A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

Garrard RC80

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青い鳥の広告力は確かなもので。ただ全てに対応していると精神的に参る、もしくは野次が気になり出すと危険だからあまり深入りしない様に詮索せず大らかに、見ないのが一番気が楽。文句あるなら店にでも直接言いに来い。見えない所でコソコソやっているなと言った具合で随分楽しませてもらって、便所の落書きを好き放題にUPさせて頂いている。便所の落書きだから、信じるか信じないかはあなた次第(笑)

 

そんな冗談(?)はさておき、ガラードの80を見ていただけませんか。と連絡が来た。

昔の1モータの機械は、大凡壊れる要素が無いに等しく良く出来た設計であるから、修理を試み、人為的に壊してしまっているパターン、部品が割れるだとか、無理に動かして酷い磨耗でガタガタになっている、千切れているパターン…最悪の可能性を考えて、どんな症状か不安要素があったが、オートがそもそも効かないらしいから、機械の固着であろうなと。

これは時計と同じでOHしてやれば、回復すると見込んで引き受けた。

まぁ大体、他で匙投げられた様な状態でも、お願いしますと連絡が来れば、やってみましょう。と引き受けてしまうタチではある(^^;;

大抵、自分から、“やります。出来ます”は危険なニワカ職人の可能性が高い。

私の知っている限り、腕利職人は自分から仕事を取ってくる様な類ではない。

そんなで、なんでも難しい程、何故その症状なのか調べるのが楽しいもので。

作る側になった時にも、その経験が役に立つ場合もある。

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そうそう思い出した。

80は33 1/2、45rpmが出るが、ベルトリムなのである。

オリジナルは革のベルトだったか。

カチカチになって交換したのだと思うが、それも腐っている。

どうしようか、この小さいベルトを作るのはコスト食うから、専らSP専用で良ければ、これを省ける。

お客さんと相談して、78専用で良いと回答を得たから、これは清掃だけして静かに寝かしておく。

まぁまぁ、針圧も結構な重さがあるし、LPには結構酷であろうとも思う。
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RC100は裏返しにする機構があるが、それを考えると機械は空いている方かな…(^ω^;;)
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カシメ部分は外せないが、外して手入れせよ。という箇所は簡単に外せる様になっている。

英國の、手入れしながら自分のものにせよ。という風習の現れかも知れない。

ある意味、完全な物を供給しないとも言える(笑)

ドイツはそういう不完全な物を改良するのが得意であるから、より良くしてくるが、突然に合理的に走るから、チャチくなる。

時計もやはり同じ。
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回らない固定側のメインシャフトの部分は引きが粗い(笑)

この部分の固着が酷く、全く抜けない。
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洗って漬け置きで緩くなるかと思ったがダメ。

叩きたくなると思うけども、ここで叩くとカシまる可能性があるからやらない方が良い。

最悪鋳物の主歯車が割れる。
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ではどうするか。焼きます。
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工場で良く、固くなったネジを職人達は火で炙っているのを見ていた。これの事である。
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洗う。
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固着して無理に回すと齧るか、摩耗が激しくなってガタになるかであるが、この筐体は固まってから完全に寝ていた様で状態は最良。

凄く良い。

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グリスをくれながら戻す。
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マイナス切りの行程で、外れなかったのか2回やってしまった通常不良ビス、使っちゃうという(笑)

なんとも大らか(o^^o)

だって問題無いよね?でしょ?と言われそう(笑)
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モーターはこまめに給油してくれていた様で、濡れている。

これも状態がかなり良い。

バラして洗って組み戻す。
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シールド線から緑青が出ていて、配線もよろしく無いから、やり直し。
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今度は上に行って。

モーターボードに対して、バネが効いていないでベタに。

どうやら上のネジを回してしまったらしい。

これ、回したくなるが、回してはならない。
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浮の調整は、底のナットを外して、シャーシを持ち上げた下にあるナットの位置で浮加減が決まるのである。

バネにナットが掛かる。
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一旦バラして組み直し。
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リアランスを確認しながらちょっとづつ調整。
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これで良い。

ビョンビョンしているが、レコード落下のショックを軽減もするし、不安定な床から切り離す意味でも、プカプカしていて良い。

海向こうは石の家だが、床は木床であるから不安定なのである。

暖炉は外壁と基礎に伴っているから、暖炉の上は安定が良い。

だからこういう場所へシビアーな時計を置く訳である。

置き場所が無いから暖炉の上で良いか。ではなく、安定な場所に合わせて作られているのである。

用途と場所を正しく使う必要がある。

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さて次。
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アイドラは肉の方はまだ柔らかいから研磨して再利用。

あと10年は平気とみた。
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この時代、蓄音器の影響が強いか、プラッタストッパーが付いている。

何とも懐かしい様な、そんな雰囲気がする。外からは見えない。
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P.Uは両面で、LP/SPである。

クリスタルかと思っていたが、インピーダンスが10kω出るから、どうやらマグネチックである。

MMで両面は構造的に無理がある様に思うから、バリアブルレラクタンスであろう。

ダンパーが腐っていて、生ゴムの硬くなったクズが出てきたが、引っこ抜き交換のスタイルか、動きは良いから、交換は出来ないが、此の儘で音を聞いてみる事にする。

ps:交換出来ない意味は、針を抜くとクッションゴムもボロボロになって再度取り付けができなくなるため。
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良い時代の突き通しスタイラスチップ。大きい。

SPを聞くには最高であろう。

今は接着で、小さいチップである。

当時は小さくできなくて、この形式だったのかも知れないが、今となれば、これの方が断然良い。

時代の進歩と共に、手抜きができる様になって音が悪くなる。

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試聴の前に末端もやり直し。

 


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案の定の60c/sキャプスタン(^ω^;;)

計算上+20%速くすれば良いから…

そうか。

計算は合っていた。

直径で測って…x2で出さなければならないのである(^^;;

カットアンドトライでやはり最終的に調整したが、今一度計算すると当てはまった。

計算は苦手である(爆)

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これで良い。

昔の製造現場でやっていた手法の微調整であるが、やはり良い精度が出る。ゴロもない。素晴らしい。

人は考える葦である。

AIに頼る様になっちゃぁ、技術者も終わりだろう。

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試聴して分かったが、かなりの高出力P.Uである。

小さくても200mVはある。

コロンビアの頭の回転するP.Uも凄い大きい出力であったが、それに似ている。

使用する球数を減らして鳴る様になっている設計であるが、コロンビアと違うのは、イコライザが必要である。
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もう1点問題が出た。

オートスピンドルと盤の厚みである。

これが中にはギリギリか、擦り破る物がある。

スピンドルの角度を曲げ直し調整。

まだギリギリの盤はあるが、今度はあまり広くすると2枚落ちる原因になるから、これがまた難しい。

当時はレコードは使い捨てだから、レーベルの傷は何とも思わなかった事とは思うが、今になると気になる部分ではある。プレスしていない事もある。
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そういえば、ここにストロボがあった。
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手入れしていると自分が欲しくなった(笑)

 

これにて完成。