A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

吸うとか、吸われるとか。

グリッドが吸うだとか、吸われるだとか、私は良く使いたがる。

何でという質問に大凡分かり易く簡単に答える。

 

一番世間に行き渡ったであろうラジオ、5球スーパーのAF段、即ちAudio Frequency、音声周波数の段の球は6Z-DH3乃至6SQ7、次段が6F6乃至UZ-42、もしくは6V6、より近代化して6AV6、6AQ5、乃至6AR5。

HiFiオーディオ、もしくは電蓄となると、12AX7、6V6乃至6AQ5と言った並び。

6Z-DH3であろうが、6SQ7であろうが6AV6であろうが、12AX7であろうが、結局μ100の3極管で、X7以外は検波用のダイオードが付属しているだけである。

これはカソードに結んで無視すれば、12AX7の片割れであり、同じである。

これを出た後に、6V6やら6L6やらを繋げたくなるのはよく分かる。

だって今迄そうやってやっていましたもの。

確かに。

 

ラジオの時代から何一つ変わっていないと言ったらそんな感じで、高周波回路を乗せたら、ラジオ完成。

スーパーの音はもう嫌な程に耳に馴染んでいるので、今更ラジオから離れなくても…という部分が少なからずあるのかも…。

もしくは、逆に真っ当な音が出る方が、異常な様に感じる場合もあるかも知れない。

慣れは凄い左右される。

 

電話も近年はHiFi化され、歪みも少なく高感度の良質なコンデンサマイクロホンが使われている。

ひと昔前は、カーボンマイクロホンを使ったもので、遠方の場合は中継増幅器を通る。

カーボンマイクロホンは電流を振動板とカーボン粒との間へ流して、これらの接触率の変化を音声信号に変換する。

従って、鮮明さ細かさは薄くはなるが、音声通話を行う分には用を成す。この時の歪み率は20%以上ある。

遠方への中継増幅器も歪みは大きいから、40%位は歪んでいた。

電話の声と実際が異なった印象なのは、裏声にして声をより通し易くするという意味もあるが、(低い声は感度が悪く送れなかった為)かなり酷い歪んでいた事も事実である。

 

そういう観点から行くと、やはり2A3の電蓄は優れているとなってしまう。

というのも、2A3自体はμが低いから、大きな信号を入れてやる必要がある。という認識はあるだろう。

しかしあまり12AX7を初段に2A3を押そうという設計は多く無い様に思う。

大凡、6SL7やら6SJ7、12AU7の様な球が一般的ではなかろうか。

2A3のバイアスは大凡40〜60V程。

12AX7の1本を使用して、イヤホンから出せる程度の400mV〜600mVがあれば、100倍だから、40-60V得られる。

最も簡単に最大出力が得られる計算になる。

それなのに、どうして選ばれないのか。

要は12AX7では大きい音が出せないのである。最大出力を得る事が難しいという事になる。

100倍有っても、定格出力が得られない…何でだろうと考えた末に6SL7に辿り着くのかも知れない…。

 

そもそも、なぜ2A3の電蓄は昔から良いのかって。

やはり出力も大きいし、ラジオ設計のアンプ部分を抜粋したものではないから。

言ってしまうとそうなる。

音楽鑑賞をする為に作られた電氣蓄音器、電蓄は、アコースティックの蓄音器よりも大きい音が出せて、自在に音量が可変自在である事が凄いという時代。

しかしながら、アコースティックの蓄音器も、時代の進歩と共に、大分凄まじい質感の音が出る様になって、電蓄もそれに劣らない、帯域の広い物が求められた。

売るにも、古風な蓄音器よりも優位な事が無ければ、いくら最新型であっても、音量が可変出来ても、音が悪いのでは、幾らか安価になり始めているアコースティック蓄音器を買われてしまう。

そんな様に、2A3の電蓄の回路というのは、音楽を楽しむ用途に徹底している設計と言える。

ここへ、更に1つ高級品へと格上げするべく、高周波回路を乗せ込めば、ラジオ付き電蓄になる。

それも幾分、元々ラジオとして作られた物よりか良い音がするという得点がある。

 

では、ラジオという物はなんなのか。

基礎基本的な部分は、無線電話で、今変化している事柄についての速報、情報を遠方迄瞬時に一斉送信する為のもの。アナウンサーありきのもの。

言ってみれば、新聞紙の役目。

しかしながら、新聞は朝刊と夕刊の2つで、昼間の世間の状態は知る事ができないし、突然起きた事も号外で配ってくれないと分からない。

そりゃラジオも通電して、鳴っていても聞こえる範囲に居なければ、新聞と同様になってしまうが、ラジオは商売の1つでもあって、株価、物価の放送が当時のタイムテーブルを見ると表記されている。

