医院にある時計の修理、オーバーホールを。
医院自体が年季物で、戦後の昭和なカオリであります。
ケースは大きく重く、運ぶのが大変なので、機械だけ預かりました。
大きい筐体だけど、機械は1週間巻きのスタンダード。
この構造だと、国産だと昭和28年辺りと推測。
ドイツ製だともっと古くからある。1920年代には時報合わせが自動化した、この様式があったはず。
症状は、長針のナット欠品、アンクルの支えカシメ不良。
機械も汚れているから、バラす。
ゼンマイに止め輪を掛けて、ゼンマイ戻しで解放させる。
この機械はコスト削減と精度向上を両立させた、欧州的な機械構造である。
しかしながら、結局何時迄も香箱入りにはならず、一時期ユンハンスを模した様なのを作っただけで終わった。
コスト的な面を考えれば、追い巻きが出来ない程度、気にならないという事だろうか。
ゼンマイは止め輪をして外したが、これを専用のジグに掛けて、止め輪を外す。
このジグはお手製(笑)
大概の時計屋は、ゼンマイを拭き掃除する事はないが、これをやらないと、大きな音を立てて広がったり、トルクが一定にならず、上手く運針しない事があるから、これはやらなくてはならない。
洗い油で古い油を拭ったら、グリースをウエスにとって、ゼンマイを引き出しながら塗っていく。
大体1週間巻きで、3m位は引っ張り出せる。
1ヶ月巻きとなると、これまた長く、引き出して行くと、途中で丸まろうとして、大変な作業である。
1発目で、これだけ汚れになってしまう(^^;;
結構、洗浄だけでもコストを食う。
超音波洗浄機でも良いのだが、高い割に落ちない(^^;; ので、手洗い。
乾燥させて、部品確認、組み立てる。
カシメ不良は、ポンチし直し修繕する。
機械は逆さ組みをする様式。
慣れが来ないと、素人には難しい組み立てである。
大方組み終わり。
この時、ゼンマイを少し巻いて動作しなければ、何か負荷が大きい事になる。
スムースに動かなければ、再度バラして原因追求。
ボンボンの噛み合わせは、独特であるから、調整してやり、給油をしてとりあえず完成。
長針のナットは、M2のナットで代用。
SEIKOの指針ナットのストックは有ったような気がしたが、ガラ箱を見ても見つけられなかった。
この機械は標準のだから、完全停止しない式のアンクル。
故に、置いておくと、自然と竿を振って動き出す。
本当は、蹴り出しは中央で行われる方が、トルクが変わっても、勢いの大きさは抑制されるから、精度に大きく現れないが、行き帰りで、常に蹴り出ししている力任せなアメリカン スタイルは、ゼンマイの巻き始めと終わりで、時間が狂い易い。
これは振り子長が1mはあるから、長期に渡って安定性は高い。
さて、様子見して 良しとしたら、取り付けへ向かう事とする。
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復帰。
ボンボンのハンマーが強過ぎて、多重打ちを起こしたから、棒バネを調整してやる。
振り子を掛けてゼロバランスをとってやり、機械バランスを調整してやる。
これにて終了。
子供がイタズラすると看護婦さんが言っていたから、壊されなきゃ良いのだが(^ω^;;)
心配である。
下方の留め具が無い旧式で、ゼロ調整が何かの拍子にズレるから、コースレットを2本打たせてもらった。
アンバランスになる事はないから、バランス崩れで止まる事はないだろう。
振り幅を少しの時間観察してみたが、ゼンマイが緩くても、元気良いので良好。
仕上げにゼンマイを巻いてやり完了。