A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

Dynaco pam-1

Dynaco Dynakit pam-1

モノーラルの単発フォノEQ付コントロールで、これを2台にDSC-1なるステレオコントローラーを組み合わせると、1台のステレオセットになる。

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修理依頼の内訳は、歪みっぽく、ボリュームを絞っても高音が出る、下がらない。

ボリューム中間ではハムが出るが、最大か最小ではハムが出ない。

 

大凡の推測で、コンデンサのDC漏れで増幅動作が不適切か、アース不良になっている箇所が出ている、ラウドネス回路かの組み間違え、Bのデカップリング不良。

思い付くのはそんな位。

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バラすのは暫し面倒で、球の交換の時も同じ要領でパネルからツマミを外してボリュームナットを外し、本体とを分離させて、ケースを開けて…手間食う仕様であるが、壊れないという現れかな。

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試聴してみると高域が漏れている。

インピーダンスが高い回線で起こり易い症状と思われる。
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歪み易さは確かにあってボリュームは上げられない。

球を確認すると12AX7/ECC83 Made In Japanの記載だけであるが、フォントと言い、頭に筋があるから事からするに、松下だろう。

それにしてもヒーターが随分と薄暗い。

ヒーターはセレン整流で倍電圧であるが、測ると実測8.2V。

こりゃ点火不良である。

カソードが活性化せずエミ減になっているかも知れない。

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西ドイツ製…10年のメーカー保証を数回回って来ているだろうから、容量が抜けていても不思議ではない。

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試しに交換してみたが、8.6Vに上がっただけだった。

セレンの内部抵抗が上昇しているのかも知れない。

暫しどうするか考える…

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テスト信号、330c/sを入れて、ボリュームを絞る、絞らない関係なく、歪んでいる事が判明。

歪んでいなければ、ポーと良い音がするが、明らかに歪んでいる、ファーの音がしている。

入力と違う音が出る様になってしまっては、オーディオアンプというよりは、エフェクターシンセサイザーである。

そもそもCD入力は過大入力で無理なのだろうか?

それにしてもインダクタンス負荷の時の歪み方みたいである。

おかしい。コイルは入っていないのだけどなぁ。

 

調べるとSpecialはAuxiliaryと同じでライン信号と思っていたが、フォノ段を通っていて、NFのEQを100kで戻すだけの仕様で、高感度入力端子だった。

これでは確かに歪む。

他のTape、TV、Radioはフォノ段を飛び越しているから正常動作をする。

 

ラックスもやっていた高抵抗で入力する方法にするが、高抵抗でf特が悪くなる可能性を考えて、瞬時切り替えで変化を調べたが、面白い事に逆に深みが増している様な、音に厚みが出ている様な雰囲気になった。中高域が豊かに鳴り易くなっているかな。ハイは僅か明るくなる傾向にある。

 

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ヒーターの低圧の問題はシリコンに変更。

9.9Vが出る様になった。コンデンサは元へ戻してみた。

定格12.6Vよりも20%減だから、まだ本当は良くないが、8Vよりかは動作が真っ当になるはずである。

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ROEコンデンサで様子見していたが、温まるから漏れがあるかな。

具合が悪そうだから再度交換、容量を大きくしてみた。

電圧は10.8Vでこっちの方がまだ良い。

そもそも、AC5.3Vの倍電圧だから、これ以上は上昇しないであろう。

 

ただヒーター電圧が上がったからと言って音量は大して変化はない様。

gm的には上がった筈であるが、聞いた感じでは然程変化は感じられないが、寝ボケ気味で歪っぽかった部分が幾分か晴れて、スッキリ立ち上がりが良くなったかも知れない。

NFのイコライザの場合は、特性を安定させる意味でも、効果があるから、大きく変化を起こさせない様にしている回路構成ではあると思う。

 

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前オーナーは多分、12AX7にはシールド被ってるものだ…と知っていたのだと思うが、元々シールドの無い構造に、シールドを被せると、それは逆にノイズのアンテナと同じで、全く意味が無いから、専ら無い方が良い程であるから、アース線を出して落とした。

これでシールドへ触ってもハムが出る事はなくなった。

元々無い設計だから、不要であろう事は思うが、まぁ良い軍用のシールドだから、上手く活用する事にした。

 

現状で問題なく使えるレベルになったから、次のユニットも同様に検査と手入れをする。