A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

応答速度

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WE回路考察。

どのアンプもGnd共通で考えるのが主流になっているが、それは高周波回路、ラジオの構成で必要になる繋ぎ方の様に見えてきた。

高周波の場合は短距離でシャーシアースする組み方で、低周波はアース線を張って、一点アースをするのが一般的である。

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WE式構成の信号ループを考えると、入力の赤線、出力の緑線で大変に短距離で完結する事が分かる。

更に、この場合は入力トランスを使用しているが、Rgが入っているから非常に軽々グリッドが0Vに保持されている事になる。

例えば100kの固定抵抗にしたとしても、Rgを400k入れたとすれば、グリッドからすると500kのリークと見なせる。

よってフワリとしたスイングが可能になり、伸び伸びした受けになる。

但し、この回路の問題点はCの容量で周波数特性が狭くなる可能性があるという事である。特に低域が出難くなる。

というのも、入力と出力で、帰還の応答速度は大変に向上するが、出力の逆相が負帰還として入ってくる為に、低域の減衰が問題視される。

従って、このプレート側のCの容量は、大きく出来ないという事であるが、低域が出易い球の場合は容量を大きくする事である程度の制動は期待できるとも言えそうである。

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これを昨今の回路と比較してみる。f:id:A2laboratory:20210512115437j:image

入力はグリッドに入り、カソードのデカップリングを通って帰還する。(赤線)

カソード抵抗も信号が通過するが、通り易いコンデンサがこの場合は優先的に通っていると考えられる。

緑線は出力の輪を表す。

プレートから出た信号はB+上にあるデカップリング(簡略化してしまえば平滑C)を通ってアースを通り、カソードのデカップリングを通って帰還する。

3段増幅以上でモーターボーディング発振が起き易いのは、B+の正帰還が問題となるから、こう考えると、ナルホドと理解が深まる。

青線は直流の流れを表し、デカップリングにはDCは流れないからカソード抵抗を通る。

入り口、出口、更に直流も一緒くたんにしてしまったのが近年の回路構成である。

然し乍ら、高周波ではこの様な構成でないと上手く行かないのは存じの通りである。(カソード抵抗が無い乃至ピーキングコイルを付けている場合もある)

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WE回路の直流回路の流れを見ると上記の通りである。

電源とで輪を成すわけであるが、信号とは分離した形の輪を成している。

DCと信号が一緒くたんに混ざらないというのが挙げられる。

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然し乍ら、この繋ぎ方でも3段以上が同一上の電源で動かそうとすれば、モーターボーディングを起こすから、電源も個々が安定する様に絶縁した回路構成にしなくてはならない。

絶縁方法としてWEは50Hのチョークと20k程の抵抗を入れて同一電源でありながら、完全に他段とは絶縁をした構成となっていた。

 

 

こういった回路構成に触れて、信号の輪、直流の輪という考え方を詳しく書いた本や記事は、私は知らない。

WEの技術録も300Bが出た時には継承されていないのではないかと言っていた。(ハヤシ先生談)

自分は実験とで独学であるから、誤っている可能性も十分あるが、使っている球が云々言う前に回路構成がどうなっているのか、存じの上で製作している方は何か少ない様にも思える。

回路が変われば、部品でも、何をどう使うと良いのか、悪いのか、それぞれ分かるかと思われる。

球を変えると音が変わるのは、真空管の内部抵抗rpの違いもあるだろうし、それに伴い安定度の悪い増幅器であれば、rpの差で根本的な動作が変わって音が激変する事であろう。

何が良いかは手にした人其々の思う考えで良いが、それが全てではないという点も、一旦見直してみては如何だろうかと、私は問いたい。