A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

半導体は真空管よりも古い

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半導体真空管よりも古い。従って真空管は新しい物である。

先日お客さんが来た時に、フィールドスピーカーの整流素子が亜酸化銅整流器で、真空管よりも新しい物だと言うものだから、それは逆さだと言うと驚かれていたが、酸化銅整流器やセレン整流器の歴史は真空管よりも古くて、19世紀に迄遡る。

真空管自体の研究は19世紀末に行われるが、実用的な形になったのは20世紀に入ってからで、其れ迄は、セレン整流器か酸化銅整流器が1920年代迄は主な整流器として使われていた。

次第に大電流の取れる真空管に移り変わり、2次電池の充電にはタンガーバルブ 、工場では水銀整流管や制御が出来る水銀入り3極管、サイラトロンが用いられた。当時は小型化に真空管が用いられたという事もある。

 

そもそも真空管以外では増幅作用が無いのかと言えば、そうではない。

カーボンマイクロホンとホーンスピーカーと電池をシリースに繋いで、マイクとスピーカーを近付けると発振が起こる。

これは増幅度が1以上ある為に正帰還発振が起こるのであるが、球の様に増幅器らしい増幅器は無いが、拡声器としては成り立つ。(ホーンスピーカーのラッパを外した形が電話である)

増幅度のある3極管が出来る以前は、こんな様に大きなラッパで増幅度を稼いでいたワケであり、アコースティックの蓄音器は原型である。

 

蓄音器はフォノモーターをゼンマイから、交流電動機(エディカレントモーターが多分電動フォノモーターのなかでは一番古そう)になって、録音もアコースティックの吹き込みから、電気録音に移り変わり、再生の蓄音器も真空管を使った所謂、電気蓄音器が生産される。

当時はアコースティックと同じ程の音量だった様だが、売りとしては“音量が可変出来る”事が凄かった様子。

其れ迄は音量は可変出来ず(機械的に出来るのもある)ホーンに布を詰めたりして音量を下げる他なかったが、音がツマミ1つで絞れるという。

増幅器真空管式であるが、電源はバッテリーか、エリミネーターを使う方法が初っ端で、そのバッテリーの充電器はセレンか亜酸化銅整流器かタンガーバルブで、充電器を持っていない場合は、街に出てラジオ屋で充電をするという手間があった。

おそらく充電器の持ち合わせがなくて、充電をしに出向いていたという事は、電灯線が引き込まれておらず、フォノモーターはゼンマイ式のタイプで増幅器真空管式だったと考えられる。

電灯線が引かれていたら、エリミネーターを使っているであろう。

1920年代にはラジオ放送も始まるから、受信機の需要とで真空管の最盛期になって行く事になる。

その後に真空管の様に制御の出来る半導体素子であるトランジスタに移り変わる訳であるが、結局改良とで半導体が巻き返しを図ったという具合である。

 

今後、真空管も改良の道を見つける事が出来れば、再度また形は変われど(?)電子管の登場があるかも知れないし、ないかも知れない。

 

ただ、オーディオとは、HiFiとは何かをHiFiなど無い20世紀初頭にウェスタンは研究し尽くしているのは間違えなさそうだから、純然たるオーディオとしての進展は難しそうだ。

然し乍ら、その研究結果が継承されていない事も定かでノウハウの多くが失われている事も確かであろうが。

結局熟れに熟れた後は腐るだけなのかも知れないが。

どちらにしても、今は色々な物が腐り出している(?)様にも思えるから、新しい方向性を見つけないとならない時期なのかなと考えて。

かと言っても、新しい物なんて自分が生きている間に何か出てくるかな....出てこないんじゃないかな(^ω^;;)

過去の偉人が残した物を如何に上手く使うかしか私には出来なさそうである。