A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

James B Lansing 175 音がビビる

f:id:A2laboratory:20210606195907j:image

お客さん宅にて。

ハーツの上に乗せている175がどうも音圧が低い。

アンプを交換して云々...そういう事をしたみたいであるが、アンプではなくユニット本体の問題であろう事を言うと驚かれていたが、アルミやら金属板のダイアフラムのユニットは何処かしら問題が出ても不思議でない。

片一方だけを聞いてみると、VCが固着した様な、微かな高域がチリチリ鳴るような具合。

前々から音圧が低い印象はあったが、完全に固着してしまったらしい。
f:id:A2laboratory:20210606195911j:image

大鏡も工具も揃わないから、お客さん宅で作業するのもどうかと思ったが、有り合わせで集めてもらって何とかなるかなと、その場でバラさせてもらうと、ダイアフラムに凹み傷があり、どうも前オーナー(舶来品らしい)が潰してしまったのを、裏から叩いて直したのではないかと推測。

完全に固着していて、ポンポン良い音がしない。

f:id:A2laboratory:20210606200552j:image

修正部分は一部が伸びているのか、触るとパッチン パッチンとマイクロスイッチの様にバネが効いてしまっている。

ドーム部分は薄く錆のような、粉を吹いていたから、綿棒でナデナデしながら清掃。

その時も大分パチパチと凹み部分が少しの刺激で音がするから、特定の音が入るとビビリが出そうな雰囲気は大きいが、ピンホールも開いておらず、折れ目からの腐食はまだ無い様だ。

何となしダイアフラムの交換が望ましい様に思うが、白の絹巻きコイルの雰囲気、オリジナルなのではないかと推測。
f:id:A2laboratory:20210606195900j:image

根本の固着の原因は、ダイアフラムのボビン側を下にして置いたか、それとも落としたか、引き出し線のハンダ部分が折れ曲り、ギャップ内で接触していた事と考えられる。

定めし、大音量で振動板がスイングした際に曲がりが大きくなり引っ掛かったのではないかと推測。

丁寧に折れ曲りを元へ戻して、ギャップを見ながら組み立てる。

f:id:A2laboratory:20210606195904j:image

ダイアフラムは殆ど2点ガイドで位置が決定され、タンノイの様に調整が大きくは効かないが、その僅かの動きで音圧が変わってくる。

更にビビリの具合も変わってくるから、ダイアフラムを満遍なく押してビビらない場所を探りながらポンポンと叩くが、ダイアフラムが斜めになってもいるのか、ビビリが止まらない。

始めはダイアフラム外への引込み線の薄ベークに挟んである様な動線がダイアフラムと離れているものだから、それがビビリの原因かとも考えたが異なった。

タンノイのダイアフラムは、コイルがダイアフラムに接着されて引き込んであるが、こちらは宙に浮いている。

ある程度の硬さがあり、薄板状になった線材を使う事で、ビビリを抑えたものと考えられる。

グッドマンの浮板ベークのエッジの様な雰囲気である。

VCボビンが若干斜めになっていると考えられる側を押してやって、再度ヨークに当てて確認。

これを少しづつ繰り返してダイアフラムの何処を触ってもビビらなくなった。

しかしながら、ピアノの特定の音が入ると、奥の奥の方に感じるガサガサした音が出るから、ダイアフラムとボビンの接着が怪しいか、ドームの傷の折り目が固有の共振周波数を生じさせているか分からないが、僅かに変な音を感じるのであるが、前よりか良くなったという事で今日の所は終了。