A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

2019/05/31

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大正期に無電源式の親子時計を発明した、阿部彦吉氏の親時計。

この親時計は役所に置かれた物でNo.2と銘板が打たれているので、2台あったと考えられる。

この親時計は、1分信号式、有電源方式であるが、機械の構造は無電源式と同様である。

分銅式ではあるが、この動力は直接的には関係しておらず、1分毎にガンギ車の2つ手前の歯車に内蔵された小さなゼンマイを巻く。

これは、分銅を巻き上げ中に運針が止まるのを防ぐ機構と考えられる。

60秒の前後を跨いで巻き続けなければ、運針が続けられる。

60秒の前後は、ゼンマイ巻き上げの作業がある為である。

また、例えば分銅が一番底迄落下して、巻き上げが不完全であった場合に、ゼンマイが完全開放にならない様、僅か手前で止まる様になっている。

それが大体80秒程で、それ以内であれば、運針を続ける。

 

力配分は、”分銅の重さ>ゼンマイ”

しかし、この配分が非常にシビアで、殆ど、”分銅=ゼンマイ”という具合で、”分銅>ゼンマイ”の割合を大きくすると、今度はゼンマイが巻けず、非常に重い振り子を蛇足だけで動かすには難しい。

かといって、振り子に勢いをつけようとすると、”分銅<ゼンマイ”となってしまい、今度は重い分銅でもゼンマイを巻くだけのトルクが得られない。

上手く動かそうとすると、殆ど力配分が等しくなり、子時計を操作するタイミングが遅くなり、子時計に電流が流れ続けて無駄である。

そこで、分銅を助けてやる事とした。
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用途は違い、オーディオ機器のインシュレーター用に作った、真鍮無垢の円柱スパイクであったが、これが4つで380gあった。

これを、分銅の錘の上へ乗せた所、都合が良く力配分が良くなった。

僅か400g弱であるが、それでも力配分が分銅に倒れるだけで中途半端にゼンマイが巻かれる事はなくなった。


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久しぶりに出してみたが、幾分懐かしいもので、あの頃は楽しくやっていたと感じる。

今も十分楽しいが(笑)