A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

ELL80 初段だけでプッシュプルを構成する

pp、プッシュプル方式でアンバランス入力の場合、トランス受け乃至、反転トランスでない限り反転ドライブが必要で、初段、反転、終段の構成が普通一般。

バランス入力の場合は初段、終段共にペアとなる。

シングルであれば、初段、終段で2本で用が足りる。

複合の6BM8であれば、1本で用が済むという訳である。

6BM8をppにすると、初段とドライブが構成出来るから、2本で用が足りる。

 

今回のオーダーは、初段は双三極が1本に、プッシュプルが構成された終段のELL80の2本で、ステレオを頼まれたのである。

安く上げるのであれば、1本増やして初段、ドライブにした方が、アマチュアもお馴染みの一番簡易な構成であるが、シンプルに1本が良いという事である。

球数を減らすと安上がりかと言うと、この場合は逆だから難しいお題である。

ELL80を使ったセットの昔の回路を見ても、やはり反転に球を使った様式しか出てこない。

こうなるとドライブに双三極管を割いてしまうか、トランス反転にするかのどちらかでしかないが、初段は12AX7(同じ電氣特性の類似管)であるから、これで反転チョークを押すとすると、Imp Zは相当大きな物でなくてはX7が負ける。

細いのを沢山巻けば、MCトランスを作った事があれば分かるであろうが、電源のリーケージの影響も受けるし、簡単にも安くも上がらない。

予算の割に合わないから、これは実験して最後の砦として一番後回しに考えることにする。

次に、X7を反転ドライブに使うとすると、ゲインは1以下になるから、終段をフルスイングさせるには9V程は入れないとならないから、高出力ラインアンプが前置き必要になる。

昔(1930年代)であれば、それが一般的で、パワーアンプなる物は、結構大きい信号を入れないとならない物であり、ATTも付いていなかったし、バランス受けである場合もある。

現にBoschのラジオコンソールは、RF受信とコントロールユニットと、パワーアンプユニットの構成で、シャーシ別の2段になっていて、コントロールユニット側でバランス出力をして、パワーアンプへ送り出しをしている。

しかし、拡声器の流れで、パワーアンプが高感度になって、ATTが付いて、前置きが複合になった形態が主流になっている。

簡易拡声器からギターアンプパワーアンプは殆ど同じ括りと言っても良いであろう。

 

そうなると次にカソード反転チョークが思い浮かぶ。

GGのZ級の様な雰囲気であるが、終段のカソードへチョークを入れると、叩きつけたボールが跳ね返る要領で一方に信号が流れると、その勢いで跳ね返りがもう一方へ入る事になるから、自動的にppになる。

アンバランスをppに変換するに、一番簡単でありながら、電気的特性のバランスが難しいやり方であるが、これならば、グリッドチョークよりも多く巻く必要はないし、且つセルフバイアスにもなるから、効率が良い。

グリッドチョーク反転の場合は、8000T巻いたら、もう8000T巻く必要がある。

絶縁型であれば、8000T1次、2次が8000+8000Tになり、合計24000T巻くことになる。

カソードチョークの場合は、3000T巻いたらそれだけで良い。

ただし、細いのを沢山巻けば、容量ヘンリーも大きくなるが、DCRは上がるから、欲しいDCRになる様に巻き、且つ大きな容量が無いと、ワイドレンジにならない。

経験で10H以上は無いと低域の再生に問題がありスカになる。

Westernの10Dホーンの様な帯域で良ければ、これでも良いが、音声用、電話である。

SP盤よりもナローであろう。

音楽を聞いてもウッドベースととライアングルはステージの端か、裏方へ回る様なレベルである。

やはり音楽を楽しむ上ではワイドレンジであった方が良いのは言うまでもない。

 

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ごちゃごちゃ言っていても、やらないと結果が分からないから、カソードチョークを作ってみる。

0.12を巻いてやってみたが、DCRが上がり過ぎて、これではカットオフのB級になってしまい問題あり。振り出し。

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0.2を巻いてみたが、今度はコア一杯に巻いてもDCRが小さくA級も良いところ。電流が流れて良くない。振り出し。

探して、色々巻いてみたものの、具合が良いのが見つからなかった。

種類的にも合間の微妙なゲージ数の線が無かったから、フィールドスピーカーを1つ解体してみたら、0.15だったから、解いてこれを一杯一杯に巻いて188Ωだったから一番都合が良かった。

7H(100c/s 1V)だったから、少し小さいが、どんな帯域が出るか実験。

これがまた、なかなかワイド。低域はロクハン2発をブーブーやっているから、大分下迄伸びている。100c/s以下は分からないが、グリッドに触って50c/sが結構大きい音で出ているから、そんなに悪くないらしい。

ハイもシャリっと来ているが、キツくないから、上昇はしていない模様。ピークがあればOPTにCを挟んでハイ調整をすれば良い。

歪率も気になる音がしないで澄んでいるから、これは上等の結果であある。

1:4でiPhoneのOUTから最大で送ってスコブル爆音が出ているから、μ10程度の初段で十分らしい。8Ω1W以上は出ていそう。 

ただ若干目立つ中高域の雰囲気は欧州っぽい気もするが、チョークを入れているから、明るくなっているだけだろう。

ただ、単段で1:4の入力でやっているから、これをX7にすると帯域が狭くなるかも知れない。(ゲインが高い割に押せなければ。

ゲインを潰してでも無理やり押し込む世間一般スタイルでも歪率がどうだか分からない。

とりあえず、カソードチョークは具合が良いから、もう1個巻いて作っておく事にする。

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ELL80の各ユニットのプレートは半円で、傍からカソードがジワリ赤くなっているのが見えて面白い構造。