AIKOSHA (愛工舎)のカレンダー附き30日巻のオーバーホール依頼を受けました。
ゼンマイはフルに巻き上がっていましたが、残量表示器は緑のラインを越えて、赤に迄回ってしまっている様。
正時に近付くと止まるとの事で、1ヶ月の連続動作せず。
開腹すると機械はかなり疲れている様子。
ホゾの磨耗が激しく、OH歴は1度も無いかも知れない。
しかしながら、給油は怠ってはいなかった様で、びっしょりしている。
しかしまぁ、これだけ金属屑が見えるほど出てしまっていると、かなり厄介な部類と思われ。
”3年でOHした方が良い”という時計屋は普通にあるが、まぁ5年10年はOH出さなくたって、大丈夫っちゃ、大丈夫。
しかし、使用環境においては、確かに3年でOHしないと機械に悪影響という場合もある事は確かで、使用環境や状態で、OHの間隔は変化するものと考える。
ただ、動かなくなってからだと、かなりガタが来ている事も間違えないし、手の打ち様がなくなる場合もあるから、これまた判断が難しい所になる。
ゼンマイ残量表示器の歯車外れ防止の板は、どうやら昔の文字盤の再利用の様で、”7”と思わし文字が見える。
クリームの色合い地塗りであるし、かなり分厚いアルミ板だから、昭和30年辺りのと推測。
ペコペコしない、1枚板の一発プレス文字盤であろう。
1回で洗い油がこの色である。
かなり沈殿物も多い。
ドイツと同じ製法で、プレス入れの歯車。
チェックをして組み立てる。
香箱入りの機械に似た構造であるが、本剣がプレス圧入の様で抜けず、組み難い。
精工舎の中期の機械も本剣にバイアスが掛かる様式の構造をしていたが、ピンで本剣は抜ける構造(ドイツと同じ)で、やり易いのだが、それも配慮なし、コスト削減という事だろうか。
ゼンマイには、今回からウレア系のグリースに変更。
高価ではあるが、酸化し難いとの事。
ホゾには適量給油を施す。
機械は色々と後から継ぎ足している感があり、金型の使い回しが見受けられる。
ゼンマイの広がり防止のガイドは、カレンダーに触るからなのか、広がり易い様になのか、ピンが入っていて、外側のゼンマイを外向きに広げている。
もしかすると、ゼンマイがほどけて来ると、左右のどちらかに、寄せ集まる広がり方をするから、それを中心に保つ様にしているのかも知れない。
その方がトルクの一定性は良いと思われるが、最後の方はやはり偏るであろう。
試験運転。
アンクルの位置調整もしたので、若干進み気味に歩度が出ているが、調整範囲は広いから問題ない。
おそらく、このデザインからすると、昭和40-45年辺りの品物ではないかと推測。
文字盤はペラ板の1枚もので、背板があてがってある。
戸枠は、戦後すぐの様な、白い塗装のみで、金属フレームは無い。
運搬時のボンボン止め金具も元から無し。
水晶時計がまだ高価で、安価な機械式が出回っていた後期の品と思われ。
OH Price ¥8k-
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