昭和10年代であろうか。樹脂製品が珍しかった頃の代物と考えられる。
振り子窓の部分はアールの付いた形状で黄色くなっていない所からするとセルロイドではなさそうで、触った感じもセルロイドでない様な雰囲気である。
恐らく、透明を保っている所を推測するにポリスチレンではないかな。生姜汁を塗った時に細かく白くヒビが入ったらポリスチレンという事になる。
文字盤、振り子共に琺瑯でも七宝焼きでもなく、樹脂を流し入れたものらしい。
キズの入り難くい新しい素材としての売り文句だったかは分からないが、この頃は精工舎も同様に琺瑯ではない樹脂製の文字盤を用いた物を作っている。
これの少し前にドイツ、ユンハンスのデザインや機械を模したタイプの物を精工舎が作っていたが、それは琺瑯であったが、後期は樹脂製もある様だ。黄ばんでいる所かすると、セルロイドかな。
その後の黄ばまないタイプの樹脂がこれに当たるであろう。
第二次大戦が近くなると、ガラスを使った振り子や焼き物の振り子が出現する。
戦後のOccupiedJapan時代も、明治時計は焼き物の振り子を使った物を一時期作っていて、裏には英文の説明書きが貼られている。これはかなり希少な部類である。そうそう出回らない。
OH依頼品の機械はアンソニア型の古い様式であるが、棒鈴という珍しい組み合わせでチンチャン鳴りである。
戦後の代物の様な気もするが、それにしては機械が古い。
使い回しをしていたのか分からないが、欧州では古くから棒鈴もあるし、ビンバン打ちもよくある。
欧州では複数和音でビンバンが多いけど、日本では単音でチンチャンが多い。
昭和30年代の明治時計が和音の高級型ビンバンを作っていた時があるが、それよりもこれは前だと思われる。
重めの油なのか分からないが、真鍮の摩耗が大きく地板をかなり抉ってしまっている。
精度不良にもなるだろうし、止まる原因でもあるが、これは少々摩耗が激しい。
かなりガタになっていて、タガネで叩ける域を超えた可能性がある。
というのも、見ると既にポンチで叩いてあって丸で押しているから、かなり薄くなっている部分とそうでない部分とで入れ歯をするかしないと早く摩耗が起きそうだが、どうだろう。
とりあえずタガネで叩いて矯正してみる。
逆さ付けだからなんとも変な感じ。
欧州の時計で良くあるスタイルであるが、この機械で逆さは初めてである。
面の引きが粗いのか分からないが、結構逝っちゃってる。
とりあえず洗う。
真鍮の屑が目に見えるレベル。
マズイなぁ(ーー;)
魚印高級ゼンマイが入っていた。交換したのか当時の標準搭載品だったのか分からないが、結構有名どころである。
手入れしているらしく綺麗だった。状態も良い。
検査するとどうもアロンアルファ使ったなこりゃ。
薄く白く膜張っているし、垂れた跡がバリバリ剥がれて。
アロンアルファが研磨剤の役目果たしていたかな。
少しタガネで叩いてみたが、位置を戻すのは難しく、ポンチで叩いた部分に迄摩耗して広がっていたから、次回不具合が出た時にはもっと広がるだろうから、その時に入れ歯をするか検討すれば良いだろう。
組み立て動作を確認したが問題ない様子。
試運転。