A2 Laboratory. Work shop

Abraham Audio Device Industrial Labo.

Thordarson PA amplifier. 42 pp. Type 7506

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これまたかなり古ーいPAアンプの整備依頼。f:id:A2laboratory:20210201215828j:image

ソーダーソン。

聞いたことないけど、塗装の雰囲気からして1930年代後期の様な。

42プッシュというセレクトも、またまたかなりレアーな感じがする。

ググるとUZ-42は1932年発表の様子。

広く知られている6F6が1935、6L6が1936、6V6が1937、私の好きなUY-807が1938と、42はこれらの元祖球とも言えそう。

ちなみに815は1945年発表らしい。結構新しい。

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内部のコンデンサは全て交換してある。

音は出そう。ただ、危険そう(^ω^;;)

 

残してあるAEROVOXが低電圧で使えたら、42のカソードバイパスに使うと安定が良くなりそうだから、どうかなと思って調べたが、完全に容量抜け。

内1つは32pfを示した(笑)

完全に飾りだった。

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チューブラのフィルムコンは、中古なのか、脚が継ぎ足し継ぎ足し...

オリジナルもこうやって配線していたのか、バンド巻き型のだったのか分からないが、凄い空中感。

多分、シャーシに固定されていたハズ。

アースも何処から何処へ行っているのか、色々な所からアッチ行ったりコッチ行ったりしていてよく分からない。

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とりあえず、高圧がショートする様な箇所は無かったが、入力がショートしてしまうから手直し。

入力は200Ω、High、Micである。

200-Highは、Mag P.Uであろう。ディスク レコード用。特にカーブの時定数は組まれていないが、SP盤の時代の古いP.Uは、特にデコード時定数を組まなくとも、元々ハイ落ちした特性のP.Uであった場合は、直接入力が可能である。

500kと1000pf辺りでハイのコントロールとしている場合もあるが、昔のはHiFiではなく、アコースティックの蓄音器に近い電気歌口は普通だったであろう。
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Webから拝借。RCAPA用の広告であるが、この頃は拡声器が主の様子。

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初段の6J7はゲインが100はあって、200mVも入れると大分歪が大きくなるから、Auxレベルを相手にする場合はゲインを下げないと、初段で歪んでしまって使い物にならない。

今回は、CDを鳴らしたいという御依頼だったから、0dB基準にする。

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簡易に回路を追うとこの様である。

マイクはコンデンサ型なのか、3.2Vのバイアスが印加されるらしい。

昔はカーボンマイクが主流と思うが、それ以外を繋げられるとすると、映写機のエキサイターに繋いだ時のバイアスか?

もしそうだとしたら、かなり洒落た設計である。小型映画のトーキーアンプ。なかなか良い。

更に初段のバイパスCがソケットの方へ出て行く様になっているが、NFか?何をする為に引き出してあるのか分からず。

入力は200mVが限度の様子であるが、それ以上は緩やかに歪み、1Vを入れた時はプレートに70V現れ、μは70に落ちた。

Ebが下がってμも下がったと考えられるが、歪む感じが緩やかであるから、球が自動ゲインになっている?

6J7を調べたが、6C6同等のシャープカットオフであるから、6D6の様なAGC機能は無いが、第3格子に抵抗が入っていて、少し一般的な使い方とは違う回路構成になっていたから、これが作用している可能性も考えられそう。推測である。

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とりあえず、歪の無い良いポイントで使う事を考えて、-26dBの固定ATTを入れて、入力負荷も上げて球式コントロールアンプやフォノアンプを繋いでも使える様に実験。

1V入力で第1格子には50mVが入る。

初段はμ100だから、5Vの出力が得られる。

 

もう1つの方法として、-26dBのLパット無しに入力を受ける場合、初段を使わず、パスしてドライブ段に直接入れるやり方である。

ドライブ段には、VRで絞って結局のところ、200mVもあれば、ガンガン鳴らせるから、ダイレクトに入れても十分実用的なのである。

ドライブ段でμ10であり、42のフルスイングする信号レベルが15Vか20V程であろうから、1Vも入れたら相当な音量が得られる。

ただし、初段の球が不要になるから、飾りが1本増える事になる。

ノイズレベルで言えば、1本分無くなる訳だから、S/Nは改善される。

 

NFを初段に掛けてゲインを落とすのもあるが、あまり多く戻すと逆に歪っぽくなるかも分からないが、試しにやってみると、1Mであれば、全体にゲインが下がったが、1M以下500k程度は低域だけが落ち込んでしまう。

500k以下はゲインも下がるが低域がかなり引いてしまって損なうから、NFは良くなかった。

 

本機は、小入力のマイクロフォンやディスク ピックアップを直接受けて鳴らすというスタイルであるから、初段を無しにした場合、一般的なパワーアンプという事になる。

 

昔のPAアンプというと、据付型の大出力の物は、コントロールアンプとを別にしている様式が多いから、パワーアンプパワーアンプとしてあるが、小型の場合は屋外に持ち運ぶ事を考えて、アンプ一式を色々に分ける事をせず、1台で済ませられる様になっている場合が多い。

 

据付型は、映画館や大きい役所が多い事と思われ、学校や工場の場合は、ラジオ体操や運動会と言った催し物の際に運べる小型の一体のセットが選ばれた事と思われる。

行事内容は日本独特かも知れないが、海外でも大凡同じであろう。

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初段の件は、所有者様と揉んで-26dB Lパットで。

特に不良部品も無いから、これにて歪の無いポイントで使える増幅器として使える様になった。

High端子は、ATT無しの直入力にしておいたから、ここへ例えばエレキギターでも繋げば、即ギターアンプにもなる。

古いMagのP.Uを繋いでも使える。

ゲインと負荷が合えば、200Ω端子も生かしている。
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42、元気が良い。

全て球はgm試験済みである。
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出力を上げると、イオンが音に合わせてフワフワと形を変えて面白い。
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80は通電直後に20μFの平滑チャージの為か、結構イオン光りする。

今写真で見ると、少し紫っぽいか?

ゲッターはマグネシウムだから、ガス吸着が行われないから、ガスが多くなったらハムが増えそうである。その時は相当紫色に放電し続けるハズであるが。

また、ヒューズが無かった頃のセットであるから、80が飛ぶかという具合か。

ガスの場合はACが漏れるから平滑Cが吹くかも知れない。

異常時には80がバチリとやるから分かるであろう。

 

聞いたところ音的にはHiFiである。

アンプは昔からHiFiであったが、スピーカーがナローだったという事であろう。

パワーもあるし、なかなかのセットである。

ノイズは割と少ない方で、僅かハムが残っている程度。

無音になってもスピーカーへ寄らなければ気付かない。

実用的である。

これにて完成。

 

 

 

 

 

ps:カーボンマイクは自発的に信号が出せるダイナミックと異なり、バイアスを変調させて信号を取り出す様式であった。

電話機のトランシーバがそれである。

こんな初歩的な事を忘れるとは、ド忘れも良いところ(^ω^;;)

ヤバイヤバイ...