は非常に高い。

当時のパンフレットでも残っていれば、他にどの様なセットが存在したのか分かるであろうが、恐らく出て来ないと思われる。

 

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恐らく昭和20年台の子時計デザイン。

阿部式の後期と思われし。

同デザインで東京電気時計から出ているタイプは、定めし新しい。

 

ps:1936年に電電公社によって建てられた建物へ残っていたのと同型であったから、本品も戦前、昭和10年〜20年辺りの品物であろう可能性が高くなった。


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時代は戦後、マルゼンのパンフレットより一部抜粋。
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東京電気時計のモニタ用子時計

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低コストアンプ pt7

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一旦は失敗したかなぁと思っていたけれども、何とか立て直した。

入力感度が高過ぎて、ノイズを拾う問題は入力感度を落として使い易くしゲインも多くNFで戻して都合良くした。

フォノも隔離する様に大きい信号からは遠ざけ、Bも毎度の定電圧放電管でドロップしてB変動に伴う低域揺らぎを阻止すると共に、モーターボーディング発振も阻止出来る。

電流は殆ど流さない、所謂昔ながらの回路構成である。

他、改善策が思い付いた所は全て修正しておいて結果良好。以前の状態が別物の様。

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各所を点検。

マイクロホニックは殆ど無いが、初段は叩くと其れ相応の音が遠くでする。

先日のRCAPAアンプと同じ所から出た、アメリカ軍の無線機から取り外したシールドソケットは、袴ソケットだけで頭シールドは無くてもハムは無く問題ない。

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今回はかなりチャレンジャーでヘッドフォン端子を設けた。

作った事がある方であれば、何を言っているのか分かる事であろうが、耳の一番近くで鳴る訳であるから、ノイズがあれば一目瞭然で、スピーカーから出る音よりも、繊細な部分が目立ってくる。

であるから、普通一般の自作機をヘッドホンで聞くとノイズやらハムやらが多いはずで、聞くに耐えないという方も多いであろう。

昭和33年頃にコロムビア/デノンが発売したMA-20は当時の高価な部類と思うが、あれは随分とハムが大きくて凄い雑な音がしていた。

時代もあるだろうが、メーカー品でも苦労する部分なのだと思われる。

本機は端子へ接続するとスピーカーと共に鳴るから、スピーカー切り離しswにてOffにすると、ヘッドホン出力のみになる。

S.P Offにした時にはダミー負荷が挿入され、ヘッドホンのインピーダンスに依存しない設計になっている。

この辺りは、MA-20の構成と同じである。回路図は無いが頭に入っている。何故ならば一度解体して調べたからである(笑)

また、この構造にしたのであれば、外部出力を設けてアウターパワーアンプを駆動する事も可能になるから、そのOUT端子は設けた。

S.POffにしなければ、2アンプ・4スピーカーで鳴らせる。

内蔵の終段はppであるから、質は並程度であろうが、メーカーの作る安い球アンプと比べたら相当上回ってしまう事と推測。

 

§ 

 

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試しにファイナルのプレートの音も聞いてみる。

こういった時に都合の良いStaxの静電型である。

B電圧が100Vでgmの高い球であるから、Staxをフルスイングさせるには電圧が低いから、そんなに大きい音は得られなかったが、低域は引っ込んで開放型らしい音だが、中高域の繊細さは伝わってくる。

 

それと、ヘッドホンの薄平の線を回路へ近付けると発振を起こす部分を発見。

メインVRである。

面白い事に、球の近くでは一切起きず、VRに近付く程にレベルは高くなる。

シャーシ上、球にも巻いたりして発振するのかみたが、安定であった。

トーンコントロールも安定的であった。

メインVRは、500k受けであるが、Tパッドの構成で、前に100kがあるからインピーダンスは100kになる。

グリッド側へも22kがあるから、絞ってもインピーダンスは22kである。しかしながら、グリッドへはNFBが掛かっているから、もう少し低くなっているかも知れない。

Note:Staxの音を聞く以外の使い方として、発振が起きる不安定な回路判別発見に役立つ可能性

ハヤシ式 P.U

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研究家、ハヤシ先生宅2度目の訪問になる。

お客さんの要望に対して、回路理解の追い付く(?)私が中間に入って通訳の様な具合に紙に書き出して行くという作業。

今回のお題は回路改良で、先生の言う回路を図面に起こす。

WEの図集を見てしまったから、先生の言う時定数はピタリ暗記されている様で、“この時、この負荷抵抗の時は、グリッドリークはその4倍...“と話は進んで、回路は書き上げて一旦終了。

