A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

上手くないアンプの改修

お客さん談。左右の12AT7を入れ替えてみたら音が歪んだという。

戻しても左右の音量が合わなくなった。

売り手に聞くと、調整云々を言われたそうだが、回路図も無ければ、調整手順書も何も無い。

プロとは思えないという事であった。信頼性に欠けていると見切って、当方へ連絡が来た次第で有る。

特にネットオークションへ新作を出す様なプロ(?)は、音よりも売る事が重要な可能性は否定できない。言われると確かにそうかも。と思う節は多々ある。

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5級スーパーかのラジオを昔組んだ事があるのかなとは思うが、あまり良い具合では全体にない。

テレビは組み立てた事はなさそうだ。

回路はプロは手を出したがらなそうな小難しい様式。

マチュア程変わった回路に手を出したがる(笑)

私も他の様式ではあるが、やってみたくなってやった事は幾度もあるが、最終的に求められる問題点は安定性と思う。

其れ也の調整が必要な物であれば説明書きが無くては他人には渡せないものである。

そういう意味では、マランツ2は感覚的に調整が出来て、且つ便利にメーター迄付いているから、それは親切な設計であると考える。

そうでもない限りは、そういった調整の必要な物を他人に売る用途で作る物でないとも言えそうである。

触るのが好きで、毎度調整したいという他人はまた別格であるが、一般的には、そういった事は難しい事なのだと思うのが良いのだろう。

同時に調整のいる品物が、調整不良であっても壊れない設計でなくてもならない。

問題の無い範囲での調整という枠を設けるのも、またコストが食うもので、安上がりには絶対に無理。

安上がりにするならば、やはり安定の良い、無調整の一択であろう。
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ノイズは自体は10mV -40dBレンジで-60dBにハムがあるから、相当静か。

異常な迄の電解コンデンサが入っているからであろう。
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低域が少し落ちているが、殆どフラット。

聞いた感じの音(出るch)は、低域はF特に反して、ブーストした様なドンドコ、高域はモコモコと、HiFi感は薄く、かなり良く歪む。

片chは音が出なかった。無理やり出してもかなり歪んでいる。
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3.5Hのチョークが入っているが、440μと220μのコンデンサで平滑。
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面白い事にシリースに47Ωが入っているから、インピーダンスは更に上昇。

電源インピーダンスは高そうである。

その割に低域がドンドコしているから不思議な具合である。

出力が得られないのはインピーダンスの為か、過大なフィードバックの為なのか分からない。

普通、低域という音は、電力を食ってスピーカーを押し出す為に、電源インピーダンスが高いと、この押しが甘くなるもので、要はパワーがありそうな見た目で、実際は見た目だけ大きいだけで、中身がスカで押せなかったという具合である。

であるから、 なるべくこのインピーダンスの低い方が好しく、低い物というと、電池がそれに該当する。

マランツのアンプで、充電して…という製品があったが、それは電源のノイズが無い利点と、インピーダンスの低さに注目した物と言えるであろう。

車用のアンプも、インバータなりで昇圧しない類の、バッテリーで直に駆動する様なものは、バッテリーのインピーダンスに依存するが、相当に低いから、かなりの出力で、溶接ができる様な電流、すなわちインピーダンスの低い意味になる。

インピーダンスが高い場合は溶接は出来ない。

“電圧は高いが、電流は流れない”に同じである。

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回路を起こすとこうである。

なかなか変わった回路である。

FET側に初段の電流は流れ、信号はPGKでかなり大きなフィードバックが起きている様である。

然し乍ら、カップリングが無いとはいえ、カソードへ大きな容量のデカップリングが入っているから、そこへは信号が通っている事になる。

直結と言えども、結局、陽極側へコンデンサが無いだけで、陰極側へはコンデンサがある。

それを無視して直結であると言って良いのかよく分からない。


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解体は簡単で、引っ張ると大体取れる。

ハンダを少し当ててやっても、バラバラとなるから、ある意味で有難い作りである。

フィラメントの配線は撚ってある場所もあれば、ノイズの元になるやり方もしているし、全く統一感はない。

やりたい放題である。
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然し困った。

部品もバラバラであるが、ナットも緩く、これがアース兼用であるから、緩んでいては接触が悪い云々の話のレベルではない。

全く不具合だらけの工作である。

良く音が出ていて、輸送にも耐えたな…と思ってしまう。
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解体をしていると有り得ない書き込みを見つける。

黄紫金だから、47Ωである。

しかし、5Kと書かれているのである。

いやまて。桁が大きく違う(ーー;)

良く音が出たなぁ…ある意味凄過ぎる。

プロフェッショナルとは何なのか疑問である。

マチュア工作のプロフェッショナルなのであれば許されるのかな?

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音の傾向は分かったから、一旦解体、回路は安定の良いものを書き出し、組み直し。

予算がコスト的にかなりキツイから、使い回せる物は使い回した。

球は其の儘で回路変更だけ。
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赤と黒はRLであるが、左右が反転している事に気付いた。色も表記も合っているが、配線が逆なのである(°_°)

青い鳥でも、同じ症状だという方が居たから、これは製作者の癖らしい。

どういうテストをしているのか疑問。

試験なんてしていない価格ですか?(爆)
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組み上げ、試聴。

先程とは逆に明るくなった。気持ちの良い高域。

スッキリしている。

低域はドンドコしていないから、下がっているだろうと推測。

F特を見ると聞いた印象通りで安心してしまう(^^;;

これだと、お客さんの御意向(元の音が良い感じに思う)に反するから、オーバーオールのNFで低域は出す様にする。

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高域の僅かの撫で肩は解消したが、低域はまだ。

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オリジナルと比較すると大凡合ってはいるが、あのズンズン、モコモコ感は薄い。

もうちょっとオリジナルに寄せる為に、旨味エキスを加えておいた。

僅かの事であるが、非常に聞き易くなる。特性に大きな変化は起こさない。ナローにもならない。

我ながら万人受けし易い時定数を見つけたのである(笑)