A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

chelsea 故障原因探る

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前回は…何時だったかな。

テンプの受け石は交換してもらって、具合良く動いている。

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大変に丈夫で高級な設計ではあるが、少々問題を抱えている。

それは正常動作中には現れない。

ゼンマイが緩んで来ると、それは起きる。

今回は原因を探って改善するか検討してみる。
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ゼンマイが緩んで来て、ある時になると、運針が止まり、時間を合わせようと手で回すと、回らない程硬くなる。

それでも無理に回すと、時報位置が5分10分進んだ位置にズレてしまう。

この事から、本剣車とカマの噛み合いを疑ってみた。(上図)

 

鳴り数が変なのはゼンマイが巻かれていなかったからだったが、位置はズレていた。

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カマと同期し、4番車のピンと関わる事になる。

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カマ上げは、同時に一時停止の役割を4番車で行っている。

この時、時報が中途半端な位置で停止したとして、カマ上げの位置関係を考えると、4番ピンがカマ上げの真上より、少し掛かった位置で止まるとすると、カマはピンが邪魔をして上がらなくなる。

これを実際にやってみると、本剣車に対してカマ側が板であるから、潜り込む形で完全には固着は起こさなかった。

重くはなるが、やはりズレるに迄至らない。

潜り込まなかったらどうなるのか、板を逃げない位置に補助して回すと、時報はズレた。

 

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しかしながら、今回の症状は、同じく時報ズレではあるが、不思議な事に、半時のレリーズピンとズレていなかったのである。

従って、本剣車とカマが引っ掛かって、本剣車の爪が無理やり回ってズレたのではないという事である。

要は、本剣車自体が固着し、指針がズレたのである。

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そうなると、本剣車が何か中途半端な仕事中に引っ掛かる部分があるという事になるから、これを探ると、起きる時の法則がある事に気付く。
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ゼンマイが緩み、動作が不安定で止まった時が、決まって、4:25、8:25、12:25、この位置で症状が現る。

この時計はShip‘s Bell.である。従って、4時間毎で最大8回鳴る。

4:25というのは、8回鳴ったあとで、次の1回に戻る時である。

通常、数取レリーズは鳴り終えると数取車から離れるから干渉しない。

然し乍ら、これが運も悪く、数取レリーズのピンもレリーズに干渉した位置にあって止まっていると、レリーズは大きな壁に当たる事になる。

ピンに干渉していない場合は、レリーズは無理やりながら、上へ持ち上がる事が分かった。

しかしレリーズはピンで止まって動かない、壁を乗り越えられない、この時に本剣車自体の固着が発生する。

これは我が国の精工舎辺りでは、乗り上げの可能性を考えて、逃げられる様に爪がバネになっている。

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これは真鍮の普通よりか厚い板だから逃げがない。

しかもテーパーも取られていないから、逃げがない。チェルシーは完全に想定外の症状と思われるが、これは薄々売った後かは分からないが、気付いていたのではないかと推測。

修理代で儲けるタイプかは分からないが。

もしくは、毎回止まったら、ゼンマイを巻いてから、分針を逆転させて鐘を鳴らしてから時間合わせをせよ。と説明している可能性もなくも無いのかなと思う。当時の説明書が無いから、何とも分からない。

長持ちの秘訣は止めない事である。

 

これが初期型とすれば、この後のモデルはおそらく改良が入っていると思われる。

 

 

これにて上がり。

オリジナルに手を加えて価値を下げる可能性も無くはないから、改善処置はしていないです。