A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

阿部式電気時計 再調整

f:id:A2laboratory:20210427214755j:image

色々手入れしているが、各子時計にバラつきが出る様になって各部屋で時間にズレが生じる不具合が大きくなった為、修繕する。

入手時は抜き取られ欠品していた歯車、シャフト、スイッチ一式、1分毎にガンギのゼンマイを錘で巻く為の脱進機一式、これらを製作して今に至っているから、この機構に問題があるという事は、作った物に問題があるという事であるが、どう作ったのか分かっているから、修繕の手際が見える様である。
f:id:A2laboratory:20210427214752j:image

今回の不具合はスイッチ盤にあるから、これを再加工する。

当初は上下で上手く動いていたが、パルス幅がごく短い為に、子時計のパーマネントの力が頼りで、1、2台の場合は問題なかったが、3、4台と増えると、パラレルに繋いだコイルの逆起電力が無視できなくなるという問題が生じたと考えられる。

特に、短期間のパルス信号が入ると、マグネットとの関係で、逆起電力が大きく発じ、アンクルが一定の時間、安定に保持できる状態へ導けないと、初動の引いた力とは逆の力が強くなり、運針が上手く行かなくなり、遅れが生じる。

倍速ではあるが試験をすると、100msでは1440回中5回程ストリップミスを起こした。

200ms以上の場合はエラーは無になる事が判明したから、1アクションを正確に200msを超える様にスイッチの位置を再加工する。
f:id:A2laboratory:20210427214746j:image

常にA-B、A-Bといった様にスイッチが規則正しく毎分1回動作するから、A区間を200ms、B区間を200ms以上になる様に、位置を決めて再加工した。

微調整が可能な様に穴は少しクリアランスをしばし持たせた。

スイッチ自体のテンションで、主動力の錘の力と釣り合う様では干渉するから、スイッチは歯車の負荷にしない角度とテンションで、尚且つ200msのONになる様に調整しなくてはならない。

また、AとBとが重なってスイッチが入った区間は、ON-ON=OFFになるから、この区間は僅かにしたい。

そうでないと、1アクション200ms以上を確保するのは困難である。

また、パルス発生歯車の機構には、大型の風切車が入っていて、速度が速くならない様に既に速度は調整されている訳であるが、この部分はオリジナルが保たれているから、この部分は手をつけないで上手い事やりたいというのがある。
f:id:A2laboratory:20210427214750j:image

組み付けたところ。

秒針とガンギは一体で、1往復2秒である。

60秒に1回、主動力の錘によって、60秒分の小型ゼンマイが巻き上げられ、トルクは錘には依存していない。

従って60秒以内であれば、錘がなくても運針するから、錘を巻き上げている区間も運針が止まる事はない。

普通一般の錘式は、巻き上げ時は運針が止まってしまうから、数秒から数十秒は遅れになるという訳である。

ゼンマイ式も欧州や精工舎の香箱入りを除けば、巻き上げ中は運針が止まるか、後進してしまう。

本機は、3日巻き(最長で5日で警報機が動作)であるが、月差数秒も出ない精度があるから、保持するにはこの様な機構が入用と考えられる。

トルクを一定に保つという事に関しては、10秒か30秒に一度、小型ゼンマイを巻く様な機構にすると、殆どトルク変化が無いため、温度特性の変化だけの誤差で済むはずで、非常に優れた精度の時計が出来るであろう。
f:id:A2laboratory:20210427214758j:image


f:id:A2laboratory:20210427214801j:image

時間合わせをして運針開始させた。