A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

Decca Mark V. 逆相に

ヴァーブのレーベル、we get requestsを聞いた時だったのだが、居場所によって、低域が増減する?

おかしい、位相が反転している様だと気付き、真相を確かめるべく、オシロを。

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完全に反転していた。

カートリッジはDecca Mark V

前から、変わった音がするカートリッジだなぁとは思っていたが、まさか反転しているとは思ってもみなかった。

押し出し方、押し戻す方とで、低域が相殺して、部屋の隅の方や、天井の方はドンドコ鳴っているが、真向かいに位置すると、低域が引っ込んでしまう。

 

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何がどうなっているのか分からないので、テストレコードを再生して確かめる。

すると、正相時に、出力半分、逆相時に、出力最大になる事が分かった。

テレコのヘッドじゃないけど、どうやらピックアップのアジマスが90°ズレていると考えられる。
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バラしてみると、もう既に手付け済みだった様。

傷の感じや配線の感じが凄いことになっていたから、整えてやった。

見える範囲にネジは6本ある。

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構造を良く良く見て分かった事は、ピックアップコイルは薄い樹脂の板の上へ乗せてあって、これが矢印のネジにて、傾き、高さが調整出来る。

ピックアップコイルは3つあり、見えている2つの下に、固定のモノーラル用のコイルが入っている(裏から見える)

テレコのヘッドで言う、アジマスとヘイト、アオリが一体になった感じかな。

 

ネジを締め込んで行くと、コイルが上昇し、カンチレバーとのクリアランスが増えて感度が落ちる。

逆に緩めて行くと、コイルとカンチレバーとのクリアランスが狭くなり、レコードに接して、指圧が掛かった時に干渉し、ビビりの原因になる。近付けば感度は良くなる。

コイル自体の支え部分も、カンチレバーの様な状態であるから、干渉しているかどうかは針を落としてコイル部分が動くか動かないかを確かめるか、音がビビっているかどうかで確かめる。

 

角度と位相の問題。

僅か片方のネジを締め込み、コイルが傾く様に調整し位相をチェックし、正相の時に一番感度が良くなる様に調整する。

見た感じフラットの位置で逆相にシフトされていたので、傾けて補正する他ないからだ。

定し、カンチレバーの板金が僅か斜めに曲がっているのではないかと推測。

右側ネジ、左側ネジとで、左右のレベルが一番大きくなり、均等が出て、尚且つ正相でレベルが一番高くなる場所を探る。

シールドはしなくても問題なかったから、カートリッジにマウントして、チェック、外してネジ調整…繰り返し。

もしかすると、シェルの上部を切り落として、カートリッジが見える様な状態にしたものを、工場では使っていた可能性。

そうじゃないと効率が悪い。


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モノーラル盤の時は、右上りに一直線になれば、問題ない。

ステレオ盤の場合も、右上りにモジャモジャしていれば良い。

これが、丸(45°)になっていたり、左上がり(逆相)になっていたら所見ありとなる。

モノーラル盤で、丸まる様に右上りの場合は、これも位相がズレているから要調整。

 

最も、左右でレベルが合わせられないという場合は、フォノアンプ側で、ゲイン調整してやっても良いと考える。

どのカートリッジも左右でピタリと一致しているという事はないと考えられる。

3dB以内には収まっている事と思うが。


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 そんなこんなで、変な音が出る事はなくなりましたとさ。
中古で買う際には、変に触ってあるかもと思った方が良いかも。