A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

通電数十秒後にヒューズが飛ぶ。

お客さんの急遽の持ち込み品。

MJに載ってた回路で組んでみたが、上手く行かずヒューズが飛ぶと言う。部品は新品で揃えたとの事である。

大凡、新規で揃えた部品で不具合が出るというのは面白い症状である。

中古を使い回して不具合が出るというのは良くあるが。

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整流管5AR4だけを挿して通電しても数十秒後にヒューズ溶断。

回路に誤りはなく、問題は見受けられない。

初っ端に通電した時にコンデンサ辺りから“シュー”と音がしてヒューズが飛んだらしい。

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B平滑で何となし怪しい平滑の100μF。

これを外すとヒューズは切れなくなった。

代わりに同じ筐体サイズで容量の小さい22+22μFをパラって入れて、再度通電、問題なくヒューズは切れなくなった。

 

これで解決であろうと、音出し試験をすると音が出てから数十秒後かに、再度ヒューズが溶断したのである。まだ原因が潜んでいるらしい。

再度ヒューズを交換し、一気に高圧が掛からぬ様にon-offを繰り返してスイッチを入れてやると、途中で整流管が見事にフラッシュした。結構な閃光である。

どうやら5AR4が絶縁不良になりかけていたと考えられる。

チェッカー試験では絶縁OKであったが、片ユニットのエミッションがReplace側に落ちていたが、音は出るレベルと判断したが、高圧で問題があったか。

5AR4を交換してやると今度は問題無く動作を始め、短期ではあるがヒューズは飛ばなくなった。

 

完了....と、これで終わるのであればただの修理をしたっていうだけの話で、面白くない。

何故その様な現象が、新品の部品を合わせて起きたか、原因を考える。

 

1に5AR4が元々具合が悪かった可能性は考えられるが、チューブチェッカーにてショート試験共に問題無かった。高圧に対して耐えられなくなっていた可能性(?)

2に、コンデンサ周囲からシューと音がしたという点。放置期間が長く電流が流れる状態になっていて、大電流で電解液が熱され蒸発が進み、シューと音がしたか?

 

ps:0タップと70Vタップを誤っていたとの事。後の章で考える。

 

3に、平滑2段目に100μFは過度か。1段目は30μF程度、chが入って100μFであるが、チョークはDCRが低いから、殆ど無いに近いか。カソードの逆耐圧が破壊し、フラッシュに至ったか。

 

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5AR4の特性を見てみる。

5U4の代わりになるとあるが、小型に仕上がっていて且つカソードとプレートが近いから、5U4よりも耐久(タフさ)の面では、やや劣りの可能性も考えられる。

5U4でも平滑1段目が大きいのが入っていて、久しぶりの通電であると、プレート内部でチリチリと火花が出るなんて機器もある。

ラッシュカレント防止に小さくて良いから抵抗は入れた方が整流管の寿命が延びる可能性が高い。

無理に電流を多く取っていたり、放熱が上手くない場合は、また寿命が左右されるから、一概に長く使えるとは言い難い所であるから、可能性としている。
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チョーク入力の場合の特性は、Zpインピーダンスは0Ωで良いとされているが、chを出た後は4-6μF指定になっている。

これは電解よりか、もっと低いインピーダンスのフィルムかオイル系の事を示しているかも知れない。

特にchがマイナス側へ入っているから、高圧で使う時の様な繋ぎに見受けられる。

シャーシ対chの絶縁の面である。

尚プラスへ入れても、マイナスへ入れても、ループが成り立つ中にあれば、何処に配置しても良い。(シャーシ配置の意味では無い)
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コンデンサ入力では、Zpが300V時には50ΩX2になっていて、60μF指定である。

従って、プレートへ入れるのであれば、50Ωが2つ、マイナス側へ入れて、Cとを離してやれば、50Ω1つで良い。カソードに50Ω1つでも良い。

シャーシアースポイントが悪く、ノイズに悩まされるのであれば、マイナス側へ電位差付けてやるとノイズ成分が消える場合があるから、マイナス側へ50Ω入れるのが良さそうだ。

400V時には100Ωとあるが、普通一般の回路設計はデータシートの指示を無視した物は多い。

マチュア品であれば、これは尚更従った方が良いであろうが、準じていない物が大多数か。

 

 

ps:0タップと70Vタップを誤って配線したという点について考える。

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70Vタップを基準とすると、√2*.8で考えると、整流されて半サイクルは305V、もう半サイクルは463Vで、30μFにchを挟んで100μFであるから、おそらくもっと上がる。

.85計算であると、半サイクル492Vになるから、無負荷で通電すると、もっと充電するから、500Vを超える。

交換したブロックケミコンは500V耐圧の物であったが、普通は耐圧マージン取って20%だから、600V入っても壊れないが、恐らくマージン無しの表記の可能性がある。

22+22μFの交換した物と大きさと同じ筐体サイズで100μFあるのは、ある意味不自然である。

容量が小さく、小さい、容量が大きく、大きいのならば分かるが、容量も耐圧も大きく、小さい物と同じサイズという事は、何某かが簡略化されているのではあるまいか。

例えば3畳間と6畳間が同じな訳がない。天井が3畳間の方が高くて、6畳間と体積が同じというのであれば、やはり大きさは上へ大きくなる。

どちらにしても、耐圧マージンがないのはよろしくないが、昨今はそういう物が普通に売られているのも現実。

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但し、半世紀も昔の物よりか、現代の物はかなり小型に作れる様になっているのは間違えないが、あまりにも大きさが違い過ぎるのは不自然と思われた方が良い。

 

これより、誤った配線により高圧が印加され、コンデンサが電流が流れる様になって、化学変化を加速させ、それに耐えられず整流管のカソード絶縁が壊れた事でヒューズが飛ぶ様になった、と考えるのが妥当であろうか。

コンデンサが先で整流管が後に巻き添えに思うが、このタイプは経験が少ないから、不明瞭である。要研究課題である。