”話をしただけで分かるんだから凄いね、回路が書けちゃうんだから“とご機嫌な先生が、先日他人に売ったP.Uが音が出ないと取り替えてくれと言われて置いて行った物があると、話が始まって、そのP.Uを見せてもらうと、確かに音が出難くなりそうな具合に、ヨークがカンチレバーが寄って貼り付いてしまっている。

その事を私が言うと、”落として壊したなぁ。それを交換して行ったなぁ彼奴は“と落胆していた。

私は売った事が気になって、値段を聞いたら、ベラボウな値段でもなし、手作り1点物を考えたら安く思って、この壊れたので良いから、その値段で譲って欲しいと言うと、”壊れた物を売ってくれとは、たまげた“という。

良いやつは他にもあるから、買ってくれるならば、他のにしなさいと言われたが、これを直して使うから、これで良い主旨を言うと、またも驚かれて、“面白い、じゃあ研究材料として譲る”と、譲ってもらったのである。

 

”音“の話を今回はしなかったが、音の話をしなければ、所謂職人。

音の話をさせると、私には付いて行けない事もあって、別世界であるが、ハヤシ先生からは、そう言った事を言い出さない人という事が分かって、そういう事を聞く、聞き出すのが良くないのであろう。そう感じた。カルトオーディオではない事に一つ安心した。説明が下手で口は悪いが職人はこんなものだ。

 

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”直すの難しいぞぉ“とお墨付き(笑)を貰ったが、ダンパー不良という事は分かっていたから、極細のワイヤでダンパーを取り出す。
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新しいダンパーを誂えないとならないかと思っていたが、上手い事整えてやる事で元へ戻った。

ギャップ内に鉄粉が吸い付いているのが気になるが、とりあえず此の儘で試聴してみる。
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持ってくる時にか、先生宅でだったか、ガイドピンが紛失していたから、前にフランスから輸入していたユニバーサルのソケットの見本が1個残っていたから、これに交換する。
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元の繋ぎ方は、モノーラルのオルトフォン用になっていたが、生憎モノーラルオルトフォンのアームを持っていないから、やはり交換せざるを得ない(^^;;

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M7Dの様な硬さがあるから、結構重めにした方が良いP.Uであろう雰囲気はある。

とりあえず3gか5g程に。手の感覚だけで合わせて、あとは針の沈み込み具合を見てやってしまったが、聞いておけば良かったかな。

 

