A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

2019/12/24

先日取引した時計が運悪く破損してしまい、戻って来た。

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破損した時刻を指して止まった機械。

どうやら深夜の仕分け作業で落下させた様だ。

角当てでガラスを割るのは防いだが、落下はどうにも対処出来ない。

運送屋担当責任者曰く、日本語も分からない外国人が仕分け作業をしているらしく、ワレモノシールとの区別を教育している程度で、かなり酷い仕事現場の様子。

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機械は本体から脱離していて、ダイアルの枠金を大きく変形させている。

ヤットコで掴んで元へ戻す。

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テンプは脱離、人で例えれば心臓が外れてしまった状態。

技術者の端くれとしては、殺されたも同然。

だが、ガタガタ言っても治るわけでもなく、前に進まなければならないから、出来る限りの蘇生を試みる。

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細かなガラス粉がかなり付いているから、一度洗って、大方落として、怪我しない程度にしてから、機械をバラす。
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1点づつ、歯車をハケで洗って点検をする。
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テンプは強い衝撃で天真が曲がっている。

大丈夫か大変に心配であったが、折れず元へ戻った。

一安心である。
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ヒゲを外してセンターが出て、尖っているか確認。

これが精度にも影響するし、動作にも影響があるから、念入りに調整。
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点で支えてヨレていないか確認し、蛇足で良く回るか確認、その後ヒゲを調整し、組み立てる。

テンプは外れたが、ヒゲは無事で何より。

これがグチャグチャになったら、作り直しである。
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上板へ組み込む。
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組み上げ、手で少しテンションを与えてやると動き出した。

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給油を済ませ、ゼンマイを軽く巻いて暫し動作を確認、問題なく機械修繕は完了した。

ボンボンも再調整して問題ない事を確認。

 

大切に使用する場合は、やはり3年に一度は手入れはした方が良い。

これは全般的な機械式に当てはまる。置き時計でも掛け時計でもである。

ちょっと給油をすると、何となく動いてしまうが、ホコリ等のチリが摩耗の原因になり、動かなくなった時には、時既に遅し、再起不可になる場合もある。修繕箇所が増えて高くつく場合もある。

給油を済ませているだけの事をオーバーホール(OH)とは言わないが、そうやって売っている輩は居るから買ってはいけない

 

腕時計の場合は、生活防水程度でもしてあれば、チリが混入する事は少ないから、3年でなくても大丈夫である。

生活防水の無い腕時計、懐中時計で、ロービートのアンティーク、ヴィンテージ品については、チリの混入がある可能性があるから、定期的に大丈夫かを時計屋に判断させた方が良い。

 

 

さて、後はガラス屋と本体の筐体のネジ穴が馬鹿になっているだろうから、詰め木をして修繕する事にする。

修繕費に関しては、運送屋持ちで、修繕が不可判断の場合は買い取りをするという事であった。

 

OH ¥8000-

部品修繕 ¥5000-

ガラス代 別途