5U4が閃光したとの事で預かり。
ヒューズが黒く飛んでいるから、割と盛大に過電流が流れたのであろうなと。
5U4が閃光したともなると、その原因はBの整流よりも後が壊れたと考えて良い。
もしB以外が壊れてブローするならば、整流管が閃光する事はない。
本体検査。
見れば見るほど、どうやら国内で修理手直ししている様子である。
というのも、部品の調達先が見える様であったからである。
もしかすると私が仕入れた物を買ってくれている気配すらする(笑)
まぁそれは良い。
そうなると、球が不良でショートを起こしているのか?
頑丈な5U4がレアショート?
可能性はゼロではないから、試験をしたが問題ない。
ただ暫し片側のエミッションがやや疲れて来てはいたが、これが直ぐ様問題になる様な状態ではない。
特にAFで楽しみで使う分には、問題にはならない。後は気分次第であるが、これが業務使用となって来たり、RFでの場合は効率が変わってくるから、そもそも時間で交換するのが基本ではあるが、商売で使わない限りはやはり問題とは思えない。
他、807もドライブも初段も試験したが、ややgmが低いが、不良のラインではないから問題ない。
ショートもガス試験もやはり同じく問題なく、叩き試験でも合格。
球が不良ではないから、やはり問題は本体にあるらしい。
てっきり古いケミカルが其の儘になっているものと思った故障症状だったが、手入れしてあるとなると、初期(?)不良かも知れない。
アメリカ、メキシコ製は割と初期不良がある。使わなくとも、製造から寝かしているとやはり不良になる。
そういう事を言うと、この前お客さんがRiFAは不良率高いと言っていて、使っている物は大丈夫かと訊ねられ、特に問題はないと答えたが、フィルムコンが爆裂したそうであり、JJのケミカルもすぐパンクしたらしい。
JJも使っているが、やはりまだパンクした経験はない…
申し訳ないが、定格を守って作っているのか、暫し疑問に思ってしまった。
シリコンであれば、通電直後から動作を始め、直熱の球も、珍しい物を除いて2秒で立ち上がってくるから、無負荷運転で定格をオーバーしていないか、一回検討した方が良いであろう。
動作時が例え定格ギリギリであって良くても、通電直後は30秒程オーバーしている可能性は十分考えられる。
昔はギターアンプを作っていたが、今はオーディオアンプを作っていた割と有名なメーカーでも、これを守っていなくて、修理してもパンクするという代物が存在する。
フィラメントの時間管理など気にする事はない…とエンドユーザは思いがちであるが、作る側としては割と重要な部分ではある。
それで大きく部品選びが変わるからである。
まぁまぁ、それは置いといて、別電源を供給して、無負荷時に高圧を印加して漏れがあるのか試験する。
ドロッパーの抵抗があるから、徐々に電流は増えたが、充電に掛かる電流は落ち着いている。
ACは整流前で440Vあるから、一時500Vを超えてくるのは間違えない。
徐々に電圧を上げて各所の電圧に対しての定格をオーバーしないか見たが問題ない。一先ず大丈夫。
Cの容量(電着)は問題ないから、5U4は挿さずに、其の儘別電源から供給しながら、フィラメントだけ点火してみる。
動作自体に問題はなく、音が出た。
しかしながら、回路をよく見てみると、4段増幅の構成であるが、これを3段に切り離して使う回路になっているのである。
そうすると設計上、出力が逆相になるのである。
これはメーカーも想定していなかった改造であったと思う。
1段目のゲインは大凡20倍で、次段にボリュームコントロールを挟んで更に20倍にしている。
これはアルテックの構造に似た形式である。
更に、この使っていない段のコンデンサ也も交換してあって、球も挿さっていた。
その事から、この段が活きているのかすら不明で、部品交換をやった人が居るとすれば、それは知識が乏しいが、少しは出来るという人が手を付けた可能性が浮上してきた。これは危険だ。
増幅段の定格を守っているのか検査をしたが、容量を大きい物を選んだか、それか同じのに交換したかは分からないが、問題はなかった。
それで、その1段がある意味があってメーカーも作っているのであるから、これを元へ戻さないと本機の真っ当な動作とは言えないから、戻しておく。
しかしながら、ゲインが過剰で、1段抜きしたくなった。という事も十二分に理解出来る。
だが、1段抜くのは構造上ナンセンスである。
それだから、-26dBのL型固定ATTを設けて、1段目のゲインを殺しつつ、全段で動作している状態にしてやれば良いのである。
これで元と大凡同じゲインで使える様になって、正相出力になって、メーカーオリジナルに戻った訳である。
それで肝心の閃光する程の症状であるが、フォーミングをしたからか問題は今の所、入り切りしても再発はしない。
明日また動作電流を検査して挙動が変ではないか調べる。
電解液が不安定になる様であれば、新しいが交換する他ない。