発電電圧は聞いた感じEvo3の少し上回り。

Evo3の方がハムが多く、先生作はハムが聞こえない。

ボディアースはアロンアルファ接着という事もあって、浮いていそうだが、何ら問題ない。

インピーダンスが低いから、ハムも引かないのだと考えられる。

巻きターンが少なく、高出力だから、マグネットが幾分強いか、ギャップを狭くして強くするか...ダブルでマグネットギャップがあるのも、工夫であろう。

気になる音は、ピアノ、ボーカルは手前に、低域は豊かに出るが、少しボンヤリしていそうだが、太いという印象もある。

ヴィンテージP.Uに似た雰囲気で、Evo3は、エンピツで言う、HBで、ハヤシ式は4Bの様。

古典球で鳴らした場合に、具合良い周波数特性になるのかも知れない。

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Jazzは気持ち良い程に美味しく鳴る。

ベースは活きてくるし、ピアノも高い方は特に手前に近寄る感があるが、変には感じない。

ベースの立ち位置は、ピアノよりも後ろ、ドラムの後ろに回る様に感じる時もあるが、音としては出ている。

良い録音盤であれば、手前に来た。

先生が気に入っている(?)らしい、中島みゆきのLPは、少し粘っていそうな雰囲気がしたが、太い音というのだろう。

声が変調しているのか、それともテノールで歌っているパートとの分離が良いのか、低い方とソプラノが聞こえている様。

試しに安全地帯の玉置のLPを聞いてみたが、“い”の声が共振を起こして鋭いピークを生じさせてしまい、モヂる。良くない印象。

スピーカーでいう、ベーク蝶ダンパー特有の共振と同じで、クセが突起する。

他は特に気にならない。

似ているP.Uで言うと、手持ちの中ではDecca Mark Vだろう。

あれも結構独特の金属鳴りなのか、面白い所にピークがある。

ただ、振幅させるカンチレバーの硬さ、安定度が太さを感じさせるのであろうが、その面では、Shure M7Dらしい。

M7Dは共振のクセらしい突起するピークは感じない上手く均衡の良い設計なのであろう。

少しクセが欲しい時は、ハヤシ式P.Uは美味しい。

RCA MI-38104A 続編

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漏れたカップリングを交換してやると、バイアスが狂わない為か、増幅率が増して、ガンとアタックの強い音が出る様になった。

4個のスピーカーを同時に駆動させてもモヂらず、ガンガン鳴る。

下手なパワーアンプよりも遥かに良い質で、不思議とハムもノイズが無くて羨ましい限りで、作り手としては非常に悔しくなる。

それだけ、考えられた設計なのだと思われ、雑な作りの様で、これでも十分に機能に支障が無い様に完成しているのだろう。

国産の民生機とは質が違うのは言うまでもないが、民生機はハムもやや残っていて、ノイズも多い。

業務用となると、ホーン型を使った場合は音圧が桁違いにあるから、民生機程度ではS/Nが悪くて使い物にならないであろう。

そういう事を鑑みて作ってある事は言うまでも無い。

絶縁不良のカップリングは、筒が琺瑯らしく、片面は樹脂で、もう一方はコンパウンドで封がしてある。こちらが巻き始めと思われる。

流石良い作りである。

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RCAだから、定めしRCA繋ぎをした電源であろうと思って、回路を追うと、やはりRCA繋ぎがやってあった。

左の薄べったい抵抗がB+のリーク用で、右の緑の薄い琺瑯抵抗がカソード側のである。

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B+の安定を図る為に、抵抗を使ってカソードへ結び、カソードとヒーターのCTへ繋いでバイアスを印加する。

カソードバイアスの抵抗には、B+のドロップ分とカソード側との電流が入る。

この部分が、1つ、2つ上のランクのアンプになると、定電圧放電管を使った物へ変わる。

この繋ぎ方をすると、終段が変動しても、バイアスはB+からのドロップ分がある為、丁度C電源を使った時の様に安定に保持される。

シーソーの様に動作する。

しかしながら、6SL7はp-kで繋がっているだけであるから、AB1の範囲でしか動作は出来ない。

それでもAB1のフルスイングさせるだけのパワーは引き出せる繋ぎ方である。

勝手にRCA繋ぎと書いたが、定電圧放電管をBにシリースに入れたらアルテック型と言われているから、これはRCA型としても良いと思う。

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都合良いネジを探したら、とりあえず止まったからボンネットを掛けて、見ていたら、凹みが気になり出して。

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板金屋兼配線組み立て兼事務員を工場(会社)でやっていた時代があるから、こういう凹み系は気になる。修正。

今思うと、3人分くらいの仕事を一挙にやっていた。手取り給料は15万。1年で確か昇給は500円だった記憶。昭和の話じゃ無い。平成の話である(爆)

よく板金部門の職人から、給料倍額貰えよ。と言われていたのが懐かしい(笑)

今思うと貰いは少なかったが、板金加工、電気/ガス溶接、旋盤、フライス、タレパン、NC、研磨機、磁気抜き、ありとあらゆる部門で一通りやって来たから、その経験値の価値は値段には変えられないはずで、とりあえず自分はそれで満足。

給料が良くても、ドリル1本、ハサミも研げない様な人材が今は残っている様だ。

まぁ何でもダメになったら新しい物を買えば良いやな。金持ち会社は(笑)

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仕上がり...

