昨日の蓄音器を修理する。
函内部に手入れの指示が貼ってあった。親切だけど、分解しないとならないという(^^;;
ホーンを折り返して機械室とを分離。
ただ、ホーンがビビるのを防止する為にフェルトが貼ってあった。コストが掛かるが、其れ相応に良さそうだ。
問題のモーター、スプリング。
一度は分解歴があるらしい。Cリングを外すのに引っ掻き傷が見受けられる。
やはり面引っ掛け式。
一度巻かれると、自分の力で保持する様式。
穴引っ掛けよりか力の分散が良さそうだが、緩め過ぎると保持力が落ちてしまう。
温度変化で鋼も動くから、締まりを良くしても、温まると広がるのだと考える。
冷やした時は縮まるが、シャフトは縮まらないから、その大きさになって、今度温まると緩くなる。そう考えているが、真相は分からない。
時計でも香箱入りでよくあるパターン。
引っ掛けの折り返しが殆どないから、もしかすると既に一度破断しているのかも。
カールもう少し増やしておく。
詰め具合と掛かり具合を確かめながら良い塩梅に詰めたら良い。
一番手間食ったのは、Cリングを戻す事。
これが非常に厄介である。
ワイヤの端は、隙間のないピッタリとしていて、僅かの溝にピタリと沿わせて入れていくが、一筋縄では上手く入らない。
手で入れるのは酷で、バイスで溝から落ちない様にガイドとして、圧入器の代わりにボール盤に逆さにしたドリル(頭を面で落とした)を咥えて、徐々にこれを入れていく。
そうすると端に隙間のない状態で封が出来る。
この蓋はホゾの代わりにもなるし、ゼンマイの横ズレ防止にも働いているから、力が掛かる。
幾分キツく止まっていなければならないから、これは致し方ない。
他の部分は塩梅良さそうだから触らなかったが、ガバナーはシャフトを負荷なく滑っていなく、粘っていたからこれは手入れしておいた。
3つ玉の良いガバナーである。精度は良さそうだ。
組み立て試験に巻いてみる。良好。
1丁ゼンマイだから、12インチが1面がギリギリであろう。
トルクは強力ではないから、負荷になる物が増えると、伝達効率が悪く、針を置いた途端に速度が落ちる。
とりあえず素早くガバナーが働くから回転も安定する筈である。
今は便利なもので、iPhoneをプラッタに置いて回せば回転数計になる。
ワウフラッターも試験出来るのだから凄い。便利である。
オート停止機構は各所がガチャガチャ動いて機械らしくて良い雰囲気であるが、手入れが行き届かないと上手く動かなくなる。
簡素な程、手入れせずとも壊れ難いが、簡素な物が壊れた時は厄介極まりないのは言うまでもない。
手も工具も敷板もグリスで真っ黒。
蓄音器特有の、なんとも甘い様な良い香りのする真っ黒なグリスである。
一旦綺麗に整え直したら、サウンドボックスのビビりを検証。
ガスケットは革かと思ったが、ホーンの鳴き防止に使われていた茶色のフェルトが挟まっていた。オリジナルなのだと思う。
もしかすると革の様式はもっと古いか。
カンチレバーの支点は、No.5シリーズはボールベアリングであろうはずだから、硬くはない。
ただ、それを針で押している側の調整が微妙だから、給油を針先にくれて触って、僅か動かして動きは軽く、尚且つガタはない状態にしてやる。
試験演奏。
ビビりは無くなっているが、速度が若干Fastの方へしないと78ではない。
センターには来ないが、まぁ良い塩梅でやれば良い。
とまぁ、こんな具合で完成である。
久しぶりにアコースティックな蓄音器もまた良い。
うちのは寝かして儘だから、久しぶりに動かしてみた…が、ワウが酷い。
Columbiaの212は昭和5年かに50圓で売られていたと記憶。当時の貨幣価値は大凡今の4000倍だそうだから、20万円程か。高価である。
ホーンは半分迄折り返しているが、その後は函のラウンドで正面へ戻している。
機械は静音性の良いガバナーとで構成しているから、モーターがホーンの一部に有っても静かである。
ガバナーは同じく3つ玉である。これも固着気味だったから手入れしておいた。
2丁ゼンマイで高トルクだから結構安定は良い。
サウンドボックスはオリジナルのNo.15は中高域が派手であまり好みでないから、米軍アーミーのキャンプ用蓄音器のサウンドボックス、Zeal Fashionを付けている。低域が豊かな印象に思っていたが、HMV No.5と比べると、そうでもないかも。
音量も幾分優しいか。ただハイ迄出ているかな。
まぁまぁ好き好みである。