A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

Phillip Haas & Söhne.

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先日から久しぶりにドイツのをボチボチ動かしてみたが、ボンボンが鳴らなくなる症状が現る。
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フィリップ ハース&ゾーネ。ウサギのロゴが機械裏に小さく彫り込んである。

文字盤、他、見える所には記載はない。昔の物程、隠したがる傾向にある様子。

見える様にサインを入れるのは製造者ではない場合がある。例えば誂えで頼んだ宝石商の店名であったり。

実質の機械製造は、裏側に記載しているパターンが多い。無記入のも中にはあるが。

美学なのかも分からないが、大抵良質な代物程、メーカー名の主張は少ないものに思う。

代わりに、ミテクレからして、あそこの職人の作った物かも知れないと、大凡検討がつくモノである。要はデザインも全て、総合的な表れであろう。

メーカー名で売ろうという番人ウケする様な類は、目立ってメーカー名やらサインが無いと、外見からでは、何が何だかワケワカメという事であろう。

デザインが既にサインであるレベル、是非ともそうしたいものである。

製造期は1910-1914年で、我國では大正期である。

この頃は舶来品が多く入って来て、蓄音器も“Swiss”だったり“Germany”だったりと銘板に表記された物が今でも巷に売りに出回るが、あれは国産である。

Swissの表記は日本語名で、舶来ならば、Switzerlandである。

Germanyの表記は正規でも海外向けに作った物もあるから、微妙。鼠色区域である。

カメラでGELTOというのがあって、如何にもドイツっぽい雰囲気であるが、あれは国産である。

でもって時計屋では、好きなトレードマークを書き入れます。という事迄やっている所はあった様子であるから、そうなると最早機械でしか見分けはつかない。勿論、刻印ももしかすると上手く打った物かも知れないから、プレスの雰囲気と歯車の仕上げの具合で検討するしか無さそうである。

特にユンハンスは怪しいのが多い。

このPHSは、この刻印だけでGermany、この頃のはGerman Makeとある方が多いかも分からないが、どちらにせよ表記はないが、欧州の精密旋盤と割り出し盤で作った歯車を見たら、国産でもアメリカ製でも無い事は一目瞭然。

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面白い詰め方をしているが、それも相当過去の事だから…
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現状はこうなっている。

僅かであるが偏心すると負荷になってトルクの伝達が悪化する。

時報側の矯正は酷くならない限りやらないが、ドイツ製はそうも行かないという事らしい。絶妙なバランスで動いている。

アメリカ系は力でどうにかしようとするから、若干の摩耗も、時報側であれば精度に影響はない。

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矯正を終えて洗っていると、やたらピンが抜ける。

カシメが全体に緩いらしい。

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風切車もホゾ歯車のピンが横へ抜けている。

チェックして端を詰めて、ここはピンが回転する様にしておかなければならない。

完全にカシメてしまっては宜しくない。

乾燥、組み直しをして完成である。