A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

芝浦マツダ工業株式會社 A-20

見つけてポチッとやっておいたら其の儘買い手になった。

毎度お馴染み、マツダ電気時計である。

芝浦マツダ工業株式會社とあるから、昭和14年辺りの製品である。

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大理石の置き型で、信号機が無い所を見ると、停電補助型だ。

当時の高級型である。
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ダイアルは短針が擦ったのか傷がある。

カビも少ないし、通電するととりあえず動くから、手入れはしていた様だ。

状態は良い。
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線はもう節々が折れて芯線が見えているから寿命である。

こういうのを使っていると、雨の日は少しビリつく(笑)

感電するから真似しない様に(^ω^;;)

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マツダ自体は時計屋ではないから、停電補助の機械は、精工舎のB式使っていたが、これにはロゴが見えない。

手入れはしてある様だが、50年よりも前の話かなぁ。

埃と熱によるカーボンの付着具合が、最近の手入れレベルではない様子。

素材が良かったのか、使い方が良かったのか、環境が良かったのか.......

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よく見ると、シンクロンのバイクロナス機械が入っているではないか。

テンプが独特で、鉄アレイの様なデザインをしている。

この設計は、高耐久性で、試しに手でゼンマイを巻いてみると案の定動き出した。

素晴らしい...

ちなみに精工舎の機械は、スリップ機構を採用しているために、摩耗して大抵動かない。

代わりにシンクロナス  モーターは精度良く完成しているから、モーターがダメになっているのを見たことがない。

両立して耐久性が良いのは、シンクロンの製品であろう。

マツダはモーターの手入れを怠っていると、シューと音がして騒がしくなる。

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指針は青焼きではなく、青塗り。

ダイアルは錫メッキにシルクの様だ。

IPAで拭いても文字は落ちないし、傷が薄れ綺麗に。

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補助部。

特に問題はないが、洗って給油しておいた。

良く動く。

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電灯線を交換したら、組み直して完成。

補助部の連結磁気リフターの具合が悪いから調整した。
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新しい袋打ちはポリエステルかナイロンかのだから、触り心地は違うが、まぁ良い。

通電直後は、補助ゼンマイを巻き上げ機構が働いて、モーターがシューと頑張っている音がしながら、カチリ カチリと巻き上がって行く。

15分かそのくらいで、バチリと音がして、補助巻き上げのトルク検知のレバーが連結を解除して、巻き上げは終わる。

それと同時にモーターは、秒針を運針するだけのトルクに切り替わるから、動作音は無音になる。

コンセントを抜けば、停電補助が働き、カチコチとやって、分針を運針し出す。

またゼンマイが緩めば、次回の通電時に、連結が始まり、ゼンマイが巻かれる。

大凡20分は動き続ける。

戦前の製品としては、連続運針、無音という、如何にも現代的な出来栄えであるが、結局の所、新しい物もあれば、昔に完成しきった物も中にはあるという事である。

果実が完熟を迎えたら、後は腐るのと同じで、技術が良くなって、最高迄達してしまうと、後は量産に移って、其れ相応に使って廃棄する様な形式になって行く様であろう。

こういう様に出来上がった品物は、修繕するも新しいのを買った方が安上がりという様な出来栄えと考えるのが相当ではなかろうか。

これは完熟した製品該当するであろう。

 

 

ps:翌朝にて

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今朝方、様子見してピタリと誤差なく動いているから、停電補助が効くか調べると、幾度かに補助が動作しない時があって、これでは意味が成さないから、少しばかり錘にハンダを盛ってやって電磁が解かれた時に、リフタがパッと離れ易くした。

 

youtu.be

 

これにて、問題は解決した。

音のみであるが、上記から試聴できる。

通電中は無音になるから、外の音が入り込んでいるが、電灯線を断つと途端にテンプが動き出し、また接続されるとテンプは止まる。

戦前の電力事情は酷く、地域停電する事はしばし良くあった様で、それの対策品である。

昨今は家の中でもブレーカー落ちて停電する様な事も少なく、絶え間なく電力供給が続いているから、今にしてみると補助装置は無用の長物に近いが、それも含めて完動品としておくのは設計を尊重できる事と思われ。

自身は収集グセというよりも、機械やら、何がしか触っていたり考えたりしたいタチだから、実は完成して良く動いてしまわれると、気が冷めるというか、そういう一面があると自覚している。

ある程度手の焼ける品物程、楽しい物はない。