A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

807に寄せて

修繕依頼で写真を見せてもらって、807が挿さっているものだから、どんな回路構成か、色々推測してみる。

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807は、無線をやる方であれば、ハイハイと昔馴染みかも知れないが、低周波増幅器であるオーディオアンプとしては、一般的ではない事と思われ。

マニアーに終段807にドライブは42と言っても上の空(笑)の場合が多かった。年上になればなる程、話が通じる場合があるが、最近はそういう人も秋葉原で出会わなくなった。

戦後、軍の放出で出たのもあるが、結構当時は高かった様で、6L6や6V6の方が出現率は高い気はする。

製品で807が使われたセットは、一時期のPA用、所謂業務用の高出力拡声器(当時は音楽というよりは、声を大きく大衆に呼びかける用途)が多かったが、それも昭和30年頃迄と思われる。

昭和33年頃迄、NHK研究所から初段6C6、76、42、807構成の高出力 高忠実度40Wアンプなる回路が無線と實驗に載っていたが、やはり民生機ではない。

マチュア自作品でシングル、プッシュプル、この系列しかおそらく、一般オーディオ用途としては存在していないのではないかと推測。

少なくとも有名メーカーのは見たことがない。

私が愛用の807ppもやはりデンオンの据付型19インチマウントの業務用である。

 

さて。今回の依頼品もアマチュア作品である。

昔は増幅をしない球の使い方は、湯水の如く...と言われて遠慮(?)されて来た様であるが、カソードフォロアはAB2迄フルスイングさせるには重要な役割を担う。

まぁまぁ、そんなに大きい音を出さないじゃないか、そう思うであろうが、例えば自分の背丈に合った天井の家に住んでいて、背伸びをしようにも手が当たる。

信号であれば、ピークの信号が潰れる。歪む。

開放的な天高の家であれば、跳ねたって当たりゃしない。

信号で言えば、少しのピークも物ともしない。歪みが小さくて済む。

簡単に言えば、マージン、余裕を持っていた方が歪みが少なく、より歪み率が下がる。

小さい音でも、高忠実で出力できると言える。

しかしまぁ、跳ねたのは良いが、フニャフニャの床だと具合が悪いのは言うまでもない。

これは言い換えると、電源のレギュレーションが悪い。

不安定な土台、電源で、上に幾ら良い物を乗せても、グラグラしていては結局、お粗末に建てた物と同じか、それ以下になってしまう。これは避けたい。

信号の場合は、倒壊する事はないが、電圧が上下して結局歪むという結果になる。

それならば、背丈にあったのを組んだ方がまだ良い。

 

マチュアの作品の多くはP-Kで807をAB1でドライブ(図1)していて、10W弱出たら良いという物が多いから、今回もそうかなと思っていたが、よく見たら低周波トランスが乗っかっていた。

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インターステージという語がすぐに出てこなく、低周波1:3という方が先に出てしまうが、先生がおじいちゃんばかりだから致し方ない(笑)完全に昭和生まれに馴染んでしまって。それもかなり古い(笑)

インターステージは幾ら対なのか分からなかったが、この時代の球となれば、低周波1:3を逆さに使うのが程々良さそうな気もする。

プレートへ入れても良いし、カソードへ入れて低インピーダンスで動かしても良いが、カソードへ入れた場合は、ゲインが1段では807をフルスイングさせるには難しいかも分からないから、1:3だとすれば、正規に使わないと宜しくないかな。

プレートへ逆使いしたとすれば、電流を流してやればドライブ出来るだろう。

戦前、米国の6L6ppは、ドライブ迄はシングルに、単巻のチョークトランスを入れて中間をアースする事で反転した信号を得て終段だけをpp駆動するというやり方もある。

それでもやはり20W前後か。AB1の範囲であろう。

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スクリーン電圧はプレートから抵抗を伝って貰っている構成になっていたから、3結の動作であろう。

ビームとして使うとインピーダンスが上がる為に、低域が出易くなるのを防ぐ為に、三結を選んだ事と推測。

こうすると出力が得られ難くなるから、スイートポイントは狭くなる。

しかしながら、音の締まりは効いてくるであろう。

NFを効かせるならば、四極使いで良いだろう。NF無しだったら、三結の選択はありと思われ。

どちらが良いかは、使用者の好み次第か。

スイッチでSg切り替えが効く様になっていたのはマランツだったかな。有ったような気がする。NFは外せたか分からない。

 

そういえば、6CA7は五極のペントードだから、低域が弾むが、テトロードの場合はビームだから、SGは固定でもそんなに低域は弾まないか?似た様なものかな?

 

図3はSGを定電圧放電管でB+をドロップさせて得る回路。

アルテック型とも言われているが、業務用のアンプでこの組み合わせが採用されている。

RCAは、B+とカソードに接続し、出力によって変化するカソードバイアスをB+の変化とで打ち消す事でカソードバイアスを保とうというバランス式もある。

やはりどれも同じくPA用である。

定電圧放電管は一般的なセットに使われた事が殆どなく、無線機だったり計算機だったりが最終迄使っていたと思われるが、性能はツェナーダイオードの高圧版であり、やはりパラに繋いで良いCの容量は0.1μF迄である。

それ以上は、チャージとデチャージとで、発振してしまう。

使い方不良、寿命が来ると発振を起こす。

放電しなくなったら不良になった事が分かるが、異常放電もやはり不良である。

B電圧が上昇し始めても、やはり不良である。

少々面倒な素子であるが、適切に動作していたら、ピタッと基準電圧が定まり、幾ら前の段がフラついていても、矯正して保ってくれる。