A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

Zenith H581-T 1951‘s

またゼニスのセットが修理依頼でやって来ました。

H581-T、1951年製造の様で。

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前回の物はGTで構成してありましたが、今回はMTとGTが混ざっていて。

G管は遮蔽シールドの意味合いで合理的な事を考えて使っている様である。

確かに、MTシールドを新たに仕入れるよりも、シールドのG管を使った方が一石二鳥。

多分、相当数の在庫を持っていたとも思われる。

 

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まずはプレーヤーから手入れ。

固着が激しく、これまたモーターもアームもカチカチ。

再生状態でもアームを手で無理やり動かしてやっと動く状態。

溝に沿って円滑には全く不可。

裏を見たら、サビサビ(ーー;)

でも大丈夫(笑)

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…全く大丈夫でなかった(ーー;)

連続可変のアイドラは、シャフトと接合していなければならないのであるが、鋳物が風化で縮小、穴は広がり方向に(ーー;)

歪みが発生して、ヒビ割れも出ている。

鋳物は鋳造後は数年か、精度を要する場合は、数十年と風雨に晒して、枯れさせ、動かない様にする必要があるが、これは出来てすぐに寝かしていない物と思われる。

仕事柄、鋳物の製品が有ったから、出来てすぐの物は工場の外に廃品の様に積んでおくのが普通だった。

そんなで、これはシャフトがガタガタ緩々。

これでは回転がプラッタに伝わらないで、滑ってしまう。
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色々考えて具合良く接合させる事に成功した。

これで元に戻った。

 

ps:暫く試運転すると、緩やかにズレて動いてしまう為、やり方を変えて再度接合した。
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アイドラは普通、シャフトに対して滑る物であるが、これはシャフトをバネで押し上げ、上に乗っているコロとプラッタに押し付けながら、回る構造。

Lencoも昔同じ方式を用いていて、垂直型と水平垂直組み合わせもやっている。

これの利点は、モーターにアルミ盤を設けてマグネットで負荷を掛けて遅くするよりも、モーターに負荷を掛けずに微調整が連続可変で効く点である。

逆に言えば、ストロボが無いと、速度が合わせられない。耳合わせが出来れば良いが(^^;;

周波数に依存するシンクロナスモーターのキャプスタンを交換する事なく、レバーの位置だけで調整が出来て便利でもある。
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分解し固着した部分、錆びた部分を手入れして組み戻し。給油をして試運転。

良い。

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それより、コブラの牙(?)が加齢で見事にニヤっぽい。

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アルコールで磨いても綺麗にならず。
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色々試して絶大に綺麗になるのを見つけて、それで象牙の様な色合いに。多分オリジナルもこんな色だったのかなと。

多分真っ白は当時出来なかったのではないかなぁ。

骨董屋ではないから、私の仕事ではないのだけれども、触る部分であるし、目立つから綺麗に(^^;;

 

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次にラジオ/アンプ部を手入れする。

パッと見で、こんな不思議な球の挿さり順をしているのかなと思い、裏板に貼ってあるチューブロケーションを確認すると、見事に誤った場所に刺さっているし、どれ1つとして合っている場所に挿さっていない。

RF Convに12BA6、IFに50C5、AF1rdに12BE6、Outに12AT6

有り得ない具合である(^^;;

〜100のセットであるから、定格を超えて放電して破損する事は無かったと思うが、音は絶対に出ない。
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正規位置に戻し。

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裏側はアメリカンな配線である。

女工さんが流れ作業で組み立てていたかと思う。

時代を感じる。
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GTは大きいから、横付け。

全く面白いデザインである。

バンブービーは絶縁を試験すると500vで500kを切るし、モールドがパックリ割れているから、湿気が入るだとかそういう以前に不良になっている。
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電源部分はモフモフしていそうな見た事ない部品が。
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スタンプが押してあって、触ってみると、全く想像と違って、砂を固めた物の様で、カチカチだった。

抵抗値は数Ωであるが、トランスレス回路であるから、ラッシュカレント緩和に入れた抵抗器で間違えない。

もしかするとサーミスタの可能性もある。

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フィラメント回路の方には、派手に黒焦げになった部品があって、綺麗に磨いてみたが、フィラメントにシリースに40k以上もある高抵抗(?)が入っていた。

セラミックの様な何とも言えない部品で、ハンダが片面には乗っているが、もう片面はハンダが乗らず。

これこそサーミスタの様な気がするが、40kもあると相当熱になるだろうし、正常とも思えないから交換。

フィラメントは計算で86Vで、間に6.3vのランプが挟まっているが、抵抗が入っているから、半分程と思われる。

10V程のドロップをさせたら良いと考えると、150mAシリーズであるから、67Ωである。


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コンデンサのチェックと同時に抵抗もチェックすると150Ωが100メグに。

これはソリッドカーボンであるし、自然に壊れたとも考えられるが、球が違う場所へ挿さっていたから、トドメを刺した可能性も考えられる。

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次にダイヤル糸。

ダイヤル糸の在庫がなかったから会社(CCI)に行って切り分けてもらった。
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オリジナルがどの様に掛かっていたのか分からず、手探りで…

プーリーが2段になっているが、大の方は角度が付いて、これ用ではない様。
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色々掛け方をやってみて、これが一番動き良かった。
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ブロックケミカルは防爆弁が開き掛けだから交換したが、ブロックにすると値段的に高く付くから、端子を追加し、単品を並べた。

 

 

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試運転
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ディスクは10枚迄は平気。

12枚は連続行けそう。
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中央のトーンは、左いっぱいでハイカット、中央でフラット、右いっぱいでローカットと、面白い動き。

短波も中波と同じ程の音量で聞けるから、私のBoschの4バンドの短波は、どうやら感度が著しく低くなるから、何かしらの不具合がある様だ。

RFチューナー部分は複雑で取り出しが簡単でないから面倒である。

これはコイルも1セットになっているから、ある意味で手が加え様に加えられず、良いかもしれない。

Boschのラジオはコイルが4バンドで其々に別個。

でもって輸入時に長波のコイルは抜かれた様であるし、他のコイルも触っている様で、オリジナルではなく、自作の様な雰囲気がある。

 

そんなこんな、ひとまず完成。