あれあれ、仕上がっちゃった(^ω^;;)

本当は壊して新しく組んでも良いかなと思っていたけれども、あまりにも具合が良くて、直してしまった(笑)

じゃあ16mmトーキーに今度使ってみますかね。

それとも欲しい人いますか?と訊いてみる(笑)

 

 

 

ps:気になって特性を見てみた。

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無入力時のハムレベルは-35dB程だった。

両波整流であるが、50c/sが立ち上がっているから、ヒーターから来るハムかな。

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トーンコントロール両方Maxの位置。

時代的に考えてもHiFiよりも前のWide-Rangeの頃だから、高域特性はあまり良くないが、出ていても私には聞こえないから、これでも十分(笑)

夕時は疲れるのか、耳鳴りが強く聞こえが悪くなるから余計に聞こえない。

少し高域に行くにつれて、上がり気味の特性は、定めし高域を上げて特性を伸ばそうとした結果と思われ。

昔のトランスは高域にピークを持って来てHiFi感がある様にした物がある。

これはまだ良い方と思う。凄いのは本当に立ち上がっている。

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低域其の儘、高域Cut位置
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両方Cut位置

あまり山にならないが、低域は引っ込んだ感が感じられる。

ボーカルは良い感じに屋外で聞いている様な雰囲気になる。

ある程度の音量(爆音)を出すと、これの方がフラットに聞こえる。

ライブは本当だったら、ローとハイをカットした山になった音の方が良いが、最近のPAさんは難聴なのか、分かっていないのか、フラットで爆音で鳴らすから、ドンシャリしていて耳が痛くなる。

耳栓するとローは落ちないが、ハイカットになって具合良い。まだ聞ける。

はしゃぎたいだけのコンサートであれば良いだろうが、音楽を聞きたいならば、耳栓必須。

ローもある程度カット出来れば最適だが、体に伝って低域は回り込んで聞こえてしまうから、どうにも難しい。

 

RCA MI-38104A

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前々から寝かしていたRCAPAセットがあり、諸事情で場所を移動させた方が良い雰囲気になったから、持ち場に運んだ。
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大元の出所は米軍駐屯地の払い下げで、それを一時は学校放送用に使っていた時代があり、それも払い下げられた、所謂骨董品。

ぱっと見、分解して回路を触った形跡が強く、ケースのネジが揃っていない、いや、殆ど無いに近いという廃棄物感が漂う。

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終段は7027であるが、抜かれていて無くて、6BG6を代わりに使える様にしようかと思って挿した。

しかし、データシートを見たら随分ピンアサインが異なっていて、1箇所程度と甘く考えていただけに、それは止めにしてタワーアンプから6L6を拝借して来て試すことにした。
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30年以上(?)は、前オーナーが放ったらかしにしていたとの事だから、フォーミングしないで通電したら、コンデンサの電解液臭い紙吹雪クラッカーかも知れない。その前に5U4が吹っ飛んで危機回避をしてくれるかも知れないが、それに頼るのも危険な香りしかしない。

そもそも、7027は6L6GCの軍用割り振りで、それでも1930年代後期の製品位だろうと思うから、かなり年寄りな事には違いない。

 

交換修理という修理はしていない様にザックリ見た感じする。

AC部分は随分弄った感があるが、増幅部は触っていない様子。

AC線は切ってあったから、毎度のヨリ線で繋いだ。

シールド線辺りは触っていそうに見えたが、上手い仕上げになっているから、元々かな?

