A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

ゲッタと真空引きの良さ

問い合わせがあったのでゲッタについて少し。

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ゲッターは黒々全体に入っていないと良くない物だと思っておられる方が多いが、それはそうとも言えない。

上記の球は200本バルクの数本のうちを出してみた物であるが、ゲッタは、ゲッタリングの真上にリングと同じ程度にしか入っていないのもあれば、リングよりか少し大きく飛んでいる物もある。

さらに色は黒っぽくなっている箇所があったりと、まちまち。
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一見すると、空気が入り始めてダメになる類の球に思う方が多いであろうが、空気が混入している物は、元あったゲッタの部分が虹色に光るか、白濁して濁る。

これはリング以上に大きく広がらなかったとも言える状態で、不良では無い。

もっと言ってしまうと、これは逆に非常に良品で、高真空であり、ゲッタの手助けを必要としないレベルに真空引きが上手く行っている事を示している。

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他の物もあまり大きくゲッタが広がっていないが、これも真空引き工程の質が良かった部類。

ボヤーっとゲッタがグラデーションで大きく入っている物ほど、真空引き工程が悪く、ゲッタの手助けがあって、より高真空になっているという具合である。

であるから、そういうゲッタが全体にボヤッと入っている球は無ゲッタで作った場合に、すぐに不良になる。

プレート、金属類は熱されるとガスが出る。

このガスの吸着もゲッタが行うが、真空引きが良い程ガスの吸着生も良い。

従って、これはエミッション以外のガスによる不良の寿命に左右する。

WEの211Dのゲッタも綺麗に飛んでいるから、元々高真空度で、さらにガス吸着と真空度を上げるためにマグネシウムゲッタを飛ばしているが、それよりか昔の211Aはノンゲッタであるから、真空度の確保は良かったことになる。
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サクラ印のこの球もゲッタは袴の下部分に向けて入っているが、それ程飛んでいない。
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真空引きが悪かった場合は、もう少し上まで入るか、横半分程迄入るであろう。
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管が大きくなると排気圧力も強く無いとならない為にゲッタは大きく入るが、飛び散らずに入っているところを見ると真空引きが大きい割に良いことがわかる。
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ゲッターは筒を半開きにした物であるが、真空引きがそもそも悪い為にゲッタは多く入っている。

真空引きの良かった球が、使用に伴い、真空度が落ちる、或いは電子の当たり続けたガラス面に浮遊したゲッタが衝突し、ゲッタが増えることがある。

これはフィラメントの見える面に起きる現象。

電子焼けは管が薄黒くなっている現象であるが、ゲッタ沈着は”移動”が正しい。
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”ゲッタ”の役割をプレートに託すタイプもある。ゲッタは飛んでいない。

これはジルコニウムを塗布したプレートで、プレートは一般的に赤熱させて使用してはならないのが普通であるが、これは赤熱させて使用しなければならない球である。

赤熱させる意味は、ジルコニウムを活性化させる為に焼いて使うのである。

焼いて使わなかった場合、寿命は焼いて使った時よりも劣る。これはガス吸着が進まなくなるのが原因であろう。焼いて真空度が増すとは思い難いが真相は分からない。

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高真空でゲッタが飛び難かった球に空気が入ると、虹色になる。

空気の入ってしまっているので不良品。廃棄である。

ゲッタが多く入っている場合、白く急激に酸化するのが一般的である。