そんな様に、ラジオは音声を聞き取る事に長けている様に作られ、声が通る様に電話の様に中央帯域がメインになっている。

低域と高域、特に低域は、歪んでいる場合に多くが出ると、“ばびぶべぼ”と何を言っているのか分からなくなってしまうから、カット、というよりかは、出ない状態の方が良いから、改良をあえてせずに、其の儘が良いとされている感はありそう。所謂ラジオ声。

音声が聞き取れ、それ以上に感度の良いアンテナコイルや分離性の良いIF、(戦前の書き方だと、IM インターメヂュード)、とにかく受信機としての性能に特化している。

音楽鑑賞は蓄音器か裕福な場合は電蓄という事になる。

 

ちなみに、無声映画からトーキーになる頃、フィルムにサウンドトラックを設けず、レコードに吹き込んで、映写室からタイミングを見計らって針を落とすという方式がある。

レコードは裏表で1面2面、次のディスクが3面4面とすると、終わったら引っくり返す手間があり、数秒は掛かる。

だから、1面3面、2面4面とディスクをしておき、2つのドライブに1面、2面と置いておき、プラッタは回しておく。

1面を再生して、終わったら隣のP.Uの針を落とせば、殆ど瞬間的に繋ぐ事が出来る。

2面を再生している最中に1面を裏返し3面を出して待機していれば、4面が円滑に繋がる。

DJのダブルドライブはここから来ているとも言える。

クラッチは放送局で頭出しを行う作業から発祥した事である。

簡易停止はプラッタを浮かす方式があるが、実際は直接ディスクを手で止めてプラッタだけ滑らせるやり方をした方が、ノイズもなく回転もスムーズで良かった様である。

業務用の別珍が貼ってあるプラッタは、滑らせておく意味で貼ってある。

困った事に、滑りが良いから、ディスクが針圧でスリップする事があるから、ウェイトを乗せる。

ディスクスタビライザーとかピュアーオーディオ業界では言う様だが、業務用は重石、ウェイトである。

簡易にテープクランパを乗せても良い。少し穴径が大きいからガタがある。

 

 

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話が各方向に逸れ、それらの不思議は色々あって難しいが、順に。

2A3の話で少し触ったが、12AX7はμが100あって、100倍にもなるのに、バイアスが12Vだとかの6V6は、12Vあれば最大出力が得られる筈。

そこへ100Vも入れたら盛大に歪む。

その前にボリュームのちょっとでも上げ様ものなら、すぐに12Vを超える。

フルボリュームで100Vならば、それの1/10で十分と言う事になるわけ。

1/10で最大音量に達するから、そのまた半分の音量…1/2にする訳に。

上がりません。上げられません(^ω^;;)

でも実際には、1Vを入力しても、プレートには10Vしか信号が出なかった。なんて事がある。

 

おかしいな。終段6V6を抜くと100倍になるのに、6V6を挿すと10倍になってしまう。

でもって、5W出るはずなのにフルボリュームでも1Wしか出ていないのにディストーションが凄いぞ?それに低音も出難いなぁ。

そんな現象が起きる。

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簡潔に言うと、6V6が信号の1/9を無駄に消費しているとする。

残で残った分で、6V6を動かしている。

(実際はRgでも消費されている)

 

ここで少しだけ深掘り。

A1級動作では、グリッド電流は流れない、FETみたいな物だと思っていると思うが、実際にはゼロではない。零なのである。

例えば、起電力バイアスという特殊なバイアス印加方法があるが、あれはRgを5Mや10Mにするだけで自動的にバイアスが掛かるというものである。

5MΩの抵抗の両端に1Vの電圧が出ていたら、それはグリッドからカソードへ、200nAの電流が流れているという事になる。

桁を上げると0.2μAである。

12AX7のカソードに2kΩの抵抗を入れ、ここに1V出ていたとすると、500μA、すなわち0.5mA流れている事になる。これと比べると桁違いに小さい値だが、ゼロではないのである。

でもって、この起電力バイアスは、出来る球とできない球がある。

出来ない球というのは、100k迄、500k迄、1MΩ迄と記載のある球である。これ以上の値のリーク抵抗では、グリッドが熱され、逆に電子が出る様になって、所謂、熱暴走を起こすから、危ないぞと警告している訳である。

