100c/s以下の低域-5dBを補う方法として、CRで入力信号のハイを落として低域を通過させる、所謂ローパスフィルターを組んでも出来るが、これはウネリを生じさせるか、ハイがなだらかに落ちる様な気はする。
コントロール側で超低域を+5dB持ち上げた方がフラットには近付きそうだが、ディスクを聞いた場合は、超低域はウーファーを揺らすだけで、良い意味が無いから、カットする場合があり、そんな部分を持ち上げる必要も無いと言えばそんな感じではあるが、なんでも実験はしてみたいもので。
一番綺麗にフラットを得る方法として、スピーカー端子の出力を負帰還で初段へ戻すNFBがある。
NFBは戻す量が多ければ、それだけ深くゲインが落ち込み、出た頭を叩き潰してフラットになる。
従って、その球の持ち味を潰して、均一に揃えようというものであるが、スピーカーのコーン紙がオーバーシュートしたとすると、逆起電力が発生して、それが信号としてフィードバックされる事にもなる。
フィードバックされたオーバーシュートの信号は、瞬間的にスピーカー端子へ現れ、これが逆相で入って、オーバーシュートを引き寄せ阻止する。(完全ではないが)
制動性の良さはここから来る。
スピーカーは昔ながらの機敏なコーン紙自体に制動性がある様なタイプであれば、NFBは有っても無くても、そう大きく変化は起こさないでフラットが得られるであろうが、昨今のブホブホしたスピーカーの場合は、逆にアンプ側に高い制動性が無いと、オーバーシュートでブホブホとしてしまいオーバーシュートが多くなる。
だから、かなり多量のdBを戻して、ブホつくのを止めたがるのは、昨今の回路であるが、NFB自体は戦前からやっていた事であるし、その深さが違うだけと言って良さそうだ。(特性を改善する為ではない場合のNFもある)
持ち味を潰すのだから、多くを戻せば、言ってしまえば、どの球でも、出力と歪みの違いだけで、大差なくなる。
やれ2A3が良い、6BM8が良い、KT88が良いと言っても、結局NFBが多く掛かっていれば、どちらの持ち味も右へ倣えで、球転がしをしても変わらない筈である。
変化を生じさせない為の回路と言ったら、そういう回路である。
球転がしをしたい人は、NFBは外すべきである。
余程ギターアンプの音色が変わるのは、NFBが無いからであり、変化が楽しめる。
もっと言うと、毎度毎度、通電の度に違う音がする筈で、動作開始30分は変化が特に大きい。
ギターアンプに入っているスピーカーは案外昔気質で、フィクスドの応答の良いのが入っていたりして、ブホつくのは石で構成しているのが多い様だ。
今回実験したいのは、低域を持ち上げたいのであるから、低域のフィードバックはさせずに高域だけを-5dB程戻した時にフラットが得られるのかどうかである。
よって、回路は低域をカットし、ハイパスを構成する。
低域にはフィードバックが起きないが、高域にはフィードバックがされ、浅いフィードバックでフラットを得られるか。という実験である。
実際には低域を持ち上げたのではなく、ハイを削るのである。
高域は綺麗に伸びているから、逆にやり易いのではなかろうかと考えて。
フィルターは計算で15k+0.1μで大凡100c/sカットになる。
実際には22kをパラって12kで実験したから、100c/sよりも下になるが、さてどうかな。
フィードバックさせる量はVRを繋いで平均を探して、8kが良かった。
抵抗負荷試験。かなり綺麗に揃えられる事が分かった。5dB弱戻っているはずである。
スピーカー負荷試験。
凹凸が少なくなっている。
↓NFB無しのスピーカー負荷/抵抗負荷特性。
試聴してみたが、低域は前よりも出ている。
だがしかし、中高域に有ったピークが凄く平坦に。
明るい印象は薄れて、引っ込んだ。
バッと飛び出す事も薄れて、全員右へ倣え。
人形劇が紙芝居になってしまった感があり、極々一般的な、市販品に一段と近くなった様な雰囲気がある。
ただ、均一に揃って綺麗と言っちゃ綺麗。現実味のない驚かない音。再生らしい。
音が大きいだけで、反射的にビクリと来ない。
皿の割れた時の様なオッと驚くピークは薄れる。
とにかく、この球じゃ無くても良いのではないかと思う様なツマラン感じになるが、これが世間では所謂普通なのだろう。
TannoyのEQをどうのこうの、やらなくても馴染みのある様な気がするから、言ってしまえば807ppと大差なくなるという事だろう。
まぁまぁ送信管であるし、類と言ったら同族である。
最ももっと俊敏な鋭い音がするホーンを使う劇場では、NFBが掛かっていた方が音量をも考えて、耳には良さそうだ。
自然の音よりもアンプされている場合に、それはうるさく感じそうである。
だからあえて自然以上のピークは潰しておいた方が、音量がある時には、自然的かも知れない。
考え方次第ではあるが。