A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

RCA R-93

珍しい修理依頼品。

RCA Victorが電氣蓄音器の最初機の頃にエディカレントモーターなるダイレクトドライブ方式を発売しているが、それから暫くして、1937年の廉価品にこれを用いたセットを作っていたらしい。

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サイズは究極に小さく、プラッタは5インチ程のベッチン張り。

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簡素なRCA  Victorの表記。

何処かのOEM品の様にも思える。
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プラッタ裏にはコアが直付。

重いのは回り続ける様に、フライホイールを兼ねていると見受けられる。
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裏。鋳物のフレームはバネとゴムで筐体と絶縁してある。

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問題のP.Uは全く針先が動かない。

ダンパーのゴムが固まっている。
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構造は Victorコブラと同じで、少し小さくコンパクトに仕上がっている。
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こちらはコイルが細く多量に巻いてあり、1300ω程あった。

発電信号は割と大きいから、直接ラヂオに繋いで、6SQ7で受けるのには丁度良くなっている。

これ以前のものは、巻き数が少なく、昇圧トランスが必要であるから、それは改善してコストを切ったと考えられる。
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片側を針金で半ば強制的に、ギャップの中央に保つ様式。RCA  Victorで良く見るデザインである。

この針金が信号の損失になっているのではないかと思うが、これがイコライザも兼ねていたら、それはそれで凄い事をやっている事になるが、実際はどうなのか…
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カチカチになったダンパーは、どんな混ぜ物をしているのか分からないが、飴色をしていて、所謂、輪ゴムの様な雰囲気。

ただ生ゴム(?)ではないとは思う。

同じ物は無いから作る。

無ければ作るしかない。

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交換し、調整組み立て。

ギャップ中央に寄るから良しとする。
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電燈線が危険であるから交換し、通電してみる。

内部のコイルが巻いてある側のコアは僅か動く様になっていて、スタート時にドンと動いて自動スタートすると思っていたが、手回しスタートだった。

逆向きに回すと、逆転で維持して回り続けた。

不思議で簡素な構造で78rpmが上手い塩梅に維持する、ガバナーも何も無い。

大変に不可思議であるが、凄いバランスで回っているのだと思われる。

コイル側が揺ら揺らとして回転を一定に保っているのだと思われる。

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12インチは乗っかるが、初っ端部分に針を置いた瞬間に止まってしまった。

どうやら10インチがギリギリのトルクらしい。

少しでも重くなると、停止してしまう。

聞いた印象は、RCA  Victorらしい独特の音で、針金の音が出ている様な、マグネチックの様な音である。

Columbiaの頭が半回転する四角いP.Uは、その様な針金はなく、ダンパーだけで振動子を支える方式で、これは非常にクセの少ないスッキリしていて、尚且つ太い低域が出る。

しっかりと支えがあると、低域のスイングの抑制もされて引いてしまうのであろう。

代わりにフニャフニャでは、低域も含めて、豊かに振動して良いのであるが、強力な磁石のギャップ内の中央に、振動子を維持するのは困難になる訳で、振動を阻止せしめる原因になってしまっては意味がない。

これの構造は各社が様々やっているが、結局のところ、GEバリレラは研究を続けた結果だと思う。

バリアブル リラクタンス、マグネチックと呼ばれた類である。

 

 

 

これにて動作共に問題無いから、完成とする