A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

精工舎 角箱 スリゲル

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マツダのロゴが入った精工舎をOHする。
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動いてはいたが、機械は見た目以上に結構やれていた。重症である。

手放した理由は精度が出なくなったからかも知れないし、単に水晶時計が安くなって、手間を面倒がって不要になったからかのどちらかと思うが、前者である可能性は高い。それで安くなった水晶時計に交換したのかもわからない。f:id:A2laboratory:20220304152937j:image

上板は綺麗だったから、OH歴は無いのかと思ったが、1度は手入れされている様子である。既に矯正してあった。

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時2番、3番本剣車のホゾ受けが大分摩耗して楕円になっている。

歯は摩耗していなかったから、まだ良い方か。
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叩き戻しては当てがって調べながら詰めてガタが極小になったら完了。

機械を洗う。
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ゼンマイはそんなに汚れてはいなかった。

薄く油引きもされていて滑りは良好。

Cリングだと組むのに具合が悪いから、拭いて仕上げた後にタイラップで止めておく。
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上板で全て組みたい所であるが、ゼンマイのボスが下板に出ているから、上板で2番3番を組んだら、今度は下板にひっくり返して、ボスに入れたら他を組む。

もっと良い方法があるのかも分からないが、精工舎のこの時代のは手間食う構造をしている。f:id:A2laboratory:20220304152935j:image

組み直し、少し巻いてやるとアンクルがフラフラ振るから良好である。

ちなみに完全停止しない構造だ。両蹴り出しに近いのであろう。

大きい筐体の2音(リン)タイプに搭載の機械は両蹴り出しであるが、端は完全停止する、内蹴りタイプである。

この方が振り幅が殆ど変化しなくて安定が良いと言える。

停止区域がない物はトルクが強い時は大振り、トルクが弱い時は振りが小さくなる。

停止区域がある物でも、力任せの設計の場合は振り幅は僅か変化するが。まぁまぁあまり良くない。

動作に問題ない事を確認したら給油をして函へ戻す。

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機械バランスは欧州的にアンクル部分のスリップで行えるタイプだから後から調整してやれば良い。

ボンボンはクリアランスを大きくして、ボンボンがそんなに大きな音にならない様にしていたが、小さくはなっていないが、深い低域が心地良い響きである。

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この頃の物だから、週差1分以内に状態が最良の場合は収まると思うが、さて如何かな。

OHはこれにて完了。

 

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光星舎はようやく2分遅れになった。

振り玉は最下であるから、僅かづつ上げていけば良い。

子時計は阿部式親時計があるから使っていないが、接点容量が足りなくなったら、こっちも使うか。どれだけ増やすのだか(笑)

 

八雲の姫ロングは相当具合が良いか、週差1分以内である。

明治期のアンソニアの四つ丸も月差2分と無かったから、力任せな機械ではあるが、状態の良い時は調整してやると非常に安定している。

グレシャムやトーマス、テンプの機械はどうも精度が出ない。

グレシャム系は恐らく振り子長が短く、力に左右されてしまうのであろうと考える。

テンプの物も、2日巻きの巻止めが入っている物があったから、精度保証期間は2日程なのであろうと考えられる。

赤ビシやコンパス印、FIRSTは、1週間動くのが標準の様であるが、週末の精度は当時から怪しくなっていたのではないかと推測。