流れ作業で女工さんがパッパ組んで作っていた頃だから、あまり綺麗じゃないのは致し方ない。量産の悪い部分である。

それでも日本って綺麗に作るモノで、テレビの中の、あの量の部品を綺麗に整頓して纏めて仕上げていたもので。

舶来のを見るとコンデンサは斜めに走るし、ピーキングコイルはブラブラとビヨンビヨンしているし(笑)

 

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20Vから時間を掛けて徐々に上げて行くと40Vを越えた時点で僅かに増幅が始まり、音が聞こえた。

何も無しにジワジワやるのも、退屈だから信号を入れておいたのである。

それからまたジワジワと110V迄上げておいたから、100Vを今度はドンで入れても大丈夫であろう。

100V時の消費電力は100Wだった。

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RCAのエンブレムがカッコイイ(o^^o)
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ハムも無いし一見して具合良い雰囲気であるが、初段とトーンコントロールの間のカップリングが漏れていて、VRを回すとゴソゴソと直流漏れの音がするから、交換しないとVRのカーボンを焼く羽目になるのは見えている。

だからアースの方に倒しておいて、カーボンに電流が行かない様にして試験。短期間ならば何処の位置でも問題無いだろうが。

意味が分かっているのと、いないのでは、より壊すか壊さないかの分岐点でもある(笑)

 

本機のトーンコントロールはMaxの位置でフラットに来る、減衰のみの簡易型が採用されている。

という事は、前段に入るアンプで、低域と高域を持ち上げた出力のセットを繋いだ時に、このトーンコントロールを真ん中にした時に具合良くフラットになる様に設計されている物の可能性が高い。

とは言っても、Phonographの入力しか無いのであるが、1V位無いとフルスイングしそうに無いから、フォノEQユニットは必要である。

低域を大幅に持ち上げて、高域は浅くカットした出力の物が繋がると最適という事になる。

トーンコントロールを中央にセットして“上下にコントロールを効かせる場合に”はである。

そうすると、必然的にマイクの入力も低高がカットされ、中高域が山になった特性になって、声が良く通る音に仕上がる。

設計の意図を汲み取ると、そう考えられるが、まぁ人それぞれ思う節は異なるかと思うが。

 

前段に繋がるセットが入手出来れば、結果が分かるが、それは無理難題の様に思うが、変に低域が強調され、ハイのキラキラしたEQユニットがあるとすれば、これを通すと足し引きして、フラットな出力が得られるであろう。

昔のユニットは、1台1台バラでは上手く動かない事が多い。セットになって結果的に特性を揃えるという設計であれば、全てが揃わなければ、良さは分からないハズである。

それを“持ち味”と考えるかは別であるが。

低コストアンプ pt6

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本体ケースもブーンとリーケージフラックスの影響で鳴ってしまっているが、僅かハムも残っている事が気になる。

見ると100mV p-pでノコギリ波に似たノイズが観測できる。

多少のリプルがあってもppであるから打ち消しあって静かになるが、sgに2Vの同上のリプルがあるから、これが影響しているらしい。

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更に気になる、スー、サーというノイズがある。

電源を切ってもリーク抵抗を付けていなかったからB+にリーク抵抗を追加し、ヒーター部分を117のカソードに繋げて2000pfでデカップリングとして試聴してみるとノイズレベルがかなり下がった。

トーンコントロールは、発振の気があるから、局部負帰還をさせて増幅度を少し下げてやると更に具合良くなって来た。

しかしながら、まだHi-compをMaxにすると発振の気があるから改良が必要。

線の取り回しが問題になって来ているかも知れない。

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sgにどれ位流れているのか、調べる抵抗が無いから、推測でやったら2WのABの抵抗が膨らんで焼き壊してしまった(^^;;

8本になると結構な電流になって、Esg76Vで120mAだった。

ドロップして電圧を低くした方が低域がドンドコする感じがしたが、ある程度電圧は高い方が良い様だから、ドロップは少なくデカップリングを入れてリプルは100mVになった。

ノイズはトーンコントロールから来るもので、ハムは感じられない。

まだ全体ゲインが高く、ノイズを増幅している方が高い様だから、具合良い様にLパッドで調整する事にする。