熱暴走が起きるという事は、定格のリーク値をある意味守っていない。

自己起電力によって、バイアスが狂うという事である。

UX-50は特に低くて、10kΩ以下で使いなさいと指示がある。これはもう抵抗結合ではなく、変圧器結合を意味している様な物と思われる。

ここに例えば、100kΩを入れたとすると、12Vのバイアスを-C電源から印加しても実際には2Vになってしまう様な雰囲気である。

グリッドから電流が流れているのである。

 

この様にグリッドは僅かの電流が出ていて、且つ、バイアスが0Vへ近付くにつれて、電流を吸い込み始めるのである。

カットオフと言う様に、深いバイアスを掛けて電子を停止させている様な場合は、電子が停止する位だから、停止に近くなる。だが厳密にはゼロではないだろう。

 

 

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12AX7の話に戻って、これを車に例えると、平坦な道をベタ踏みで100km/hの速度が出ているとする。
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次第に道は上り坂になって来た。

この時、ペダルの踏み量は同じであるのに、80km/hに下がってしまった。

 

この様に、坂道という負荷に対して、乗っかっているエンジンの馬力が見合わないと、大きな損失を出しながら走る事になる。

最悪の場合は、人が降りて、後ろから押してやって坂道を上がっていたなんていうバスも、古くはあるとか無いとか(笑)

木炭車かな。

 

これを其の儘、球に戻して、平坦道は12AX7はμ100が出るが、坂道では90%のロスを熱に変えながら、μ10の力で、6V6を背負って上っている訳である。

 

また1つここで深掘り。

カソードフォロアという使い方がある。

上記のμ100というのは、プレートフォロアという使い方になる。

カソードフォロアでは、車で言う所の低速に当たるかと思われる。

これは坂道を普通では上がれないが、2倍の回転数を落とす代わりに2倍のトルクを得ようというものである。

カソードフォロアでは増幅度は1以下、即ち低速へ入れたのと同じにる。

100倍あったのが、0.95倍程になる。

こうなれば、もっぱら12AX7でなくとも良さそうであるが(笑)

これの場合は、結構な坂道でも、上れる様になる。

実際には、坂道を上る負荷と、向かい風がある。

向かい風がまた派手に強いと、やはり速度が出せなくなる。

風が無いと上れた坂でも、向かい風が強いとエンジンが止まってしまうという事も。

球で言う所の、負荷インピーダンス=向かい風。電流=トルク。

これが低く使ってくれ、向かい風が強いから。とオーダーされている場合は、坂道に耐え、向かい風に耐えられないと上れない。要は音が歪んでしまう。

音が歪むというのは、エンジンが焼けて速度が出せなくなっている様な状態に近いかと思う。

 

トランスもある程度焼く様な使い方をすると、熱で容量が減る。

モーターもやはり同じで、過負荷で焼いて使っていると、次第にトルクが落ちて、結局速度が出なくなる。

球はエミッションという形で、電子が出難くなって、最終は電子が飛ばなくなって御釈迦になる。電流も流れない。

無理を続けると壊れるのも速い。これはまぁまぁ何でも同じで、人も過労で御釈迦になるという様に同じ。

寿命は平等に与えられるものであるが、負荷が強いと短寿命の可能性は十分ある。

真空管の中で、初段がすぐにダメになるという設計の物を使っているならば、無理が大きいという事であろうし、整流管がすぐダメになるのであれば、電流が流れ過ぎていないだろうか。という話になる。フィラメントも10%以内が推奨されているから、上がり過ぎもエミッションを加速させて、活性化が早まり、gmが上がるが、電子が出難くなるのも早まる。枯渇する。

逆に電圧が低過ぎるのは、カソードの活性化が促されず、酸化膜を作ってエミッションが早くに劣り下がる。

定格は守った方がフィラメントは良い。という事は間違えない。

フィラメントが切れる心配があるならば、電源を入れたら切らない(笑)これが一番良い様だ。

もしくはボルトスライダーで、徐々に上げる。

まぁでも、テレビを毎日見ていて、テレチューブ、ブラウン管を交換した記憶って、何回ありますか。それもフィラメント断で。

それを考えると、毎日使っても10年20年ザラに平気でしょう。中には早くに寿命が来るという物もあるでしょうが。

 

 

そんなこんなで、とりあえず今日の所はこれにて。