A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

GTからMTまで。球転がし専用アンプ / VRの配置

出来るだけ球転がしをしたいというオーダーを貰ったから、それに応えるべく考えた。

球転がしが主体であるから、全体に半々程度の動作で考える。

使用のスピーカーが、最近の新しい某社の物との事で、かなり制動力が無いと低域が鈍くブーミーになるであろう。

DENONの石アンプとで組み合わせても、低域がボフボフと締まりがない様で、トンコンで絞って使っているとの事である。

オーディオ屋からは、マッキンのアンプと合わせないと曇った音がするのではないかと指摘されたとの事である。

然し乍ら、ハイのギャンギャンしているのも好みでないそうだから、DENONとの組み合わせは満足行っている様だ。

さて、それにしてもコスト安で球でやろうというのは、大分難しい、いや、無理に等しいが、赤字覚悟でやってみる。

以前に安い球アンプを通販で買ってみたそうだが、ボヤけていて気に入らなかったとも言っていた。

多分それが普通なのかも知れない価格帯ではあったが。

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GTは6F6、6V6、6L6

MTは6AR5、6AQ5、6M-P20

整流は5U4ベースで、5G-K18、5T4、5Z3P、5R4、5Y3が転がせる。

これらをプッシュプルで押し、多く掛けたNFBで制動力を得ようという設計で行く。

6F6基準にすれば、6V6も6L6も軽い動作で使える。

逆は壊す原因になるし、フルスイングさせられる程にコストは掛けられないから都合良く、中間程の動作で良いだろう。

トランスはケチっても本末転倒だから、程々の余裕を持って巻いてもらった。

割と大きい。某国の安いアンプに付いている物よりか、一回りか大きいコアである。

OPTもシングルで巻くよりか、同じ物であればプッシュプルの方が小さいコアで済むが、これも余裕を持って大きくした。

コストをトランスに割いてしまったからシャーシも箱も手作りする。

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スピーカーの木端を再利用して加工し枠にした。

スピーカー同様、フレンチポリッシュで仕上げる。<コスト割いた割には高級だ(笑)
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加工

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組み立て
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纏めながら組み立て
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試験する。
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初段は毎度ながら安定の5670で、NFを掛ける事も考えて、初段はゲイン高くハイimpで、次段でp-k分割で押しが良い様に電流は多めに流してなるべく低いimpで送り出す。

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(今良く見たら25c/sがマイナスへ行ってしまっているが、校正ボタンの接触不良である)

ハイ上がりで1kc付近から上がり始めて20kcで10dB程出ている。

アメリカンな明るく少しハッタリの効いた感じか。

NFを多くする。

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大凡5dB程に落ち着いた。

p-p間にハイカットを挟んでやろうかと思ったが、やってみると上手くなく曇るからこれで良しとした。

高域でインピーダンスが上がり負荷として薄くなるのを防ぐ為に固定CR負荷は入れてある。

しかしこれがNFの特性に変化をもたらせる割合は非常に小さく無視できる。

NFの方がアース対の抵抗値は大きい。

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6AR5で試験。

低域がまぁ豊かなこと(笑)

NFを掛けているからか、石アンプの様な具合。

引き締まりは良い。

高域もモニタの様に変な音が確認できる。

それで言うと大分欧州VT-52は柔らかい音がしていると感じてしまう。

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片方6V6、もう片方6AR5でも試験。

6V6の方がパワフルか。ドッシリしている感がある様に思うが、ゲイン違いかな。ステレオソースであるし(^^;;

好み云々はエンドユーザーにお任せする事にする。多くコメントして先入観を持たせても悪いし(^ω^;;)

尚、入力感度がNFが多いからあまり良くないが、2V程あればフルスイングするであろう。

そんな事もあって、音痩せする可能性のある入力ATTは省いた。

どっちにしても全開で使えば音痩せはしないが、それならば不安定要素は無い方がスッキリするから付けていない。

音痩せしないスイッチ式ならばトンコンは無くても良いであろうが、カーボンであれば痩せた分をトンコンで補った方が本当は良いだろう。まぁ考え次第であるが。

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都合上、薄い枠でコンパクトに収めたが、もっと下駄は厚い方がカッコイイなと今更。

ハムノイズはpp故に打ち消しも効いて感じないが、石アンプからすれば多い方になるのは致し方ない。

低コストながら投資が多く利益度返し、単なるお楽しみになったが、15万、20万そこそこのアンプと対等かそこそこの質はあるのではないかと推測。

良い物とされる物を乗せ込んだ素人手製とは差別出来る事を願う(笑)

なにより気に入ってもらえたならば、これ幸いである。

 

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ボリューム(以後VR表記)の配置と歪みとノイズについて考える。

 

ps:オクの委託品、説明文等に関しては委託主に委ねている為、私自身の言葉ではないです。悪しからず。

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先日のコンラッドジョンソン、C.Jのアンプは上記の通りのVR配置である。

フォノはフルゲインで入る事はないが、AUX以降はVRを出た後3段がフルゲインで動作している。

その為に3段の真空管の持つ固有ノイズ(電子ノイズ)が1段から出て、それが2段で増幅されているのと同じである。

更に12AX7であるから、ノイズは多いのは言うまで無い。

従って、後段で受けるアンプのVRを絞って、なるべくVRが最大の位置で都合の良い程に設定しておかないとS/Nが悪くなる設計と言える。

然し乍ら、S/Nは悪いが、歪みの点では良質と言える。

 

標準的な設計で行くと、上記の下である。

VRが終段に近く、球のノイズは1段だけで済むから、相当なゲインの高いパワーアンプを使わない限りはS/Nは良好である。

然し乍ら、今度は逆に大きい入力が入った時に、前の段でフルゲインで受けているが故に、歪み率は悪化する。

歪みが酷い場合は、ソース側のVRを絞って、過大入力を避ける必要が出てくる。

 

調整を前でやるのか、後ろでやるのかの違いとも言えるが、標準設計の場合でも、VRを上げれば、結局は全体ゲインは上がるから、固有ノイズは増加する事になる。f:id:A2laboratory:20211007093656j:image

一時期の無線と實驗で記事になっていた“黄金の耳アンプ”から簡易抜粋。

入力手前と終段に同期したVRが挿入されている。

これにより、入力の大小は構わず、どれでも受けられる事になる。低歪みで動作ができる。

また、終段に付けたVRによって中3段のノイズは絞られる。S/Nの改善になっている。