A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

乾電池式機械電気時計

乾式電池と言えば、屋井先蔵氏が有名であるが、電池製作の前には、電気時計の開発をもやっていたそうだが、扱いが容易でなく、一般ウケせず、売れなかったという歴史がある様だ。

扱いの難しさは、湿式電池であったからの事と思われ、それを改善すべく乾式電池を開発するに至った事であろう。

 

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今回入手したのは、ソレノイドを使用した機械式の電気時計であるが、何処の製品なのか不明。屋井先蔵のだったら良いなーとか思ったり(爆)

トレードマークは、A S、もしくはS Aの様。見た事がない。

電池式で、乾式というのは大きさからして間違え無さそうである。

生憎、電池筐は無いが、振り子下に掘り込んであるから、ここへ入れていた事と考えられる。

大きさからして、単独1号が2つ。

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特許番号は69898番で、調べると昭和10年に取得している様子であるが詳細は出ず。

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雰囲気からして大正期の様な電線であるが、昭和なのであろう....戦前ではあるが、古さを感じさせる。

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機械を外してみると、舶来製の電気子時計に良くある、渦巻きバネの力でコマを押し進める式である。

後のバッテリーで動作する車載時計とも同じ構造である。

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ソレノイドは最後に動作し止まった様で、トルクは歯車へ伝わっているが、ガンギ辺りが固着をしている。

此の儘無理に動かして使用すると、シャフトもホゾ穴もお釈迦だから、オーバーホールをする。
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端子はオリジナルなのか、昔には良くあった鉄製の卵ラグである。

ハンダのフラックスで錆びているのか分からないが、かなりキテいる。

しかし、交換してしまうと歴史的な意味合いで宜しくないので、上手い事再利用する事にする。
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コイルが切れている可能性も考えて、通電して動作させてみると、全く問題なかった。
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機械は綺麗で、OH歴も殆ど無い様子である。

要はそれだけ、良い構造をしているという意味。

修繕が重なっている様な機械は、あまり素材の質や構造が上手く行っていない可能性が考えられる。

上手く行っていれば、修繕などする必要が無いからである。

もしくは、使ってみたけど、上手くないから蔵に放置した...という可能性も無くはないが。

どちらにせよ、綺麗な状態であるのは良いワケで。

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ミシン油をくれたのか、かなり粘っているが、ホゾは痩せてはいないから状態は良好。
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アンクルは自動バランス機構になっていて、ドイツ製っぽい雰囲気。

安い国産の普及型とは差別できる。
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ツツカナ....掛け時計でもそう言うか分からないが、固着が激しいから抜いてみると、緑青が筒内で発生していた。
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綺麗な機械で、汚れも少なく。
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組み立てる。

歯車は4つとシンプル。

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組み立て、タイミングスイッチを調整、給油をして動作確認をすると連続するから問題ない。

生憎電池筐を持っていないから、直接ハンダした。

連続で1年位は動くだろうか?分からないが、次の時には用意しておく事とする(^^;;

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40秒、コチコチとやって、ゴッと音がしてソレノイドが動作する音がする。

トルク的には一定に保持されるから、精度はかなり高いのではないかと思われる。

どの位の精度が出るのか見てみたい所である。

 

ある一定期間で、動力トルクを維持する考え方は、阿部式電気時計と同様であり、電気時計の本に、雄工舎の構造図があり、これがかなり似ているから一部抜粋してUPしておく。

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