Dr. Dietz & Ritter の製品であるが、KoetingへOEMで提供した品物だとか。
AD1のパラプッシュで、筐体はかなりデカい。
デカいトランスはテレフンケンに似た物で、2セクション巻きしてある。
これはUltra High-Fiderityな音がしそうな予感である。
回路を追うとB+のデカップリングが足らない。
回路全体に、プレートから出た信号の帰り道が遠過ぎるし、全段が混ざって良い状態ではない。
ボケたスッキリしない音が出ていたと思う。
47μFが3つあるが、平滑に2つ、1つはフィラメントの片側をデカップリングしている様である。
ハムバランサーが入っているが、片側をACカップリングさせる事になるから、ハムバランサの意味がない。
平滑はチョーク入力になっていて、初段側にもチョークが入っている。
元図という元図は無いが、近い物を参照すると、コンデンサ入力であるし、やはり思った様にデカップリングが足りない。
2セクション巻のOPTの隣を調べると、整流用のフィラメントトランスだった。
これは後付け。絶縁紙も構造も新しい。古臭く黒く塗ってあるが、騙されない。
何より線がゴムシースである。新しい。
それで、何が気に入らないかと言えば、OPTの真横に、電磁シールド無しで並べるナンセンスな配置。
ハムバランサーを各1本1本に付けた所で、OPTに直接的にリーケージフラックスが回り込むから、絶対に消える事がないという事である。
無意味な状態を改善するに、そのまた隣の大きいチョークと場所を入れ替えて、OPT-チョーク-フィラメント電源 として、チョークでリーケージを少し防ぐか考えたが、カバーの関係とで上手く行かない様であるからやめた。
主の電源トランスはノグチのものに交換してあるし、博物館行きになる価値は完全に失われている。
色々と手を加えて、何とか鳴る様にした努力は伝わって来る。
一旦バラして、整理と回路を追って、問題のあるやり方は修正、修理に手を抜いて部品を外し取って其の儘の部分は元へ戻す。
この初段の部分は囲いがある。
部品が古い儘で、この段を飛ばしで使う事も出来るから、球を抜いて使っていたのであろうと推測。
LITMAR と読めるコンデンサはオーストラリア製。
それに100μFある。
この当時に100μFは相当大容量に思うが、これは当時ものなのか?
交換しているとしても…50年は昔の様にも思えるが、絶縁材もハンダも、当時の様な雰囲気がある。
MCトランスか何かかと思っていたが、後で調べて分かったが、この機体は単なる低周波増幅器ではなく、レシーバー付なのである。
この白い樹脂ボビンのトランスは、アンテナコイルでもあって発振コイルでもある。
全体に樹脂部品が多くて、本当に古い物なのか、かなり疑問ではあるが、当時の欧州は、我が國の様なチャチな素材を使っていた頃には既に、現代的な今でも普通一般に使われている素材を製造する技術があったのかも分からない。
だとすれば、今の技術は特段新しい物という程、新しい物ではない可能性も思う。
そう思うと、かなり遅れていた。というのも頷ける。
これは発振を止めると低周波入力で、発振させるとラジオ受信機なのである。
もっと早い段階で、ツマミの表記を調べるべきであった(^ω^;;)
4番はラジオである。
3番はハイゲイン、2、1番は1段飛ばし。ローゲイン。
組み立て問題ない事を確認して通電。
驚くほど低域が豊かで、文句なし。
間違えなく当時も文句なしの性能だった事と思うが、スピーカー自体がこのアンプに対して追い付いていた物が対になっていたのかは不明であるが、Excelloが合わせてあったと思う。
特性はNFB無しでまずまず綺麗なものだが、10kcから落ちて来ているから、Very High-Fiderityである。
最低は20c/s迄出ているし、かなり凄い。
このOPTの巻き方が凄いという事なのだろう。
ハムは若干残っているが、かなり小さいから範囲とした。これはどうにも消せないし、通電直後から鳴る。
フィラメントトランスのリーケージをOPTが受けている。