A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

RCA ピックアップ

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トレースノイズ(ハイの)が大きくなったとの事で、見てもらえないかと預かった。

ダイヤモンドはそうそう痩せる訳でも無いし、研磨して、ダンパーの交換、ギャップ調整で戻るのではないかなと。

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見てみるとアームもだいぶお疲れの様で、ウェイトはテープでグルグル巻きで止まっているし、アーム支えもナットが緩んでガタガタ。

おまけに線は断線しているのが数本。

ただ、オリジナルは維持しているから、まだ良さそう。欠品となると厄介。
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ハンダは得意でなかったらしい。

外れるし濡れが足らない。

放送局で使っていたと考えると、何とも大らかな時代である。

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針先の状態確認。

チリ避けダンパーは腐って落ちている。

これは作り直し。
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イコライザダンパーも腐っていて、これが金属鳴きを加速させていた可能性が高い。
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分解ができない様に、磁気回路のネジ頭はサンダーで面一に落としてある。

コイルが見当たらないし、マグネチックではないらしい。P.Uの抵抗値は60mωしかない。

なるほど、これはリボン型のP.Uなのである。

まるでDecca London Ribbornの逆、音を拾うバージョンである。

構造的、使っている材質的には持っているDeccaのMarkVと大凡同じであるが、カンチレバーが其の儘リボンで、左右に分ける事でpp出力のカートリッジなのである。

まさかのDeccaの逆をRCAがやっていたとは。

思い返すとマイクロホンでもリボンをやっていたし、それの走りであるなと。

 

リアランスギャップが寄っていたから曲げ調整。
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針先磨き。腐ったダンパークッションを削り取る。

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針先研磨
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針先は音溝と擦れるから、この温度は結構なもので、熱くなる。

熱くなるという事は、金属加工をやっていると分かるが、ドリルと焼き付きなんて事が起きる。

そこで焼き付き防止に切削油をくれてやる訳であるが、録音盤に切削油はくれないから、針先へ音溝から出た屑が焼きつく事はある。


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残ったチリ避けダンパーは生ゴムと思われる。

厚みがあっても動きが良くないと、損失になる。

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薄く柔らかい、具合良い素材を探して貼り合わせた。

これでカンチレバーの鳴きがどの位減るのか実験してみる。