A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

古い6L6のプッシュプル

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修繕不能と見放されたアンプを買ったとお馴染みのお客さんから預かった。

付いている6L6GCは焼けている様であるし、キーも折れて不適当な向きで挿さっていた。

更にppであるであろうがもう1本は無い。整流管もない。

通電した気配はない。

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よく見たらACアウトレットは寸切りしてあるし、シースが無くなって銅が剥き出し。なるほど。廃品感強い状態だ。

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このヒューズが切れる時にはトランスは火を吹いているであろう。

滅茶苦茶であるが、よくある。朝飯前。笑って交換しておく。
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6L6ppのドライブに6N7。

6N7と言うと、B級ppが1本で組める10W程の出力管であるが、6L6を押すのに使えるのであろうか?AB2を期待しているのかな?

B級であると、信号が入らないと電流が流れないから、小信号ではかなり歪みっぽいかも知れない。

デザインからすると、ギターアンプにも見えるが、この古さからすると拡声器の様である。

High/Lowの3系統の入力があり、それぞれブレンド出来るだろうから、マイクアンプだと思う。

可搬型拡声器。

あまり良さそうな帯域は期待出来ない可能性が高いが、やってみないと分からない。

まぁまぁ、それを言ったら電話回線の歪みは40%多い所であったそうであるが、それでも問題なく使えるのであるから、問題ないとも言えるのかも知れない(笑)

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半世紀前に1度修理した様な雰囲気。

それから、少しづつ修理を重ねている様に見受けられる。

部品が詰まっていて6L6のソケットが見えない。

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トランスはP.T、OPT、CHと並んでいるが、全て交換しているのかネジ位置が其々合っていなくて、ガタガタに取り付いていてハンダで止めてある。

P.Tが一番酷くて、板金を無理矢理大きく加工した際にか、変形している…が、取り付いているから、まぁ良いのかな。

本来はもう暫し大きいトランスが乗っかっていた様な穴位置。

楕円の様な穴が開いていているから、縦型の物が乗っていたのかな?分からないが、角穴を開けた感は強くある。

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解体しながら回路図を書き出し、同時に部品を測定して良否を見たが、殆どズレを生じていて不良。

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大きく長い複合電力型巻線抵抗は生きていた。

流石オーマイト。

カソードの抵抗は135Ωと小さく、かなりA級寄りの動作になりそうな気がするが、B+のブリーダーも兼用していて、このカソード部へもブリーダー電流が流れるから、バイアスは深くなるのである。

同時にB+からの信号がカソードへ戻って、NFが掛かる。

B電圧の変動に対して、バイアスが変化を起こす訳であるから、シーソーの様にB電源の安定化を自己バイアスを行いながら動作する。

古いRCAのアンプがこの方式をやっていた。

電燈線電圧の変動が大きかった時代には有効な安定化策だと思う。

今は電圧が20%も低くなる事は滅多ないし、こんな大きい巻線抵抗を熱々にして安定化を図るよりか、レギュレータの石を入れたら、これ以上に良い精度で安定化が図れるかと思う。

然し乍ら、多量の電流をブリーダーで流す事によって、回路全体の安定化は図れる事は間違えなく、ブリーダーを入れない今一般のアマチュア製よりかは、断然安定性、レギュレーションは相当良い。

 

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6L6のグリッドリーク抵抗が無い?

もしそうであれば、片側の6L6はバイアスが得られず電流が多量に流れた筈である。

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調べを進めると、どうにもチタコンにしか見えないこの黄色いのが400kらしい。抵抗器である。

古いカーボンか?

