先日、“NFBは掛かっていない”と表記したが、回路を追って確認、音出ししながらも確認し、NFBが掛かっている事が分かったので訂正す。申し訳ない。
本機には全段、カソードデカップリングは使用されておらず、カソードの抵抗によって少量の負帰還、局部帰還が行われている設計である。
初段、EF12は、カソードを共通としたミラー型が採用され、これにより自動でppとなる。
入力はバランスには対応しておらず、キャノンが出ているが、アンバランス受けのトランスである。
業務用と言っても、おそらくトーキー用のアンプであろうかと推測。
よって、映画館向けのセットと思う。
終段EL12では小容量のコンデンサをP-G、G-Kに入れる事で高周波発振を止めて、安定化している可能性があると共に、ハイフィルターにもなっていて、これも高周波に於ける負帰還と見做せる。
1.05:1で構成されたNFB巻線は、NFBとしては高インピーダンスで、且つグリッドへ戻している手前のRe、抵抗は100kとかなり大きな物である。
1k/100kの分圧になっているのであるが、普通一般のNFBでは、大凡16ωのスピーカー端子から、初段のカソードへ戻し、制動的な部分でも働きがあるとされているが、この場合、インピーダンスが高く、それに対する分圧によるブリーダーも高抵抗であるから、NFが掛かっていると言っても、スピーカー側の制動迄も含めたものではなく、増幅器自体の特性改善の為の物かと思われる。
物は試しに、NF線を外すと案の定、音量はかなり大きくなるが、カンカンした所謂ラジオの音にはならず、ラウドネスをONにした様な具合に聞こえる。嫌な音はしない。
バランスは元から良いものと思われるし、恐らくスピーカー側に制動がある旧式の物を使う前提の設計に思われる。
時代からしても、ボフボフしたユニットは無かったであろう。
各電圧、漏れを見たが、部品の壊れた物はなく、オリジナルの状態で問題ない、強靭な部品で組み立っていた。
流石としか言いようが無いし、ケミカルを使っていないという点でも、優れた性能であると言えそうだ。
其の中でも、シルバーマイカと言われていたと思う、このカップリングは、ソビエトが模したオリジナルなのだろう。
KSFとあるもので、シーメンス(?)なのかな。初めて見る。
ソビエトのは青いガラスで、デザインはかなり似ている。いや、同じである。
同じくソビエトのもやはり模しただけあって、これまた強靭な物で壊れ難い。
幾度か使った事がある。今はレアーになったか、今は高価であるが、その昔は5個入りかのケースで幾らもしなかったから結構使っていたものだ。
ノイズレベルはオシロで確認するとホワイトが大多数で、ハムは観測出来なかったが、50c/sで立ち上がりがあるから、3mV程はハムが残っている事になる。
正規状態で計測。
素晴らしく綺麗に揃っている。
NF線を外すと、大凡15dB上がって、ハイ下がりである事が確認出来た。
これはp-g、g-kに入っている小容量のコンデンサのフィルターの効果なのか、はたまた入力トランスの50pが作用しているのか、外してやってみないと分からないが、どちらにしても低域に寄っているから、やはりカンカンしたラジオらしい音はしない特性なのであろう。
逆にこの方が、ギャンつく古いユニットには合いそうにも思うが、どんなネットワークがユニット側に入っていたのか計り知れない。
この回路を見ていると、そう言えばと2C26、815ppを作った時を思い出して、あれはカレントミラーが完全になる様に、6D6かのペントードを定電流回路として動作をさせてppを得たのを作っていた。
原理は後からトランジトロン回路と知ったが、テレフンケンは、抵抗でミラー効果を得るのに、gnd対kは45Vの開きがある。
其の内、バイアスは2Vを得る仕組みである。
デカップリングは無いから、信号損失も大きいが、ぞれをカバーするのに1:15の入力トランスを用いた可能性も考えられる。
案外鈍感な、古風なパワーアンプではあるが、バランスの良い作りで、+3dBも入れるとフルスイングする様な設計らしい。
改めて壊れる要素の少ない、極めて単純で、それでもって良く考えられた設計であると感じられる。
本機をサンプルに私も1台でも欲しい所であるが、市場に出回っていない所を見ると、良い物だと分かっている人の手に収まっていて、手放さないのであろう。
より良い物に多く、より早い段階で触っている方が、初っ端に民生機を触って培うよりも至らない点に気付くのは早くなるそうである。
目利きを良くするのに、混ぜて試すと、良い物を選び出す早さが異なるのだとか。
まぁまぁ、EL12の手持ちはないが、合わせるならば807が程々楽な動作かな。
似た様に細長い板シャーシでコピーしてみようか。