A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

じゃどう。

技術担当で出社した時の話。

RE604の回路でハイが出ないから、どうしたら良いかとお客さんに問われ、回路を見せてもらう。

RE604は古い球なのにグリッドリークが200k台と小さいのが入っていて、もっとゆったりとさせる様に、1Mを入れる事を勧めた。

カップリングもクランフィルム、シーメンスの回路を参考にすれば、5000pfが適当で、当時の回路がこの様に成り立っているから、これが良い選択であったのであろう事は想像できる。

クランフィルムの回路を見るとWEの様にグリッドにデカップリングが入っていて、更にRgは1Mかと思いきや、アースには行っておらず、100k、1.1k、85Ωを通ってアースしてある。

これはB電源の電流で発生するドロップ電圧を-Cとして使おうというもので結構凝った作りで実に面白いと思う。

604があれば、作ってみたいとは思うが、まぁ機会は無いであろうが。

 

そこへお客さんとして店へ来た第三者、アンプビルダーが入って来て、回路を見るなり、-CをBから取ろうなんてのは邪道。という。

もっぱら1MなんていうRgは大き過ぎてグリッドが暴れて、電流が流れ過ぎて球が壊れると言い出した。

全く理解の無い方だ。

これ以上は話にならない上に終業近かったから、上がりますから。と席を立った。

名の知れた方が、ネットか雑誌かでそれを書かれて、温故知新のカケラもない事を勧めると、幾ら良い球も、ただ繋いだだけのノウハウもないセットに組まれてしまう。そういう事だ。

 

回路にはクランフィルム/シーメンスの明記はなかったが、“邪道な回路”と言われてしまったのには、呆れて笑ってしまう。

RCAもアンペックスもウェスタンも、その方からすれば、邪道な回路でろうな(笑)

球も作っていたシーメンスは、回路も邪道であるから、邪道な球を作っていたに決まってる!

そんな球は使わない方が良い!邪道な音がするぞ!

数十万もするシーメンスのアンプは邪道だ!邪道な物は1円だって買わない方が良い!

邪道と言い出す理解もない何も分かってもいない者を鼻で笑える、良さが分かる人に是非手にしてもらいたい!

 

§ 

 

少しの豆知識。

Bのドロップで-Cを得ていると前節で触れたが、グリッドが暴れて電流が増えるという事は、Bのドロップ抵抗の両端電圧はどうなると思いますか。

電流が増えたら、電圧も同じく上昇するのです。

従って-Cは深く掛かる事となり、電流が流れようとすると、バイアスは深くなり、電流を流すのを阻止するのです。

所謂天秤、シーソーの様に働きます。

過剰に電流が流れて簡単に壊れる様なセットをシーメンスが作って売っていたと思いますか。

これの何処が邪道なのでしょうか。

Z級で使わなくてはならない大型送信管じゃないのですRE604は。