A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

水銀スイッチ式

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ATOの電氣時計の中では、水銀スイッチが用いられた事は多分無いかと思われるが、前々から水銀の球が、振り子の勢いでON-OFFを繰り返せば、半永久的な電氣時計が出来るなとは思っていた。

然し乍ら、その様な現物が市場に出回っているのを見た事がないし、有るとすれば1世紀は経っている代物であろうと思われる。

出回らない理由として考えるとすれば、半永久的に壊れず、手放す理由がないから、乃至、希少で市場に出回る前に貰い手が居るから。

専ら、そんな物は存在しない、廃棄済で現存していない。これは結構究極だが、強ち外れていない可能性もあり得る。

とにかく古臭い技術な感じがするが、実際にどういった動きをするのか、やってみたい。これに尽きる。

 

今回は完全に新しい物を1から作るのも研究費が嵩むから、ATOの電氣時計を少しばかり借りて、実験してみた。
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大きいタイプはジャブジャブしているが、その分結構な重さがあり、大きい振り子でないと上手く行かなそう。

そんなで、小型の物を買って用意した。

結果としては、何通りかの事をやってみたが、上手く持続して動く事はなかった。

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私の想像では、振り子の勢いで重い水銀が押し寄って、ON-OFFすると思っていた。

確かに想像通りの動きではあったのだが、ABCで記した様に、ガラスの壁へ衝突した瞬間に水銀は形を変えて、瞬時に戻ろうとするのである。

水銀の柔らかさはとても良いから、これが瞬時に行ったり来たりと遊んでしまう。

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従って、ガラス中の水銀は振り子とは違う振動の動きを見せる時があり、それで完全に切断であって欲しい区間の、振り子がコイルから抜ける時に接断を繰り返して、振り子の自重で自由運動によって戻ろうとしている最中に引き込みを起こして急停止をするのである。

互いに逆方向へ引っ張り合うとも言う。

振りの大きい時は勢いで誤魔化せるかも分からないが、それでも振りが小さくなるという事は、エラーが発生しているという事であろう。

上手く持続する様であれば、この間隔が正確に行われているという意味になる。

水銀式がお目に掛かれないのも、もしかすると上手く行かないという意味なのかも知れない。

 

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次に、コイルをもう1つ増やし、トランジスタをスイッチとして使う方式を試してみる。

これは晩年のATO、Junghansに買われた後の技術かも知れないが、現存している物も多い。

検知、カットオフのコイルをどれ位巻けば良いのか分からないから、手探りでこんな物かなと巻いたが、結果は持続しなかった。

電圧降下を考えて2本に電池を増やしてもみたが、動こうと頑張るものの、やはり振り幅は小さくなる一方。

オシロスコープでも波形を確認したが、Sin波が振り子の揺れと共に確認出来ている。

 

今回は持続しなかったものの、これはかなり有効な事に違いない。

ナショナルやSEIKOソノーラ、シチズン、SATO時計他がやっているから、出来ない事はない。

 

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光星舎は晩年でも機械スイッチング方式を採用していて、トランジスタに手を付けたか分からない。

東海標準時計 ATLASは、ATOの旧型に似ていて、光星舎の古い物もやはり同じである。

多分技術を買っているのでは買っているのではないかなと想像。

ATOよりもバネの質だったりが国産ぽい。

要は良くないのである。

恐らく混ぜ物があまり良くない質なのではないかな。

それに比べると、欧州の金属はかなり良質な時代もあるが、世界恐慌後の大量生産が始まった頃は、質が著しく悪い時もある。

粘り気がなく、折れやすい。しかも鉄もコシがなくすぐ曲がる。

最も、ケチっているのか細い。

確かに小さく、細かくした方が精度は上がるかも知れないが、100年以上持つ様な、丈夫に設計されていた頃と比べると、酷い変わり様である。

 

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オリジナルのシーソー式はそれで言うと、良く出来た、完成した構造なのであろうと思われる。

ただ、持続性が今になると不安定。

金属も酸化で接触が悪化するのであろうと推測。

不思議な事に、接触の悪くなる速度は早く、試運転で良くても、ケースに入れて数日で動かなくなる事もある。

特に接触子は、バネでテンションが掛かっている訳でもなく、金属同士が撫でる程度の接触であるから、尚もシビアである事には違いはないが、銀接点は有効そうな気はする。