A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

2024/06/27

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以前に修理で触ったテレフンケンのPAアンプ、結局壊れた部品はなくて、入出力の端子台の繋ぎ方の問題だけであって、異常な迄に高耐久な部品だな、驚異的だと思ったが、その回路もまた変わったもので、トランスの巻き方も普通とは違っていて、全てが“普通”ではない設計であって、その特性は素晴らしく良く、これが1940年以前の物であるのか疑問な程に完成していた。

 

それで、その回路がどの様に働くのか、大凡の検討はつくが、実際には実験した事は無かった。

今日は暇ができた訳ではなかったが、部材が全て揃っていたから、簡易ながら実験してみたのである。

 

特に大きなコンデンサを必要とはせず、抵抗器が主であって、配線材もあまり必要とせず、抵抗器で配線する様なデザインで組める。

合理的なデザインである。

オリジナルは細長いシャーシで、配線材は1つに束ねられている様な構造だった。

 

出て来た音は低域が豊か。いや、豊か過ぎる程に出ている。

しかしながら、嫌いじゃ無い。この位出てくれると嬉しいと言った具合。

逆さに高域は目立つ事もなく、暫し暗いかと思う程であったが、暫く色々なソースを聞くと、出ていない事もないし、お爺ちゃんが大凡好きな、カンカン ギャンギャンした音もしなくて、大変に聞き易い質感。

古いユニットを鳴らすと、暗さを補正してくれるかも知れないと思った。

これを測定にかけると、低域が上がって、ハイ落ちが僅かしていると想像していたが…。

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実際には驚く程揃っていて、気味が悪い程であるが、オリジナルのアンプもやはりこれと同じく、綺麗に揃っていた。

これ程に一直線になるのを拝見する機会はそんなに多くないが、まさか21LU8で、回路を変えただけで、こんなにも改善が起こるものなのかと、恐ろしくなった。

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回路には、オーバーオールで1k:100kのNFBが掛かっていて、その量は殆ど聞いて変化が僅かの程で、多くを帰還していない事はあからさま。

外しても音に変化は感じられなく、測定してみても殆ど変化はない。

言ってしまえば、NFは無くても問題なく、極めてフラットが得られるなんていうアンプは、現行のアンプで存在するのだろうか。

その位、NFBは重要な物になっているし、NFの有無で音がコロコロ変化を起こす物は普通一般多い。

 

それに対して、この回路は安定性が抜群に良いのか、コロコロと表情を変えない。

“これが安定性の良いセット”と呼ぶのに相応しい代物なのかも知れない。

オリジナルの電源は正直あまり良いとも思えない構成で、一番安上がりな方式に見受けられるが、全段がフルバランスの様に動作し、打ち消しによって電源がフラフラとするのを阻止している事で、ヤワそうな構成でも十分に様になるのではなかろうか。

オリジナルは少しハムは出ていたが、出て来る力量感は凄まじく良かった。ケミカルを一切使わない音である。

電源を暫し凝ってみれば、恐らくより安定性は向上するはずであるが、現状で既に動作の安定性は良好であるから、これ以上は望めない可能性もある。

テレフンケンもこれ以上を実験しなかった訳がない筈である。

ここ迄の代物を作るのならば。

ハムはそれで言うと残した方が良い。というのはWEも同じく完全に消さない方が良いという考えの可能性が高い。

 

 

それで、こんなにも恐ろしく凄い方式だとも知らずにいたが、これは1台は完成品を持っていたいし、どうやらこの構造のミソを理解したのならば、大凡の球で応用が効くから、寝かしていたテレフンケンの球は、このデザインで作った方が良さそうだ。

勿論、21LU8はカラーテレビ向けに作られた複合管であるが、それをも真っ当にしてくれる回路なのであるから、これも1つ完成した形にしてみよう。

とにかく、コストを莫大に掛けなくとも良い、合理的な構造で質が大変に良いと。大変に有難い。

普通で作るならば、少しコストを乗せて、テレフンケン方式をとった方が余程良い物になるだろう。

 

では逆に思うのが、今迄の所謂の普通繋ぎでは、何故特性が悪化するのかである。

カップリングにケミカルCを多量に使うから?

グランドを中心としているから?

上下のインピーダンスが合わないから?

色々考えると思う節はあるが、一番は動作が不安定なのだと思われる。

表情がコロコロ変わった方がマニアには面白いかも知れないが、それは安定性の悪い構造しているからであろうと考えられる。