A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

TA8005 REPRODUCER SET.

修理依頼品。

珍しいウエスタンのリプロデューサーセット。

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TA-8005

アンプ部分はなく、7A Equalizerが入ったスタイル。

電氣蓄音器の上部分だけと言った具合。

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キャリングケースに入っているが、おそらく映画館で使っていた物と思う。

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そう言うのも、78rpmと33rpmが出る様になっていて、筐体サイズも16インチディスクが入る様になっている。

従って、16インチディスクの33rpmのソースともなれば、映画のトーキー用、音声ディスクを再生する為の物の可能性が高い。

まぁまぁ、演説、議事録の長時間録音向けディスクの可能性もあるが、1920年代ともなれば、フィルムに直接炊き込む、光学録音はまだ出ていないのではないのかなと思ったり。

最初期のトーキーは、弁士(活弁)が居たり、スクリーンの手前、一段下がった部分でオーケストラが演奏するスタイルもあった様だが、録音盤の活用として、これらをディスクに記録し、映像に合わせて再生する手法がある。

知っている限りでは、映写機もディスクも2台づつで、1台は待機、スイッチを回してPlay/Stopになるコントローラーとがセットになったものが映写室にはある。

時代が新しくなるにつれて、フィルムに音声が乗っかり、ディスクは館内BGM程度の用途しか無くなったかと思う。

国内ではおそらく、ディスクでトーキーをやっていた所は無いのではないかな。
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速度調整。

この頃だから、ストロボではなく、遠心力の速度計を使っていたと思う。78rpmで合わせるスタイルの。

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色々問題はあるが、まずまずの問題はプラッタが上板に干渉して回らん。という一番困る状態。
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モーターのブンブン緩衝に入っていたブッシングは見事に寿命を完う、御釈迦。

交換に良いのがあるから、それに交換して対応する。
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中を見る。

結構なフォノモーターである。


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試しに通電すると、遅く回り出した。固着気味か。
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ガバナーはコンパクトに収めたい為か、見た事ないクロス式。

内側にパッドを当てて止めるのが多いが、これは逆に外側にパッドが当たる。

分解掃除して給油する。
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変速部は歯車が2つづつ。

爪のある歯車が上下してどちらかを連結させる様式。

本来はここの中は、マシン油で満たされている様である。

オイルホールもかなり大きいのが開いているし、密閉も良い。
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外歯が33、ホゾ側が78

バラして洗う。
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マシン油を浸して組み直し。

通電試験。
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ガバナーが少し動くが、最大でもパッドに触らない。

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おかしい…おかしい…

色々調整してみたが、動きは良いが回転が上がらない。

…上がらない?

そうかそうか。と、至る迄時間を要してしまった。

そりゃ、回転数は上がりませんよ。50c/sですもの(^ω^;;)

いやぁ国産の電蓄は50c/sも想定して作られているから、60c/s地域に持って行っても、より多くパッドを当てて使えば良い様になっているが、これはアメリカ製。

60c/s基準で作っているから、50c/sではSlow最大にした時と同じ位に遅い。

速度にして-20%である。

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ブッシュも交換、これで良し…

と思ったが、う〜ん?この設計はあまり理想的でないなぁと。

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ネジは本体からブッシュで緩衝しているが、下のモーターとテーブルを結構強いバネを押し潰して安定させている。

まぁバネも少しは緩衝にはなるが、モーターのブンブンは結構なものであるし、出来ればテーブルともフロートしたい所。

バネの所にブッシュを詰められるかやったが、バネがキツ過ぎて潰れに潰れて、元へ戻した。f:id:A2laboratory:20230210223159j:image

プラッタを乗せても、高さが合わない。

この16インチのデカイ板の割に薄いし、これってもしかして上乗せして大きく見せてる系かな?

と思って、バラしてみた。
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案の定。

12インチのこっちの皿がオリジナルだ。f:id:A2laboratory:20230210223212j:image

それでも高さが合わず、シャフト下に敷いてあるペッタンこになった物が、ゴムパッキンという事が分かったから、これは作った。

これで高さも合うが、プラッタは常に回転させておいて、直接プラッタを止めても空転する様になっている放送局スタイルらしく、ゴムパッキンだけでプラッタを回しているから、非常にガタガタ。

シャフトもテーパーではなく、ストレート。

1920年代のクイックスタート機構はこんなにもアバウトだったのかなぁ…(^ω^;;)

蓄音器の方がクイックスタートは無いけど、安定が良い。
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試しに試聴。20%遅れが結構遅さを感じるが、音は出た。

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チップは鉄針でも良い様だが、付いていたのはオスミウム

半永久針である。

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Victor軽音楽同好会のディスクは録音が小さいか、50mV程しか信号が出ない。

電気録音の大きい音がするのを試し聞き。
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アメリカ製なのにソ連のディスク聞くって言う(笑)

いやぁ、なんか好きなんだよね。アメリカ程入って来ていないからか、凄くどれも古いけど新鮮なメロディ。

 

ただ少し歪みっぽいかな。

あんまり良い音な気がしない。

もしもの交換にと、4A Reproducerを1セット預かっているから、これに交換する。
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難点、筐体デカ過ぎる(^ω^;;)

 

続く