A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

ホゾ受け詰める。

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去年のOHから大凡10ヶ月でまた止まる様になったとの事。

しかし届いた時には動いていて、テンプの振りも音を聞くに問題ないバランスで振っている。

そうなると他に原因がありそうだ。

どんな具合か見るのに暫く様子見すると3日で止まった。

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工具と作業場を用意する都合上、6時間程止まったまま其の儘にしておいたのであるが、驚いた事に動き出しているではないか。

動き出してしまうと、何がどうなって止まっているのか分からないから、また止まるのを待った。

次に止まるのに、そう長期必要としなかったが、少しの振動でまた動き出す様な状態であった。

この様な具合だから、症状は摩耗で歯の噛み合わせが悪くなったと考えられる。

 

分解し機械を見ると、ホゾ周りの油が黒くなっていて、摩耗がやはり目立つ。

横から見ると2番車が右上がりに傾いているのが確認できる程である。

4番、5番車も同様にガタが確認出来たから、タガネで叩き、矯正する事にした。

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上からの所見。左にシャフトが寄っている事が分かる。

ゼンマイを戻してガタの具合を見ると、裏板の方にカナ車が来ている事もあってか、表板は摩耗がない。

力の掛かる、強い方の、回転の方向へ摩耗が進むという訳である。

相手方のホゾ受けは、次第にシャフトが斜めになってくるから、穴のガタが少ない場合は首吊り状態になり得る。斜めに摩耗が進むとも言える。
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力の掛かる向きとで、正常の位置を割り出し、その逆を叩いて詰める。

誤った方向を叩けば意味がない上、不良を助長するのは言うまでもない。

非常に重要な部分である。生かすか壊すかのレベルで超重要。難易度は高い。

失敗しても修正は出来る。しかしその修正もそれ以上の技術力が必要なのは言うまでもない。

要は技術があれば失敗はない。

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はたき台に塗装で青く錆防止にも塗ってあるが、出来れば塗装はせずに無垢で研磨されていた方が良い。

塗装は柔らかいから叩くと跡がつく事がある。

暇を見て上っ面を研磨に出したい。

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叩いては歯車を合わせて、具合を見ながら調整。

キツくなったらリーマーで仕上げて完成である。

ガタがなくスムーズに回り、且つ垂直を得られているかを確認する。

油は摩耗を遅らす為のものであって、潤滑させる用途であっては良い状態ではない。

油が無くても動かなくてはならない。
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ゼンマイは少し巻いて試運転。

低トルクで安定して動作すれば巻き上げた時も具合良い。