A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

放送局向け子時計

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前々から3極1秒式の子時計の制御が上手く出来ないか向き合って来たが、幾度と改良を重ねて、無音且つ高精度な出来栄えとなったので、ここへ記した次第である。

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制御ユニット、Ver.1.1

小型機械式リレーを用いて試験を行ったが、音が1秒毎に鳴っていては、気になってしまうから、リードリレーを用いた。

接点容量は少ないが、接触子はガス入り管に封入してあるから、耐久性は優れているのではないかと考えていた。

音は僅かで、耳を澄ませばガラスに跳ね返り、ピーンと鳴る程度。

だがしかし、耐久性は幾分良くなく、数週間程度の連続運転で接触子が溶着してしまったり、コイルが断線したりと、1つ交換しては、また次と問題が多い。

専ら、出処が不明な叩き売りのリードリレーだったから、業者が弾いた不良品でも不思議ではない。

マイコンは良い精度で、時差はプログラム上から校正してやり調整した。

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Ver.2

ソリッドステート化したら音が無くなるから、試したのだが、上手くいかず失敗。
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Ver.3.0

結局、一番安定な機械リレーに舞い戻り。

トランジスタでリレーを制御。

音の問題は、プチプチに包んで防音としたが、発熱があるから寿命的には良くない。

 

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Ver.3.3

また再度ソリッドステート化を考え、今度はトランジスタの使い方から学んで(少し齧っただけ)動作するまでに漕ぎ着けた。

一番安定な動作をする回路を、ディスクリートではあるが、ワンチップ ユニットにした。
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検査済みユニットを電源とマイコンボードに組み、動作試験。

ダメならダメで、ユニットを外せば前の状態に戻るという事が分かっているから、気が楽である。

ハンダで組み付け、ダメでハンダ吸いしているのは無駄が多いからだ。

結果はリレーと同様でありながら、熱も出ないし音もしない。

良い結果であった。

 

プログラムも変更、±30ms調整出来る様にポテンショメーターを取り付け、その場で微調整が効く様に変更した。

 

 

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子時計サイドは、機械の固着やらで、スムーズな動作が難しくなっていた為、オーバーホールを実施。

3極のコアが1、2、3ステップで徐々に飛び越え運針する。

3ステップ目で1ステップ目のコアが次となる。

1と3ステップの極を逆接にすると逆転する。

放送局では秒針が重要になるので、停止は出来ないので代わりに逆転が出来る様になっていて、秒針を合わせる。

また、給電が途絶えると、秒針の自重により落下する。

これがならない子時計は、機械の分解掃除の手入れを施さないと、ふとした拍子に運針が止まる。


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組み付けた所。
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横から。

時計側はまた別の指針用歯車が入っているから、これも手入れしてやり、僅かな力でスーッと動く様になれば良い。

給油だけでは、やはり分解してハケで屑を洗い落としてやらないと上手くない。

給油をしてやると、その時は何となく動くが、屑が研磨剤代りになって、ホゾが痛むなんて事があると勿体ないから、道具が揃っていないならば、専門へ頼むべきである。
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そんなこの子時計は、1976年製であるが、運針が止まったり動いたりという症状から、局の払い下げで放出された物である。

 

記憶では、某ラジオ局の報道部に同じのが掛かっていた記憶がある。

使用の際は点灯し、不使用の場合が消灯で、消灯中は秒針の赤色だけが目立つ様になっている。

録音ブースやスタジオでは、文字盤が光らない、白色のが掛かっていた。