A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

可搬トーキー パワードスピーカー

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机の搬入で上にあったパワードスピーカー。

ジェンセンのA12が入ったセットで、可搬型のトーキーアンプで、移動映画で使われていた事と思う。

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アンプ部は解体されていて、単なるフィールド電源になっていたが、これを復元してほしいという依頼内容。

回路図もないし、付いているソケットとトランスの雰囲気で復元する。

尚OPTも欠品している。
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回路構成を検討、トランスにヒータータップが出ていない事から、ロクタルの50A5と7F8を2つづつシリースにして使っていたのではないかなと推測。114Vにはなる。

5U4だけタップが出ている。
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ヒータートランスを乗せても余裕があるシャーシだから、割と手に入り易い7C5と7F8で構成する事にした。
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フィールドは平滑チョークの代わりにしていたのか不明であるが、BはAC420V出て、7C5には高圧過ぎるから、入っていた1.2kの抵抗を入れて、フィールドを直に繋ぐと大凡70mA弱流れる。

7C5ppで70mA流れたら、トータルで140mA程で、計算上260V程になるから、こうやって使っていたであろう。

古い様式のジュークボックスと同じで、ドロップ抵抗の代わりにフィールドで消費させて磁化して、Bレギュレーションも良くしようというやり方。フィールドは少々熱くなるが、壊れる事はない。

フィールドにはハムバッキングも入っているから、平滑は完全でなくても良い様になっている。(打ち消しコイル)

ハムを残して際どい高音をカットにも働く。

フィールドを平滑に使うと、5U4は2秒で立ち上がってくるから、無負荷だと480V以上に上昇しそうである。

コンデンサの高耐圧の物も持ち合わせが少ないから、無負荷運転にならない様にしておくのが理想的。

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入力端子が無いから、コントロールかのソケットをRCA入力にする事にしてアダプタは無いから作った。

試しに7F8の電圧増幅1段でやったが十分鳴る。

ただ箱がオープンであるし、小さいから低域が寂しいが鳴っている。

光学フィルムは低域が多く入っているから、これでも良さそうだが、CDでは寂しい傾向に出るから、低域補正にブーストを1段設けて、少し強調してやると箱が小さくても高い方に負けないかなと。

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古い後面開放型のセットは、1000pfか4700pfが回路の色々の所にブラ下がっていて、ハイカットして、出ない低域を補っている場合があるけれども、それをやるとハイ全体がなだらかに落ちて、具合が悪いから、フォノEQではないけれども、平坦に全体を落とす様にしてやり、低域はストレートにしておけば、必然的に低域がブーストした様になるから、低域が持ち上がった様になる。

過度にやるとピュアではないタイプの現代アンプになる(笑)

ハイを落としてボリュームを上げても同じ事である。

直に繋いでどの位のブースト量か試聴したが、殆ど持ち上がっているという程変化は無かったが、フィールド独特のギャンつく中高域が優しく落ち着いていて、10kc迄は出ていそう。

山だったのが丘になったかな。

入力感度は1Vもあれば十分にフルスイングする。

8Wかその程度であろうが、A12は能率が低く無いだろうから、3Wも入れたら、大分轟くであろう。

ギターアンプにしても市販に負けない音が出そうな気はする。

応答の良い、硬めのフィクスドのコーンらしい、所謂ヴィンテージサウンド

割とビックリさせる音が出るから、反射的に振り返る様な、人目を引くユニットには思う。

ライブのスピーチは別部屋にいると誰かお客が来ているのかと思う様な嘘臭くない音がしている。リアリティがあり過ぎるのも少し気持ち悪い感じはする(^^;;

呼んだ覚えもないお客が来て一人で喋ってたら、それはそれで怖いよね(笑)

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昔のセットによくある、-Bのタップを出たすぐにシャーシアースしてしまうやり方。

これをやると幾ら平滑を頑張ってもハムもバズも取れない。

現に、ジィー、ビィー、ブーンと派手に混ざって鳴っていて、アースを外してやるだけで静かになった。

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トランスから出た線は平滑1段目のCへ入り、次のCへ入り、そこをアースした方が余程静かになる。

結局の所、アースする場所が近いか遠いかだけの違いっちゃそれだけなのだけども、こういう所がシビアに現れる。

これは音質がとか、艶があるとか、良い音だとか、そういった人によって意見が割れるレベルの話ではなく、10人に聞かせて有無がハッキリする部分であり、カルトな事では無いからキッチリした方が良い。

 

お客さんの中にも、”良い音にしてくれ“と依頼があるが、何をもって良い音なのか不明だから、出来ませんと断る事にしている。

歪みを無くしたいのか、HiFiにしたいのか、もっと大きい音を出せる様にするのが良い音なのか、低域をもっと出したいのか全く分からないから、曖昧な事を受けると後が悪い。

自分が思う良い音とお客の思う良い音が違うと仕事が増える。

鳴るようにしてほしい。という依頼の方が大変やり易い。

ステーキでも焼き方がレアがなんなのか、ミディアムが何なのか分からないならば、美味しく焼いて下さいとバカボンのパパが言っていたけれど、間違いないと思う(笑)

少なくともミレニアムよりは美味しいだろうなw

 

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たまにある、Cの缶が直にシャーシ固定で、自動的にアースされるタイプの場合は、トランスタップをCに繋いでもハムが出る事があるから、抵抗を入れて少しの電位差を出してやるとハムが止む場合がある。

ヒーターは、CTがあれば、シャーシアースか、それでも止まらない場合は終段のカソードに繋ぐと、プラスバイアスが印加されて静かになる。

これは平滑に問題がなく、尚且つ球が特殊乃至、特別な使い方を除く、最終的に調整でどうにかなる場合に限る。

 

ひとまず箱へ詰めて試聴してみる事にする。

気に入らなければ改修する