A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

Counterpoit SA-5.1

ノイズが出るという事で修理依頼を受けた。

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1Uラックマウントのスリムスタイル。

基板1枚かなと推測。

修理はやり易そうな印象。
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開腹前に調べた時点で、フォノセレクトで低域がゴォーと鳴っていた。結構盛大であり、入力の有無関係無かった。

信号を入れてみると、片ch鳴らず、SWの接触不良になっていた。

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電源部は6GC5レギューレータ、6JC6制御、5651基準電圧という構成らしい。

この3つは手に入らなかったのか、交換していないらしく、結構焼けている。

5651は不良になってくると、恐らく出力電圧が上昇するかと思う。

ネオンで放電しているから大丈夫そうに見受けられるが、健康状態は如何なものか。

試験器にかける事にする。

JJのE88CCは増幅段であろう。この頃の製品には多く使われている印象がある。

これらは交換したらしく、埃の積もり具合が浅い。

プレートの雰囲気、シールドがある様子から6DJ8と同じかな。

μ30程度だから、12AY7に近いと思う。

JJは程々使うとS/Nが悪くもなるし、使っていた6BQ5はショートしたりと結構耐久性には劣りそうであるが、値段を考えたら、昔の物とは比べ物にならない程安価であるから、ケチつけるのは相応しくないだろう。

例えば、昭和30年代の12AX7が¥650、¥700という価格は、今にして¥23,500以上のモノ。

当時の5670Wは¥3500は下らなかったから、¥126,000相当の代物だった。1本の価格である。

それに比べたら、¥3000程度で現行品が買えるなんて言うのは、ある意味で有り得ない程安いという事になる。

大量に余って安いのとは訳が違うから、それにケチつけるのは相応しくない…そう思って使うのが良いかと考える。

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電源を切って気付いた。

増幅と制御のフィラメントは常時点火していた。

レギュレータと整流部は切れるから、どうやらトランスの1次をon-offするのではなく、整流管のフィラメントをoffにしているだけらしい。

だから高圧が結構長い事出続ける様で、基準電圧管が割と長い事点灯している。

ミュートの回路を555ICで動かしているのは、定電圧放電管のポップノイズをカットする意味らしい。

電源ユニットも割と温まる。

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フィラメントはDC点火だから、電源が温まっていても不思議でなかった。
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カウンターポイント セレクト品が付いていた。

ナショナルユニオンかな?
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RIAAのカーブ確認。良い。

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基板の清掃とスイッチの不良を修繕すると低域の盛大なゴォーというノイズは消えた。

上の挿絵は-20dBレンジで見たところだから、-40dBの位置が-60dBになる。

50c/sと100c/sが立ち上がっているのは、リプルであろう。

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サービスマニュアルの回路を追ってみると、実際の基板と合わない箇所がある。

時定数も微妙に異なり、どうやら改訂版らしいが、フォノ初段は無バイアス?コストカットをやったか?

Epは指定範囲にあるから良し?

-40mVというバイアスは、1Mで起きているのかと思ったが、アース-カソード間で出るから、基板パターンの抵抗によるバイアス発生が起きている様だった。

そもそもグリッドリークの1Mも見当たらず、何処にあるのか探したら裏に付いていた。

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何とも言えないが、0バイアスで受けるのはコストカットのラジオで見かける事があるが、+領域へ振ると、A2級動作で、グリッドに電流が流れるから、それを補うのに、3μFのカップリングに頼る方式?

それともMCの様な、電流送電型を想定して、無理矢理押し込む事を想定?

それともギリギリ、グリッド電流が流れない範囲で頑張ろうという事?

良く分からないが、良い設計なのか疑問はある。ギターアンプっぽい気もしなくない。

出た音勝負の様な。

ハイエンドな物とも、廉価品とも言えない、中途半端な代物に思えてくる。

 

因みに、ラジオで稀にある起電力バイアス式は、Rkは無いが、Rgを5Mや10Mと大きいものにして、グリッドへ流れる微電流を使ってバイアスを得る方式はある。

ただ今回は1Mだから、その程度では殆ど得られない。

 

LineドライブのEpはバイアス調整範囲でEpが+20Vオーバーで、どうにも調整できなかった。

これも回路図通りに出ていなかった。

 

 

 

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試験の前に、交換球が入手出来るか確認すると6GC5、6JC6A、5651は、数える程も無かったから、今後修理が必要になると、相当苦労するであろう印象。

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E88CCの代わりに6922を選んだ。
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試聴してみると以前の状態は、かなりボケたモコモコした音だったらしい。

かなり明るい音がするし、全体に分解能が高い様でスッキリして、これならばハイエンドと言って売っても良さそうだ。

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ゾゾーと鳴っていたノイズは-20dBレンジで確認出来ていたが、消えていた。
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-60dBレンジで一番立ち上がっているノイズレベルは-90dBと、かなり下がった。

初段のバイアスも確認すると-700mV出ていて、回路通り。

Epも回路図通りの範囲に収まっている。

LineドライブのEpも範囲内に収まり、バイアス調整範囲内である。

 

結果的に球の不良が著しく、交換したらしいコンデンサは、何かからの取り外し品らしい、シリコンの切った跡が有ったりの物(シリコンの色も合わないから本機の中から外した物でもない様)だったから、これも交換して、満足行くレベルに仕上がってると感じるから、これにて出荷する事にする。