これが6N7の片ユニットのgへ入っているから、クオードの様な具合に位相反転を行っている様である。

低域の時定数は1加算される回路と記憶している。
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6N7の周りの抵抗は膨大化していて1M以上出るのもある。

完全に壊れている。
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その中でも、このピンク色のカラーコードは何なのかが不明。

紫が変色した物とすれば7k辺りか?

ps:何色が正しいのかね?と会社で話していたが、紫が変色した説が強ち外れていない気がした。

恐らく7kΩであろう。だとすれば、20%は超えているが、電圧がどれ位出るのか確かめて、良否を見る事にして残す事にした。
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専ら抵抗は膨大化しているから、電流が流れなくなるだけだからまぁ良いとして、コンデンサは漏れが酷くて実用的ではないから、電源部で漏れが多くて壊れれいないか心配になって、P.L以外の無負荷で通電試験。

100vを入れるとトランスはビーンと鳴いて、200mA流れているから、レアショート気味のトランスの可能性が高い。

1次側のレアショートだとすると、数割方2次が多く出るが、そうでもないから、2次のレアショートかも知れない。

フィラメント巻線を無理させて焼く事は古い物はあるが、その類か…?

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そう考えると、含浸させたワックスが流れ出るのも訳ない。

然し乍ら、各所の電圧は規定通りで、Bは幾ら出るのが正常なのか分からないが、両波で殆ど差が無いから、レアショートの気配はない。

単なる作りが悪くて鳴きが大きく、コア損失が大きく20W食っているだけ…

と考えて良いのであろうか…?

やはりややレアショートはしていると思うのであるが…。

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定着に時間が掛かるから、エポキシを練っておいて、端子を作る。
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スピーカー端子を出すと言っても、新しくシャーシに追加工するのも現状が良いミテクレをしていて気が引けるし、付いているソケットはカシメてあって、外すも勿体無い感。

最大限に現状を維持した状態で端子を増やすには、ソケットを元々の通りに活かす方法しかなく。

このデザインになった。

これはスピーカー端子専用プラグである。

接着力、耐久性、絶縁共に最高である。車輌メーカーで指定されているものでもある。

その様な耐久性が求められた製品ではないのは分かっているが、長年使って来たから、勝手が分かっているから、使い易いのである。私にとっては(^ω^;;)

硬くて練り難いのは致し方ない。

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解体を進めて全貌が見えた所で、回路に問題がないか検討。

手直し部分は多いが、ハズレた手直しはされていない様である。

暫し無駄に重複してアースをとった線があったが、それはまだまだ良い。

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入力を見ると、不思議な繋ぎ方をやっていた。

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Hi/Low入力をボリューム2つで切り替えるというもの。

これだと両方のボリュームを上げた際に逆相になった信号が戻る事になるから、ゲインは相殺されてしまう。

更に戻す量を増やすと、逆相が勝って発振するであろう。

どういった使い方をしていたのか見えて来ないが、あまり良い方法には見え難いから、入力も2つある事であるし、単独にした。

これで発振する事はない。

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部品を交換し、試運転に通電してみる。
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特に問題なく音が出た。

歪みが物凄いかと想像していたが、全くその様な事は気にならなかった。

拡声器以上、電蓄寄りである。

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然し乍ら、どうにも高域が暗い。

音色調整は回路を組まなかったが、ストレートでも高域が持ち上がっては聞こえない。

それで、この症状の原因は、3系統をブレンドしているこのボリュームにあると睨んだ。

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通常使いであると、1番に入力して摺動子を出力としたLパッドである。

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それを3系統でやってみると出来ない事は一目瞭然で、どれか1つを絞ると抵抗値が0に迫って、他の信号が出る事はない。

それでFig2の様に、逆接にする事で解決する。

然し乍らこれには問題があって、入力側の抵抗値が絞るにつれて過負荷になる。

でもって、3個のVRの和が1MΩだとすると、1個あたりのVRは幾らになるであろうか。

答えは3MΩである。

これは非常に高域の衰退を招く回路であり、カーボンの高抵抗はハイ落ちするのである。

恐らくトランスに依存したハイ落ちではなく、このブレンド回路による減衰と思われるから、これをやめて1入力とすれば、なんら問題はなくなる。

これはまた明日実験してみる。