A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

Zenith 9H888

修理依頼品。

ゼニスの電蓄ラジオで、家具調の大型コンソールであるが、筐体は大き過ぎて家に入らないから、プレーヤーとレシーバーセットだけを抜き出して、ドック入りした。

FMはあわよくば入れば良いという事で、動かなくても良いという事である。

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1946年のセットで、プレーヤーはどうやら選べた(?)様子で、78 SP再生だけのが一番下位の様で、LP 33の速度と、緑コブラのある物が上位の様である。

もしかすると、初期と後期でも違うのかも知れない。

今回の物は、78rpmチェンジャーのみになっている。
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ゼニス特有の、最後の盤が演奏終えても、自動で停止する機構はない。

従って、最後の1枚は永遠ループになる。

更に12インチ検知は落ちた時にしかしないから、12インチの盤が演奏が終わると、10インチとして途中から演奏が始まるという事に。

まぁまぁ、大らかな時代とも言えそう。

停止は、アームを手で引き戻して、スイッチをOFFにする。

レコードしか使わないのであれば、セット側の電源をブツ切りでも良いが、やはりアームは手で戻す手間がある。

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自身も1台、コブラマチックは所有しているが、こんなにもスピンドルが曲がっちゃいない。

面白いカーブである。

こんな様に、12インチはジワリと落ちてきて面白い動きである。

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裏面。

鎖で自動機構が一周する様になっている。

演奏が始まると自動機構は一切の絶縁状態になる。

雑音対策は優れている。
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通電してみるとモーターは回った。

アイドラが滑って、やり方を考えていると、白煙とバチンと派手な音がした。

スイッチのスパークキラーに入っていたマイカドンが破裂した。

絶縁不良だったらしい。
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イカモールドとあるから、マイカドンである事は間違えないと思っていたが…
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折角口を割ったから、調べると、オイルペーパーではないか。

イカなんて使っていなかった。

MICAMOLD RADIO CORP。社名なのだな(^ω^;;)

WEのマイカっぽい四角いのも、実は分解してみるとペーパー。

そういうのは良くある事。
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アイドラはこの時代では一般的だったかも知れないが、常に接触した儘なのである。

であるから、何年も使っていないと、接触面がゴドンゴドンとコゴツキが出る。

当時は交換すれば良いじゃないか。多分そういう考えだったかと思う。

今では手に入らないから、削いで綺麗にしてやる。

これでまた使える様になった。

 

 

プレーヤー部は給油とで動きは良いから、アンプ部に移る。

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ブロックケミコンにXマークがある。

6V6がTENだったり、手直しされている。

IFTの1個が、アルミケースが無く、コイルが剥き出し。

FMは受信できない可能性が高そうである。
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ケミカルが交換、カップリングがNCCだったり、三菱だったり、かなり古い物もあるし、ケミカルは割と近年だったり、色々やっている様であるが、NCCも三菱もオイルペーパーは絶縁不良で温まる。

交換する。

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ブロックケミコンも怪しいから、チューブラに交換。

AMは受信出来たが、FMはやはり発振も止まるし、具合が悪い。

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そもそも、OLD 42mc-48mc、 New 88mc-108mcと、国内放送の域としては、高い方のワイドFMが僅か入るか程度であるから、これは難題かな。

周波数が下がる様にも何とも出来るか分からない。
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とりあえずはFMでも発振する様にはなったが、AMよりもかなり小さく、受信は確認出来ず。

AMはかなり感度が良く、ループアンテナの向きをアレコレすれば可変が可能で、これにてラジオは良しとするかなと。

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プレーヤーと繋いで、音出ししてみる。

ゼニスコブラは、専用カートリッジで、Radionic PhonoCartridgeというそう。

2.5mcの高周波バイアスをP.Uへ印加し、AM変調で信号を取り出す。

従って、カートリッジはコイルと鉄片しかない単純な物である。

MCやMMのアンプに繋いでも音は出ない。

ゼニス独自の規格である。

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キャプスタンは60c/sで78rpmになっているから、50c/sで78rpmが出る様に再加工。

今迄分解して得た昔のやり方を模して+20%になる様にする。

 

ボリューム最大でもあまり大きい音が出ないから、6V6が弱っているのかなと思ったが、エミッションは良好。

音量の回路が普通一般とはかなりかけ離れて複雑な構成の回路で、ボリューム手前でNFBを引き込んでいて、尚且つトーンコントロール兼用とした、珍しい様式。

トーン切り替えでoffにも出来、不帰還しない方が音は大きい。

能率の高いユニットを使う事が前提なのか、それとも、そもそもユニットの上にプレーヤーが位置するから、共振防止に最大音量でも6V6をフルスイングさせない設計?

ちょっと分からないが、AM変調でAFを取り出すのにIF段を通っているからRadionicというだけあって普通でない。

普通は発振を嫌がるAFに、発振を上手く利用した凝らした設計である。

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発振周波数は2.5mc出ていて正規値であった。
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カートリッジ。

手直しが入っているがチップ共に問題は無いだろう。

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コブラ、なかなかカワイイ顔をしている(笑)
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オートの落とす部分はコブラの腹を意識しているのか中央がシマシマ(笑)

面白いデザインである。

 

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センタースピンドルはグルリと回せる事を発見。

マニュアルで使う時か、レコード取り出し時には便利そうである。

 

キャビネットに戻して、良し悪し確認する事にする。