A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

2024/03/04

テストテープもとりあえず出てきたし、預かった東通工のラジカセを見てみる。

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ヘッドを初っ端に確認したら、エェエー(°_°)驚き桃の木。
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どういう…何をしたんだ…。絶句。

粗いペーパーで段差を取った後にピカールで磨いたのか知らないが、傷だらけ。

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こんなにもギザギザになったヘッドは見た事無かったが、これは危険なニオイしかない。

テープが寧ろ傷付いてしまうのではなかろうかと思う様なヘアラインなヘッドである。

研磨剤らしき白いコンパウンドも横に残っているし、不細工に見受けられる。職人らしからぬ。

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ヘッドは単なる金属の塊に見えるかも知れないが、中央部に数十μの隙間が開いていて、これをギャップと言うが、そのギャップの中央に磁力が強まる様な具合になっていて、これが広いと高音が出なくなる。上の挿絵の赤の矢印がそのギャップ。筋が見える。これは別の手持ちのヘッドより。

 

くっ付き過ぎると今度は隙間に発生する磁気を得る部分がなくなって、コアで一周してしまう為に音が小さくなるし、高音がやはり出ない。

このヘッドは頭と言うだけあって肝心要な場所であるから、大切にしないとならない。

昔のYブログで、私がヘッドは段ちになったら研磨すれば良い。と書いて、それを実践する人があの時も多かった覚えがあるが、絶対にペーパーじゃ粗過ぎる。と釘を刺した覚えがある。

あまりシビアな技術的な細かい事(やり方)は書かない様にする。後の始末が面倒。メールで講習頼まれてもやらない。自己責任で研究して下さい。

 

当時、私はピカールかアクリル磨きのコンパウンドを使っていた記憶がある。

アクリル磨きは、金属には研磨能力が浅いが、それで良いのである。

あまりにも深く取って、ギャップを破壊していたのでは意味がない。
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そんなで、研磨剤を拭って高速研磨した。

すぐに鏡面には見た感じはなった。
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しかしながら、拡大して見ると、そのヘアラインは残っていて、かなり根が深く入ってしまっているのが分かったが、上っ面は綺麗に鏡面になったのは間違えないから、逆に突起している事はないから、これで試聴してみる。

傷取りに夢中になって、ギャップを壊すと話にならない。

ギャップは割りかし奥行き的に余裕が程々あるかと思うが、各社製造が違うから、斜にして寄せている様な設計であると、上っ面を幾らも研磨出来ない。ギャップ面が開く事になる。

それと、ギャップの間に何を挟むかでも柔らかい、硬いで、開く可能性がある。

古いテレコの場合はハンダメッキした面が数十μになるから、それでギャップを取っていたりした物もある。

これは横からネジで締め付けだったが、強く締めたらより潰れるし…という様にシビアなものである。

触らない事をオススメする。

 

ヘッドは仕上げて消磁して試験してみる。

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速度が怪しいという話であったのだけれども、速度は定速出ていた。

1kcと3kcのテスト信号。
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アジマスを見てみると45°程ズレていた。
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調整してやる。

1kc
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3kc

少しフカフカと動くが、程々良い。


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機械から暫しの異音と巻き取り側のリールが変則的に回っている。

内部も手入れしてあるとの事であるが、観察させてもらう。

一部のトリマとスイッチ類を外した、或いは交換してあったが、ケミカルは交換されていなかった。

しかしながらまだ容量は抜けておらず、パンクも無いから、まだ使えると見たのであろう。

私もそう見た。
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一部のスイッチ類は外した痕跡があるが、接点は磨かなかったらしい。真っ黒で、私はとても気になる。
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ハンダも不細工で気になるから全て手直しした。


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機械部分はベルトには手が回る様に整備性を考えた設計になっているが、本体は壊れないという見立てらしく、簡単にはアクセス出来ない。

内板の内部に位置している。

基板の類は割と整備性が良いから、壊れる可能性を含んでいるのかも知れない。
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異音はテイクアップリールの空回りのプーリーか、リール台が鳴っている様である。

変則的に回るのは、アイドラの接触が完全ではないからであるが、このバネはオリジナルの様で、かなり軽いタッチ。

他に、自動停止機構との連結を、このテイクアップ側がやっているが、この辺りの具合が悪い。

一旦バラして組み直して、問題は解決したかに思われたが、組み戻して暫く使っていたら、再発してしまった。

自動停止も感度の良い時は正常運転をしているが、怪しくなっている時には自動停止がスムーズに行われないという事が分かってきた。

明日また様子見して原因を追求する。